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国際システム・ダイナミックス学会に参加して最も印象的だったのは、システム思考のツールや概念が共通言語として定着していることです。従って、ビジネスだけでなく、医療制度や安全保障の問題まで幅広い分野の議論をしているのですが、それぞれの問題構造や解決のアプローチを理解しやすいと言うことでした。多くのモデルを通じて、世界のさまざまな課題について学ぶことができました。
もう一つ感じたことは、博士課程の学生のみならず、中高生や教員を積極的に学会に招き入れ、若者のホリスティックな視点の育成に力を入れているということです。高校生が、世界のエネルギー問題や食糧問題、生物多様性の問題などについて、彼らの視点で見た問題構造を提示し、大人顔負けの政策提言を行います。若者の教育にこれだけ力を入れる学会はそうはないでしょう。
そして、若者の存在は、彼らのためだけでなく、私たち大人にとってもとても重要です。とりわけ、資源問題や環境問題などの長期的な課題において、若者の視点は欠かせません。その枯渇や汚染による問題では、彼らが大人になったときの社会の反映に大きく関わる当事者だからです。
複眼的な視点で問題を見ることは、システム思考の重要な原則の一つですので、若者たちと共通言語をもち、一緒に学び、課題に取り組むのは、これからの社会でますます求められていくことでしょう。
このような取り組みをするシステム・ダイナミックス学会の存在にはとても勇気づけられました。ここで学んだことをチェンジ・エージェントの活動にも活かしていきます。
小田理一郎・枝廣淳子