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『システム思考とダイナミクス・モデリング会議2006』に参加して(2)  「学習する組織」に向けての学校改革

2006年07月26日

6月にボストンの郊外で開かれたクリエイティブ・ラーニング・エクスチェンジ (CLE)主催、『システム思考とダイナミクス・モデリング会議2006』 の参加報告の続報です。今回は、オランダで学校改革を進めるグループからの発表の内容をお伝えします。

 「オランダでは、学校も教育システムも、50年前とほとんど同じスタイルで旧態依然としています。だからこそ、ますます複雑化する社会の中で「このままでは取り残される、進化しなくては!」という危機感をとても強く持ちました。そこで着目されたのが「学習する組織」への組織改革です。ここでは、「学習する学校」(Schools that learn)というべきでしょうか。

「学習する組織」の概念は、ピーター・センゲ氏の『最強組織の法則』(徳間書店)で紹介されました。(この本は、欧米ではビジネスや教育者など、組織を運営するものにとってのバイブル的な位置づけになっています。)会社であれ、自治体であれ、学校であれ、私たちはある目的を達成するチームを構成します。チームのよしあしを決める要因はたくさんありますが、今日の複雑な社会で生き残りを左右するのが、チームが学習するための基本能力です。

この学習するための基本能力は、「志」、「内省型コミュニケーション」、「システム思考」の3つで構成されます。チームの能力は、いうなれば3脚の椅子です。これらの基本能力のどれが欠けても成り立ちません。チームを「学習する組織」に変えるには、この3つの基本能力を築きあげることが重要なのです。
 
私たちオランダの教育者のグループは、この基本能力を高め、「学習する組織」づくりへの改革に取り組んでいます。私たちの経験では、この改革を進める上で、特に重要なのは、リーダー、つまり校長先生のリーダーシップの行動スタイルです。
 
ほとんどの学校では、校長先生がボスとして君臨する旧態依然とした組織モデルをとっています。しかし、校長が「自分に従え」型のリーダーシップをとり、先生がそれにフォローするというスタイルの組織運営では、複雑化する社会を生き残れないのは明白です。

では、「学習する組織」に求められる新しいリーダーシップの姿はどういうものでしょうか。船に例えれば、ボス型のリーダーシップは、船の船長といえるでしょう。ピラミッドの頂点に立って、意思決定を一手に引き受け、船員たちに指示命令を出します。

一方で、「学習する組織」のリーダーには、船というシステムをデザインする役割が求められます。現場の船員の一人ひとりが、意思決定に必要な情報とそれを判断できるスキルを身につけ、問題が発生した場合には組織としていかに対処すべきかを話し合い、また学びあいます。これを、一つ一つの指示ではなく、組織というシステムのデザインを通じて行うというものです。」

「学習する組織」と新しいリーダーシップ像のビジョンを掲げ、オランダで活躍する教育者のグループの人たちは、このように自分たちの改革の経験を熱く語ってくれました。

(つづく)

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私たちは、多くの企業の経営者との対話の機会をいただき、経営者の方が感じるこれからの経営の課題についてお話を伺っています。その中で感じるのは、多くの経営者が抱えているのが人と組織の問題だということです。

今までのリーダーシップスタイルや組織運営では、これからの複雑な時代を勝ち残れない。そう思うのは、オランダの教育者たちだけではありません。今、日本でも多くの企業が、変化の必要性を実感し、どのような組織や人材を創れば、企業の競争力に転換できるのかを模索しています。

経営者の方たちに「学習する組織」の話をすると、身を乗り出して興味を示します。日本で「学習する組織」の考え方や方法論を導入している企業はまだ数えるほどしかありません。しかし、これからの日本企業にもどんどんと「学習する組織」が生まれ、常に進化し続けるしなやかな組織が増えていくことを私たちは予感しています。

システム思考のトレーニング、共有ビジョンの策定、そして多様な価値観をもつ人たちの間でのダイアログのお手伝いをしながら、日本で「学習する組織」を生み出していくお手伝いをしていきたいと考えています。

                        チェンジ・エージェント
                         小田理一郎・枝廣淳子

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