システム思考

Systems Thinking

ループ図とは、関心のあるシステムの主要な要素及びそれらに影響を与える要素、影響を受ける要素を列挙し、要素間の因果関係を矢印で結びながら、要素間の相互作用(フィードバック)の構造を図式化するためのツールです。観察や記録、関係者の証言などに基づいて、時系列変化パターングラフに描かれた「今までのパターン」「このままのパターン」がなぜ起こるか、その構造を説明するものです。また、関係者が納得できるループ図を描いた後に、対話によってシステムの全体像や根本への理解を深め、効果的な働きかけを探るためにも用います。英語ではCausal Loop Diagram といい、CLDと略して呼ばれ、日本語では「因果ループ図」と訳されることもあります。

ループ図の表記法には、システム・ダイナミクス学会などで定められた基本ルールがあります。このルールを覚えることで、さまざまな分野、さまざまな課題について描かれたシステムを比較的短時間で理解することができます。

ループ図を読み解くポイントは5つです。

1. 変数

システムの中の主要な変数を列挙します。変数とは、時間経過と共に増減するもので、一般的に「●●が増える/減る」の「●●」の部分だけを名詞表現で書きます。
 

2. 矢印

変数と変数の間を結ぶ矢印は因果関係を示し、影響を与える変数が矢印の起点に、影響を受ける変数が矢印の先にくるように描かれます。一方向のみ影響を与える因果関係もあれば、相互に影響を与え合う因果関係もありえます。双方向の場合は別の矢印が追加されます。
(因果関係に重要な時間遅れを伴う場合、矢印上に二本線「//」を描きます。)

3. 影響の向き

矢印の矢先に、増減の影響の向きを書き入れます。他の条件が同じと仮定して、矢元の変数の増減と矢先の変数の増減が同じ場合は「S」(Same)、逆の場合は「O」(Opposite)と書き入れます。ループ図を描く人によって、「同」「逆」、「+」「-」を使う人もいますが、どの表現系をとっても意味は同じです。

・影響の向きが同じ場合 「S」「同」「+」
・影響の向きが逆の場合 「O」「逆」「-」

4. フィードバック・ループの種類

フィードバック・ループは二種類あって、その識別をループの内側に示します。フィードバックがシステムの変化を強化していくようなループを「自己強化型ループ」、フィードバックがシステムの変化を収束していくようなループを「バランス型ループ」と言います。英語ではそれぞれ「Reinforcing Loop」「Balancing Loop」と呼んで頭文字の「R」「B」で識別するほか、学問の分野によっては、「正のフィードバック」「負のフィードバック」と呼び、それぞれを「+」「-」で表記する場合もあります。

強化する性質のフィードバック 「自己強化」「R」「+」
収束する性質のフィードバック 「バランス」「B」「-」

5. フィードバック・ループの名前

複雑なシステムでは、しばしば複数のループが絡み合います。よって、ループ図の中のどのフィードバック・ループを示すのか特定しやすいように、フィードバック・ループに名前をつけます。単純に時間展開で現れる順番に数字で示すこともありますし、また、そのフィードバックの力、力学を示すような表現を使うこともあります。

例えば、人口増減のダイナミクスを理解するためのループ図を見てみましょう。

causal_loop_diagram ループ図

この例では、「人口」という変数を中心に、それを増減させる「出生数」「死亡数」という変数、さらにそれらに影響を与える「出生率」や「平均寿命」という変数があります。

出生率と出生数の関係に着目しましょう。人口1000人当たり30人/年だった国や地域において、時間経過と共に1000人当たり20人/年に減少したとき、他の条件は同じ(例えば人口の増減は考慮しない)場合、出生数はそうでないときに比べて増加します。従って、出生率と出生数の因果関係の影響の向きが同じですから「S」と表記されます。「出生数」から「人口」、「人口」から「出生数」、「人口」から「死亡数」の関係もすべて、矢元の変数が増加すれば矢先の変数も増加するので、「S」と表記されています。

「死亡数」が増えると「人口」にどのような影響を与えるでしょうか? 例えば、人口が10万人、出生数が3,000人/年だったとして、死亡数が2,500人/年の場合、人口そのものは100,500人に増えますが、死亡数の影響は逆向きとなります。なぜでしょうか? 例えば、死亡数が2,000人/年に減った場合、人口は101,000人となりますから、人口はそうで無い場合に比べて増加しています。逆に死亡数が4,000人/年に増えた場合人口は100,000人となってそうでない場合に比べて減少します。死亡数と人口の増減の向きは逆になっていますので、因果関係の影響は「O」と判断されます。

「平均寿命」から「死亡数」の影響についてもまた、平均寿命が40歳から50歳に延びることによって、ここではあえて単純計算しますと、死亡数は2,500人/年から2,000人/年に減少します。増減の向きが逆ですので、矢先には「O」と表記されます。

図の中では、2つのフィードバック・ループが存在し、人口と出生数の間の自己強化型ループと、人口と死亡数の間のバランス型ループが存在します。例示するループ図では、出生率や平均寿命にはループ図内の他の変数からの影響はないかあってもごく些少であると考えています。また、出生率や平均寿命には、「生活水準」や「医療技術の水準」などまだループ図に示されていない変数を追加できるかもしれません。

このようにして見ていくと、システムは単なる要素の集合体として見るよりも、因果律すなわちつながりの束として見ることができます。システムのパフォーマンスや状態は、中長期に見れば、どのようなつながりの束になっているか、あるいはつながりの質がどのようなものかによって影響を受ける度合いのほうが高まっていきます。また、現在のシステムのパフォーマンスや状態は、直近の影響というよりも、過去より長い歴史の中で培われたフィードバック構造によって形成された可能性も大いにあります。

ループ図は、複雑なシステムを読み解くのにより適した「言語」と捉えるとよいでしょう。文法の基礎を学んだら、現実に起こっている具体的な事象のストーリーを描きましょう。そうすることで、ほかの人たちとの間で、ダイナミクスの原因に関する仮説を即時に把握すること、個人やチームのメンタル・モデルを引き出し把握すること、問題を起こしていると考えられる重要なフィードバックを伝えることができるようになります。同時に、見逃しているフィードバックや、今後支配力を増していくフィードバックに気づき、適切な手立てを打つことも可能になります。

ループ図にはもちろん限界もあります。そうした限界を補うさらに上級のシステム思考のツールもありますが、このループ図の習得はそれらのツールを活用する上でも基盤となります。できるだけ数多くのループ図を読み、描き、関係者たちと対話することは、システムに関するリタラシーを高めることにもつながります。チェンジ・エージェント社では、このループ図を基本としたシステムの分析や考察を多く紹介していきます。

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システム思考のツール

フィードバックはすべての挙動にかかわる根本的な存在であるため、私たちが吸いこんでいる空気と同じように、目には見えない。それはまさに人の「行動」と同じである。私たちは、自分自身の行動については、その結果から生じるフィードバック効果以外は何もわからないものだ。

ーートマス・パワーズ(心理学者)

世の中に『副作用』があるわけではない。単に、いくつもの『作用』が存在するのだ。

ーージョン・スターマン(MITスローン・ビジネススクール教授、著書「システム思考」より)

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