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【本日(2/23)発売】書籍「行動探求――個人・チーム・組織の変容をもたらすリーダーシップ」訳者まえがき

2016年02月23日

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写真:英治出版様Facebookページより

 書籍「行動探求――個人・チーム・組織の変容をもたらすリーダーシップ」が本日(2/23)、英治出版様より発売になりました。本書より、訳者まえがき部分を紹介いたします。

訳者まえがき

 「どうすれば一人ひとりの潜在能力を引き出し、チームとして機能する組織を築けるか?」そんな問いを抱きながら、リーダーシップ開発や組織開発の国際会議に参加して気になるトレンドが二つある。一つは、個人と組織の「発達」であり、もう一つは「意識」を高め自己変容を起こすためのさまざまな訓練である。この不確実で混沌とした時代において、しなやかに適応しながら、多様性の中に創発や共創を生み出すような人材や組織が求められる。その鍵は、自身や周囲の人たちの意識変容を通じていかに個人や組織の進化、つまり、「発達」を遂げるかにあるからだろう。このトレンドは、現代の日本においてもタイムリーなものに思える。近年のスキル偏重の育成現場に足りなかった、人間力そのものを高めた人財が必要とされているからだ。

 ビル・トルバートの行動探求は、まさにこうした要請に応えてくれるものだ。行動探求とは、行動と探求を同時に行うこと、つまり、行動の最中に、今その瞬間に外部の状況と内なる声が求めているもっともタイムリーな行動を探る慣行である。意識を研ぎ澄ませて行動のより幅広い効果をあげるリーダーシップ習慣であり、また瞬間、瞬間を大切にする生き方であるともいえよう。
繰り返し起こる悩みや課題を克服するには、人や組織自体の成長が必要だと思うことは多いが、同時に、人や組織は成長できるのか、変われるのかとの疑念も浮かぶ。しかし、孔子の教えどおり、私たちはいくつになっても学習できるし、その学習が十分蓄積したときには、閾値を超えるような発達を遂げることもできる。近年、脳科学や行動科学の発展がこうした考えを科学的にも裏付けている。

 この本の対象となる読者は、さまざまだ。意識的な生き方をしたい個人にはどんな方であれ最適だ。家族やパートナー、友人たちとの関係を良好かつ互いに高め合いたい人たちにもよい。また、組織内の立場にかかわらず、職場で働きながら求める結果と同時に人や組織の成長をもたらしたい実践者たちに最適だろう。組織開発やリーダーシップ開発に携わるマネジャーや担当者ならばなおさらこの本は役に立つだろう。個人のレベルでは、私たちは気づいていないことを知ることはできないし、知らないことを判断に織り込むこともできない。そもそも「知らないこと」にすら気づいていなかったら、学習が起こる由もない。だが、気づくために必要な意識の働きを知り、意図的にその意識をコントロールできたならば、飛躍的に学習能力を高め、効果的な会話、関係性、行動、そして結果を導き出すことができる。こうした意識の働き方について、成人の発達理論に基づいて類型化したのが本書で紹介する七つの行動論理である。多くの成人は機会獲得型を経て外交官型、専門家型、達成者型へと発達する。そして一部の人たちはそれ以降の行動論理である再定義型、変容者型、アルケミスト型へと発達を重ねる。
何かものごとがうまく運ばないとき、えてして人は特定の行動論理にとらわれてしまうものだ。それゆえに、自身のうまくいかないパターンを振り返って認識し、その備えをしておくことの有用性はきわめて高い。そして何よりも、私たちは次の段階の行動論理を身につけることで、行動の選択肢を飛躍的に広げることができる。行動探求では、七つの行動論理をガイドにしながら、自分自身の意識の働き方を観察し、より有効な意識の使い方を意図し、その瞬間の状況における最適の行動を実践することができるようになっていく。

 行動探求は、仕事や私生活で向き合うさまざまな人たちとの二者間レベルにおいても有用である。自らの意識の働きを広げ、起こっていることへの気づきを広げると共に、有効な行動、とりわけ話し方と聴き方の選択肢を広げるものだ。関係性の問題は、たいていは双方に起因する。行動探求では、話し方の四つの要素を駆使しながら、相手を変えるのではなく、その人のその瞬間での意識に働きかける。変えられない他人との関係を変える鍵は明らかに自分の意識の使い方と話し方、行動にあるのだ。
行動探求はまた、組織での有用性がきわめて高い。個人レベルの行動探求によって、結果だけ、行動だけ、戦略だけにとらわれず、その相互作用、前提、意図まで幅広く意識を行き渡らせる。また、二者間レベルの行動探求は職場や取引先を含めたさまざまな人間関係の改善を図る人的スキルを高める。そうして築かれた誠実で相互性ある人間関係は、職場環境や風土を大いに改善しうるものであり、社員のやりがいも働きがいも高まるであろう。

 さらに組織やチーム単位で行動探求に取り組むならば、「学習する組織」へと進化していくことも可能であろう。本書では、組織の中でどのような意識が働くかについて八段階の行動論理で整理している。その中の協働的な探求以降の行動論理を培えた時、「学習する組織」と呼ぶにふさわしい組織が現れる。学習する組織は、日的の達成のために互いを必要とする人たち、つまりチーム単位で展開していく。全社的な方針を待たずとも、「今ここ」を共有できる身の回りから始められるのだ。
人の潜在能力を引き出すチームを築く上で欠かせないのがリーダーシップである。職場やチームを変えたければ、自ら学習者となって、変容者やアルケミストを日指し変容への影響力を高めるのだ。この本で紹介するリーダー像は、従来のリーダーのイメージとは異なる。新しいリーダーたちは、抵抗を招き入れやすい「一方的な力」や「論理の力」だけに頼らず、より繊細だが影響力の大きい「自分をさらけ出す力」や「相互に変容をもたらす力」を駆使して人々の変容を支援する。ふと見渡せば、そうした繊細な影響力を行使できる人ほど、場の空気や職場の風土を実際に変えていることに思い当たる節はないだろうか。そして、こうした新しいタイプのリーダーこそが、混沌とした不確実性の時代において、多様性の中に共創を生み出せる存在として世界から求められているのだ。

 本書は個人、二者間、組織の三つのレベルの行動探求の概念やツールなどの理論的解説にとどまらず、事例やストーリーも交えた実践的な内容になっている。高圧的な上司に逆らえなかった部下がいかに変容できたか、経験の浅い若手がベテラン・マネジャーたちといかに渡り合ったか、同僚・部下とつい口論に陥る状況からいかに抜け出したか、などである。紹介する組織改革の事例において、経営陣の多くの変容のストーリーが紹介されている。また、組織の外から支援する立場の方には、いかに行動探求を活用できるかの具体的なイメージを持ちやすいだろう。
私は日本で「学習する組織」の普及を推進しながら、個別組織の状況に応じた戦略を立てるためのよいガイドを求めていた折りに、ビル・ト ルバートの行動探求に出会った。学習する組織と行動探求は関係性が深い。ビル・ト ルバートは、ピー夕― ・セ ンゲらと協働で学習する組織を具現化するための理論的枠組みや実践手法を探求し、また、『なぜ人と組織は変われないのか』のロバート・キーガン、『U理論』のオットー・シャーマーらを指導した。組織開発の近年の潮流の源流にある存在といえる。そして、行動探求はこれらの手法に通ずる自己変容、組織変革の普遍的アプローチであると同時に、日本の経済史上の卓越した経営者たちが持ち合わせていた東洋思想とも相通ずる慣行ではなかろうか。

 本書で紹介する行動探求が、現代日本の多くの人や組織がより意識的な行動、会話、組織行動を通じて、よりよい人生、人間関係、組織をつくっていくことに役立つことを切に願っている。また、本書を出版するにあたり、主著者であるビル・トルバート、英治出版の高野達成さん、翻訳を共に進めた中小路佳代子さん、スタッフの世羅侑未さんには大変お世話になった。あり方のロールモデルであるピーター・センゲをはじめ、人・組織・社会の相互発展と持続可能性を目指して組織開発・人財開発を実践する国内外の素晴らしき仲間たちに感謝すると共に、まだまだ続くこの旅を歩む全ての人たちにエールを送りたい。

二〇一六年一月

小田理一郎

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 ビル・トルバート氏らが開発した「行動探求(アクション・インクワイアリー)」は、洗練されたアクション・ラーニング手法であり、発達理論に基づくリーダーの変容を促して行動の幅と効果を広げ、また、チームや組織を「学習する組織」へと導くための探求手法です。

 システム的な観点でみたとき、通常のマネジメントはPDCA、つまり起きた結果を見ながら自らの行動の見直しを図る一次ループの学習であることが多いといえるでしょう。それに対して、自らの思考の前提にある戦略やゴールなどを見直す二次ループの学習さらに、より深いレベルにある自らの源の意図やビジョンにまで意識を広げる三次ループは、リーダーや組織自身の深い変容を促します。(行動探究)アクション・インクワイアリーは、ここにある全てのレベルの探求を行うものです。
また、、最近欧米でグローバル人材の輩出に重要な位置づけにある発達理論に基づき、リーダーシップの7つの発達段階や、組織が学習する組織に向かう8つの発達段階を示し、それぞれの段階に応じてどのように発達の経路をたどることができるかを示す点でも、他の組織開発・学習手法に比して特徴的です。

 リーダーシップやマネジメントの力を飛躍的に高めたい人に是非お手に取っていただきたい一冊です!

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ビル・トルバート招聘ワークショップ(3.25-27)説明会情報

 チェンジ・エージェントでは2016年3月25日(金)―27日(日)に、原著の著者ビル・トルバート氏を招聘して「行動探究(アクション・インクワイアリー) ~組織に変革を生み出す行動と探求のスパイラル~」という組織開発・リーダーシップ開発セミナーを開催します。つきましては、1月・2月の2回に渡り説明会を開催させて頂いておりましたが、ご好評につき、【3月10日(木)18:30-】行動探究(アクション・インクワイアリー)説明会を追加開催いたします。

********************
ご参加をご希望の方は、下記内容を記載の上、 info@change-agent.jp までメールにてお申し込みください。
*メールの件名に「3月10日無料説明会参加申し込み」と明記ください。

1. 氏名(漢字)
2. フリガナ
3. ご所属
4. メールアドレス
5. 電話番号(携帯など緊急時連絡の取れるもの)
********************
2016年3月10日 18:30-21:00(18:15開場)

*ファシリテーター
世羅侑未 (チェンジ・エージェント ファシリテーター)

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世界のチェンジ・エージェント(4)ビル・トルバート氏 ~行動と探求の同時性が織りなすタイムリー・リーダーシップ~

「タイミング」がなぜ重要か? -ビル・トルバート氏インタビュ-動画1-

「行動探究(アクション・インクワイアリー)」とは何か? -ビル・トルバート氏インタビュ-動画2-

行動探究(アクション・インクワイアリー)を学ぶ(1)-4つの体験領域のつながりをみる-

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