システム思考

Systems Thinking

ストック&フロー

システムの中で蓄積する要素(ストック)と、その蓄積の変化を生み出す要素(フロー)の構造は、フィードバックループと並んでシステムのダイナミクスを理解する上で重要な役割を果たします。

システム思考では、関心のあるシステムをモデルとして図示化する際に、そのシステム内にある主要な変数を特定します。しばしばシステムの状態を特徴付けるような、主要な変数となるのが、蓄積するモノ、ヒト、カネ、仕事などを「ストック」変数です。

蓄積は流れるもの(流入と流出がある)の出入りによって増減します。その蓄積に対して流入する変数を「インフロー」、蓄積から流出する変数を「アウトフロー」と呼び、それぞれ時間当たり単位で流入・流出ペースを把握します。

このことを理解するために、風呂の浴槽(バスタブ)の比喩がよく使われます。浴槽に溜まっている水の量(m3)がストック、バスタブに注ぎ込む蛇口からの流入量(m3/分)がインフロー、そして排水口からの流出量(m3/分)がアウトフローです。インフローとアウトフローが、分当たりや秒当たりなどの時間単位あたりの変数です。ここには描かれていませんが、アウトフローには浴槽の上からあふれ出る水の量や、手桶ですくい出す水の量などもあるかもしれません。蒸発も可能性はありますが、分単位で考える場合には無視してもよいかもしれません。

インフローを遡ると供給源(ソース)があり、アウトフローの流れを追うと吸収源(シンク)があります。浴槽の例では、浄水場や水源が供給源、下水施設や海が吸収源となります。これらの供給源や吸収源もまたストックですが、図に明示される場合もあれば、境界を引いてモデルに含めない場合もあります。

すべてのインフローとアウトフローを合わせた正味フローが、ストックの増減を決めます。排水口を閉じて蛇口を開けているときのように、「インフロー>アウトフロー」となっている時間帯では、正味フローはプラスですのでストックは増えていきます。逆に、蛇口を止めて排水口を開けるなど「アウトフロー>インフロー」となっている時間帯では、正味フローがマイナスですのでストックは減っていきます。蛇口も排水口も閉じるなど、「アウトフロー=インフロー」となっている時間帯は、正味フローがゼロですので、ストックは同じレベルで安定します。

ストック&フロー stockandflow.png
ストック&フロー stockandflow.png

この原則を使って、ストックの変化をインフローとアウトフローの変化に分解し、ストックの時系列での変化が、どのようなインフローとアウトフローの変化で構成されているかを探求します。また、ストックの将来を予測したり、望ましい状態に近づけるためには、インフローとアウトフローのそれぞれがどのような変化が予測されるか、あるいはその変化に影響を与えることが可能かを検討します。

例えば、世界の「人口」(ストック)は、年当たり何人生まれたかの「出生数/年」(インフロー)で増加し、年当たり何人亡くなったか?の「死亡数/年」(アウトフロー)で減少します。国、都市や自治体の人口ならば、インフローには「移入者数/年」、アウトフローには「移出者数/年」を加えることができるでしょう。

人口が増加している地域では、「インフロー>アウトフロー」、つまり、出生数/年と移入者数/年の合計が、死亡数/年と移出者数/年の合計を上回っています。日本に住んでいると実感が少ないかもしれませんが、世界ではインフラの成長や土地の制約を上回る人口増加を課題にしているところが多々あります。人口増加を抑制し安定させたい場合、

  • 出生数の増加を抑える(家族計画、教育の充実、女性の権利改善など)
  • 移入者数の増加を抑える(移入への制約――国ならばビザ取得プロセスや上限設定など)

などができます。アウトフローを増やす施策は歴史上存在するものの、今の時代の価値観にはそぐわないものが多いでしょう。また、住宅の供給量が追いつかない状況でも、都市への移入を望む人が多い場合はスラム化など起こることもあります。そもそもなぜほかの地域から都市への移動を求めるかの原因を見いだし、対策を打たない限り人口増加は止まらないでしょう。

人口が減少している地域では「アウトフロー>インフロー」、つまり、死亡数/年と移出者数/年の合計が、出生数/年と移入者数/年の合計を上回っています。こちらのほうが日本の多くの地域ですでに実感していることでもあるし、世界の都市化の背後には農村・地方などからの人口流出の課題があります。人口減少を抑制し安定させたい場合、

  • 死亡数を減らす(死亡率が高い地域では医療、ケア、公衆衛生の改善など)
  • 移出者数を減らす/移入者数を増やす(域内での仕事や居住環境、教育を魅力的にするなど)
  • 出生数を増やす(少子化対策、子育て世代の移入など)

などを検討します。

ストック&フローの構造を見ることで、時系列変化パターングラフで検討したグラフの増減に関して、システムモデルとのより明確な結びつきを意識して議論しやすくなると共に、それぞれのフローに関与するさまざまな関係者たちの間にどのようなつながりがあるか、しばしば意識されていなかったつながりを見いだしやすくなります。

ストック&フローの分析を加えることで、他にも以下のような効果があります。

  • 複数のストックに分けてその連鎖を見ることによって、地域や集団における年齢構成のように時間の経過と共に変化していく影響を理解する
  • プロジェクトやサプライチェーンなどにおけるリードタイムなどの「時間遅れ」の仕組みと影響を理解する
  • 今まで暗黙に引いていたモデルの境界を見いだし、関心対象がどこから来るのか、どこへ向かうのかを問う

システム思考の中級レベルでは、重要なストックとフローの構造を通じて、システムのより広範なつながりやフィードバックを理解し、またストックとフローの適切な境界を再設定することで効果的な働きかけを見出します。

ストック&フローに関連する参考図書

ストック&フローに関連する記事

ストック&フローに関連するセミナー・研修

チェンジ・エージェント社のシステム思考に関するセミナー・研修では、中級レベルに進む段階でこのストック&フローを導入しています。「ストック&フロー」について特に詳しく扱うのは、下記のセミナーです。

システム思考のツール

Mail Magazine

チェンジ・エージェント メールマガジン
システム思考や学習する組織の基本的な考え方、ツール、事例などについて紹介しています。(不定期配信)

Seminars

システム思考に関連するセミナー
募集中
システム思考に関連するセミナー
開催セミナー 一覧 セミナーカレンダー