システム思考

Systems Thinking

経済編

世界の食料生産システム(2)

食料の生産能力と生産量の増大は、予期しないさまざまな状況を及ぼしています。その一つが環境への影響です。

生産能力の増強を求め、効率を高めた結果、土地あたりの収量が増大しています。これは、化学肥料や農薬、灌漑によります。農薬の利用は過去50年間で50倍以上になりました。土地面積あたりでみても、当初の4倍以上の農薬が使われています。

これらの化学肥料や農薬のほとんどの成分は、水に流されて河川や地下水を通じて周辺の流域への流出し、最終的には海まで到達します。これらの流出物は、少量の生産をしている際には自然の浄化速度の範囲内ならば問題ありません。しかし、生産能力の増加によって浄化速度を上回る流出物が出ると、環境に大きな影響を与えます。

しかし、このような環境破壊は、必ずしも生産地の周辺で起きるわけでなく、広域にわたって起こるために、規制などは十分かかりにくく、生産量増大の抑止にはなっていないのが現状です。

また、土地あたりの収量を高めた結果、土地の肥沃度は大幅に下がってしまっています。その速度は、土地が自然に回復できる速度を遙かに上回り、また化学肥料や農薬、灌漑の悪影響によって土壌の劣化が進んでいるのです。

土壌の劣化が進み、農業に適さなくなると、農家は森林を開拓するなどして新たに農地を開拓します。しかし、農地拡大のための森林伐採は、内陸部での降雨量を減らすことになるので、内陸部での砂漠化が進むようになって、長期的にみると土壌劣化がさらに進んでしまうのです。

短期的な効率(収量)を重視する農業の副作用と環境の悪化があいまって、土壌流出、塩害、砂嵐などによる砂漠化が進行し、過去60年間になんと中国とインドをあわせたほどの面積で土壌劣化が起こっています。

加えて、土壌が劣化すると、再生能力そのものも失われていく悪循環をもたらします。

農業に適した土地は次々と減少し、今まで以上にコストをかけなければ生産できず、中長期には生産能力そのものの増強が難しくなっています。2030年には1.5倍になるといわれている食料需要に見合うのは大変なチャレンジといえるでしょう。

ループ図 見る

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このチャレンジに対して立ち上がった多国籍企業やNGO、生産者たちのコンソーシアムが、「サステナブル・フード・ラボ」です。サステナブル・フード・ラボに関して日本語で詳しくお知りになりたい方はこちらのURLをご覧ください。
サステナブル・フード・ラボのハル・ハミルトン氏講演 (Japan for Sustainabilityのウェブサイト)
http://www.es-inc.jp/lib/archives/060830_074919.html (グループ会社イーズのウェブサイト)
http://www.es-inc.jp/lib/archives/080108_082535.html (グループ会社イーズのウェブサイト)

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