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Theory of Change: TOC

変化の理論(セオリー・オブ・チェンジ)とは?

変化の理論(Theory of Change: TOC)」とは、社会システムに関わるプログラムの計画、評価、そしてステークホルダーたちによる参画の方法論です。具体的にはある文脈の中で望ましい変化が、なぜ、どのように起こるかを望ましい変化が、どのような活動が目標とする変化を生むのかについてを包括的にわかりやすく描写した理論、あるいはストーリーのことです。プログラムの目的や活動を定義し、組織が変化を生み出すための方法や道筋を計画し、その計画の有用性を評価し、利害関係者とのコミュニケーションを図るのに役立つ強力なツールです。リーダーシップ開発や社会的事業の研究を行う〈アスペン・インスティテュート〉における専門家たちの対話によって開発された方法論です。この方法論で作成するのは、ロジックモデルよりも包括的な「アウトカム・パスウェイ」と呼ばれる図です。

ビジネス事例になりますが、アマゾンを創業したジェフ・ベゾスは、1990年代半ばからeコマースを通じて「顧客に良質の体験を提供することでアクセス数が増え、それによって商品を提供するサプライヤーが集まって品揃えが広がり、それによって顧客への良質な体験をさらに広げられる」というストーリーを周囲の人たちに繰り返し語りました。

また、ピーター・センゲと共に組織学習の普及に邁進したダニエル・キムは、「関係性の質の高まりが、思考の質、行動の質を高め、それによって結果の質が高まることでますます関係性の質が高まる」という法則を見いだし、「組織改革の成功エンジン」と名付けました。

こうした人や集団の行動の本質をふまえたわかりやすいストーリーは、多くの関係者たちを巻き込み、望ましい変化を創り出す上で、それぞれの関係者が、時間経過と共にどのような役割を果たし、変化が築かれていくかの共通理解を広げます。「戦略ストーリー」にも似ていますが、変化の理論という呼び方は、いわゆる「共創」、あるいは「コレクティブ・インパクト」と呼ばれるような、多様な関係者たちの参画とコラボレーションを必要とする際に使われます。

近年、海外では多くの国際機関、基金、財団などがプログラム申請の際に変化の理論の作成添付を必須条件とすることが増えてきています。公共のためのリソースをより効果的・効率的に配分する説明責任を果たす上で、また資金提供者とのコミュニケーションにおいても明確な「変化の理論」を持っているかが重要視されるようになってきています。

多様な関係者と協働してプロジェクトを進めるのに最初に重要になるのが、問題に対する、共通理解を醸成することです。取り組みの関係者は、それぞれが異なる前提や文脈で目の前の問題を自分の立場でとらえています。

ひとたび、変化の理論が明らかになれば、それを見せるべき相手によってシステム図の抽象度を調整することが有用です。たとえば意思決定者や一般市民向けには、シンプルに作り直した好循環のモデルのほうがわかりやすいでしょう。また、実務者向けには、より詳細なシステム図のほうが、自分たちがそれぞれの介入で求められるアクションに、どんな文脈や条件があるか、あるいは、どのような状況やKPIをモニターする必要があるのか、などを明らかにしてくれます。

より詳しい解説を見る

『社会変革のためのシステム思考実施ガイド』監訳者
小田理一郎による解説を見る

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