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システム思考の入門書『地球のなおし方』刊行されました

2005年07月18日

■システム思考の入門書『地球のなおし方 限界を超えた環境を危機から引き戻す知恵』ができました。

「システムってなに?」「どのように考えるの?」「どう実際の問題に役立てることができるの?」と--このような問いに答える「システム思考の入門書」です。

システム思考そのものの入門書であるとともに、現在の地球と持続可能な社会を考えるうえでのシステム思考的視点を提供する本です。

特にシステム思考を取り上げている第1章、第5章だけでもぜひお読み下さい。考え方の基本がわかります。

第1章の冒頭から少しご紹介しましょう。

第1章 地球をシステムとして考える

1.何がシステムを複雑にしているのか?

 システムとは、多くの要素がものや情報の流れでつながり、相互に作用しあって複雑なある全体を構成しているものです。ただたくさんの要素がある、というだけではなく、それらが「相互に影響を与えあい、全体としてのひとつの機能や目的を持っている」ものをシステムと呼びます。

 河原にいけば、たくさんの石があります。これも「多くの要素の集まりである」といえますが、河原の石を一つ持ち去っても、何も変化はありません。河原の石同士がお互いにつながり、影響を与えあっているわけではないからです。ですから、これはシステムとはいいません。

 それに対して、たとえば「人体」では、多くの臓器や器官が血管や神経などでつながり、相互に作用し合いながら、全体として生存という目的に向かって機能しています。その要素のどれかを取り去ってしまったら、通常は変化や支障がでてきます。自動車も、タイヤやハンドルなどのパーツが、互いに相互作用をしながら機能しています。どれかを取り外してしまったら、正常に走れなくなってしまうでしょう。

 つまり、人体も、自動車も洗濯機も、それぞれがシステムなのです。また、社会や地球の生態系もシステムです。たとえば、「漁業のシステム」には、漁船や漁業従事者、魚の数、魚の価格、天候、年間漁獲高、技術水準など、さまざまな要素が関係し、影響を与えあっています。「組織」も、組織に属する人々や同じ目的に向かっているという雰囲気、給料、報奨、ストレスの度合い、意欲の高さ、労働時間など、多くの要素が関係し、影響を与えあって、ひとつのシステムとして機能しています。

 システムには、個人から家族、組織、地域、地方や国、地球、さらに大きなものまで、さまざまな規模のものがあります。システムは、時間の経過とともにダイナミックに動いていくものですが、そのしくみをみてみましょう。

このあと、
○システムにおけるストックとフロー
○フィードバックとは何か
○システムを構成するフィードバック・ループ
○要素間の「遅れ」
○直線的ではない関係

と、システムとその特徴について説明しています。

第5章は「システム思考で問題を解決する」です。
○「できごと」の奥にあるものを見る
○システムに働きかける効果的なポイント
○望ましい方向へシステムを動かすフィードバック・ループ

という項目で、具体的に詳しく説明しています。

システム思考は、大きく2つの目的に役立つと考えています。

ひとつは、「問題を共有」する目的です。組織でも社会でも、各人は自分の立場や自分の見地からしか問題を見ることができず、そのために「それぞれが個別最適化を図ろうとすることが、全体最適化を阻害する」状況がよく生じます。

システム思考のアプローチで、関係者(たとえば、森林問題でいえば、林業家から製材所、流通、消費者まで。またはある企業の多くの部門など)が一堂に会して、いっしょにフィードバック・ループをあらわすループ図を作っていくことで、「自分の担当分野」「それぞれの立場」を超えた問題共有ができます。これが、問題解決のスタート地点となります。

もうひとつ、システム思考が役立つのは「効果的な解決策となる介入ポイントを探す」ことです。

システム思考ではよく「昨日の解決策が今日の問題を作り出している」と言います。今日の解決策が明日の問題を作り出さないように、しかも、限られたリソース(資金や人、時間など)で最大限の効果を得るためには、どこにどのような働きかけをしたらよいのかを考えなくてはなりません。

システム思考ではこのような介入ポイントを「レバレッジ・ポイント」と呼びます。てこの支点のように、小さな力で大きく動かせるポイントです。ループ図を書き、そのシステム構造を考えることで、レバレッジ・ポイントを探します。

『地球のなおし方 限界を超えた環境を危機から引き戻す知恵』は、このような考え方などを紹介する入門書です。

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