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『学習する組織―システム思考で未来を創造する』から

2011年07月26日

◇相手の習慣的な防御行動を「治そう」とすれば逆効果になる。たとえば、なぜ自己防衛しているのか誰かに聞いてみよう。例外なく最初の反応は抵抗である。「僕が? 自己防衛なんてしてないよ!」と。

◇ロバート・フリッツが言うように、「大事のあるところ、小事は消え去る」。大きな夢のないところに小事がはびこるというわけだ。

◇共有ビジョンを築くディシプリンを習得する第一歩は、 ビジョンは常に「上」から申し渡されるものだという既成概念を捨て去ることだ。

◇今日の問題は昨日の「解決策」から生まれる。 問題を、単にシステムのある部分から別の部分へと移動させただけの解決策は、たいてい気づかれずに継続される。

◇真に共有されるビジョンは一朝一夕には生まれない。それは個人ビジョンの相互作用の副産物として育つ。本当の意味で共有されるビジョンが生まれるには、継続的な対話が必要だ。

◇今日、重大な決定に用いるメンタルモデルの大半は「線形の思考」に支配されている。未来の学習する組織では、変化のパターンと相互関係の共通理解にもとづいて重大な決定が下されるようになるだろう。

◇システム思考の技(アート)は、種類による複雑性を見通して、その根底にある、変化を生み出す構造を見ることにある。

◇システムを見るには二つの基本的な観点がある。一つは相互依存性のパターンを見ること、もう一つは未来を見通すことだ。未来を見通すことは、今ここにあるのにシステム思考の視点がないと見過ごしてしまうような兆候を理解するにはどうすればよいかを知ることから始まる。

◇システム思考を実践するには、まず行動がどのように互いを強めたり打ち消したり(バランスをとったり)するかを示す「フィードバック」と呼ばれる単純な概念を理解することだ。これが「構造」の型を見ることを学ぶ基礎となる。

◇メンタルモデルの惰性はどんなに優れたシステム的な洞察をも圧倒する可能性がある。このことは、システム思考の提唱者ばかりか、新しい経営手法を提供する多くの人々にとって苦い教訓となってきた。

◇個人が学習することによってのみ組織は学習する。個人が学習したからといって必ずしも「学習する組織」になるとは限らない。が、個人の学習なくして組織の学習なし、である。

◇内省的な開放性の特徴は真に心を開くことであり、これは人の話をより深く聞くことや真の対話に向けた第一歩である。言うのはたやすいが、実行するのはそう簡単なことではない。内省の環境を構築することは、自分自身の心を開こうとする気持ち、無防備になり「さらけ出そう」という気持ちから始まる。

◇共有ビジョンは個人ビジョンから生まれる。だからこそエネルギーを発揮し、コミットメントを育むのだ。ビル・オブライアンが言うように、「あなたをやる気にさせる唯一のビジョンは、あなた自身のビジョンなのだ」。

◇木も見て森も見る――広範なパターンと詳細なパターンの両方に関する情報を見る――能力を開発する。両方を見ることによってのみ、複雑性と変化の難題に力強く対処することができる。

◇マネジャーたちが直面している根本的な「情報の問題」は、情報が少なすぎることではなく、多すぎることではないだろうか。私たちにもっとも必要なのは、何が重要で何が重要でないか、どの変数に焦点を当て、どれにはあまり焦点を当てなくてよいかを知る方法である。

◇システム思考は、複雑な状況の根底にある「構造」を見るための、そしてレバレッジの低い変化と高い変化を見分けるためのディシプリンである。全体を見ることによって健全性を育む方法を学ぶのだ。そのために、システム思考はまず私たちの考え方を再構築させる言語を提供する。

◇業界全体のダイナミクスを考慮しなければならない問題もある。「システム境界の原則」と呼ばれる基本原理は、偏狭な組織の境界に制約されることなく、眼下の問題にとって最も重要な相互作用を観察しなければならない、というものである。

◇直観は線形の思考にはまらず、線形の思考のように時間的にも空間的にも近くにある原因と結果ばかりを重視することもない。その結果、直観のほとんどは意味をなさない。つまり、線形の論理の観点からは説明がつかない。システム思考は、理性と直観を統合するための鍵を握っているかもしれない。

◇組織のモチベーションとなる基本的なエネルギー源は二つある。否定的ビジョンの根底にあるのは恐怖の力である。肯定的ビジョンを動かすのは大志の力である。恐怖は短期間に驚くべき変化を生み出すこともあるが、大志は学習と成長の絶えざる源泉として持続する。

◇言語が認知を形成する。私たちに何が見えるのかは、何を見る用意ができているかによって決まる。システム全体の相互関係を見たいのであれば、相互関係の言語、つまり環状になっている言語が必要だ。

◇「成せば成る」の楽観主義は、根本にある受身の考え方を覆っている薄っぺらな飾りにすぎない。既存の方針や行動がいかに今の現実を作り出しているかを組織にいる人々が学び始めれば、ビジョンが育ちやすい新しい土壌ができてくる。新しい自信の源泉が生まれるのだ。

◇真の教師になるためには、まず学習者にならなくてはならない。教師自身の学習に対する情熱は、その専門家としての知識と同じくらい生徒たちに刺激を与える。だからこそ組織学習のツールや理念に真剣に取り組むマネジャーもまた、単なる「提唱者」や伝道者ではなく、実践者でなくてはならない。

◇共有ビジョンの構築は、リーダーの日常業務の中心的要素と考えなければならない。常に進行中であり、終わりはない。

◇聴くことは、往々にして話すことよりも難しい。何が必要かについて確固とした考えを持った意志の強いマネジャーにとっては特にそうだ。聴くという行為には、多種多様な考えを受け入れるだけの並み外れた開放性と意志が必要である。

◇学ぶことは自分自身をフル稼働させることであり、いつの時代も自分の居心地の良い場所にいるほうが楽なため、学習思考の文化を築くことは骨の折れる仕事なのだ。この15年間、こうした試練に対する私の認識を弱めるものは何ひとつなかった。

◇注意深く見てみると、ほとんどの(企業の)「ビジョン」は一人の人間(あるいは一つの集団)のビジョンを組織に押しつけたものだとわかる。そのようなビジョンでは、せいぜい従うことを強要するくらいであり、コミットメントはおぼつかない。

◇現実は環状になっているのに、私たちが目にするのは直線である。ここに、システム思考家としての私たちの限界の始まりがある。私たちの思考にこのような分裂が起こる原因の一つは、私たちの言語だ。言語が認知を形成する。私たちに何が見えるのかは、何を見る用意ができているかによって決まる。

◇ダイアログは、ある集団の人々が互いをより深い洞察と明確さを共同で探求する仲間だと考える場合にのみ成立する。互いを仲間だと考えようと意識して行動すれば、仲間としての相互作用が生まれやすくなる。

◇「私たちは何を望むのか」は「私たちは何を避けたいのか」とは違う。これはわかりきったことのようだが、実際には否定的ビジョンのほうが肯定的ビジョンよりも一般的だろう。多くの組織が真に協力して働くのは、その存続が脅かされているときだけだ。

◇対立がないのが優れたチームではない。絶えず学習しているチームの何よりも信頼できる指標の一つは、考えの対立が目に見えることだ。優れたチームでは対立が生産的になる。


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