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「システム思考で林業活性化を考えるワークショップ」報告記

2005年12月16日

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      システム思考 メールマガジン (2005.12.16)

    「変えるメソッドを経営へ」~ チェンジ・エージェント

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■システム思考の専門家グループ「バラトングループ」の運営委員会に出席
■「システム思考で林業活性化を考えるワークショップ」報告記
■「システム思考ワークショップ: 望ましい変化を創り出す力をつける」のご案内(2006年1月17日)

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■システム思考の専門家グループ「バラトングループ」の運営委員会に出席

システム思考を理論的に支えるシステム・ダイナミクスを生み出したジェイ・フォレスター教授の一番弟子として、システム・ダイナミクスおよびシステム思考の理論的構築ならびに実践を進めてきた中心人物のひとりが、デニス・メドウズ氏です。(現在世界で活躍しているシステム・ダイナミクスやシステム思考家のほとんどが、メドウズ氏の教え子か知り合いのようです)

このデニス・メドウズ氏が共同研究者であったドネラ・メドウズ氏とともに24年前にシステム・ダイナミクスやシステム思考の専門家グループとして立ち上げたのが「バラトン・グループ」です。現在、数十ヶ国からの300人を超えるメンバーが、年1回の合宿と各地でのコラボレーションを中心に活動しています。

その活動レベルは高く、世界のどこかでバラトンメンバーが共同プロジェクトを進めていない日はない、と言われるほどです。(チェンジ・エージェントの代表である枝廣がデニス・メドウズ氏らの『成長の限界 人類の選択』を翻訳し、チェンジ・エージェントとして『地球のなおし方』をデニスらと共著したことも、「バラトン・コラボ」のひとつです)

バラトン・グループの合宿は、世界が温暖化云々と言い出すまえに、温暖化の問題を取り上げ、システム思考的分析をおこなうなど、その先進的な着眼点でも、また、単なる問題や事例の紹介ではなく、「どういうシステムになっているからなのか」というシステム構造の分析が議論されるという点でも、他の国際会議やワークショップとはかなり異なる1週間です。だれでも参加できるオープン形式ではなく、最大でも50人までという枠を設け、運営委員会の選定するメンバーのみが参加することも、密度の濃い議論に役立っています。

枝廣は、4年前に「新規メンバー候補」リストに載り、レスター・ブラウン氏の推薦などの結果、このバラトングループの合宿に参加することになりました。3年目の昨年からは、運営委員のひとりとして、グループの運営にも関わるようになり、今週はじめ、チューリッヒで開催された運営委員会に参加してきました。

運営委員会の役目のひとつは、来年9月の合宿のテーマを設定することです。バラトングループではこの3年間に対して、「過去~現在~これから」という大きな続きのテーマを設定しており、次回は「これから」がテーマとなります。

2日半にわたる議論の結果、来年のテーマとして、「持続可能性への移行を進めるレバレッジ・ポイントを見つけ、創り出す」という仮タイトルが出されました。プログラム委員会がこれから詰めていくことになりますが、個人的にも最も知りたい・考えたい「レバレッジ・ポイント」がテーマとなり、そのシステム思考の枠組みや世界中からの実際の事例、各地域で活かせる教訓がまとめられそうなので、楽しみでたまりません。

「レバレッジ・ポイント」とは、てこ(レバレッジ)のように、小さな力で大きなシステムを動かせる効果的な介入ポイントのことです。システムを変えよう、動かそうとしたときに、どんなに一生懸命力を尽くし、お金や人材を投入したとしても、びくともしないこともあれば、いわゆる「ツボ」を一押しすれば、小さな力でぐいと動せることもあります。

システム思考では、問題や課題を要素のつながりとして理解したうえで、この「レバレッジ・ポイント」を見つけることが大きな目的のひとつです。(もっとも、システム思考の専門家たちが「これはそう簡単なことではない」とよく言うとおり、そう簡単なことではありませんが......)

来年の合宿に向けて、運営委員会でどのような議論が展開されるのか、実際の合宿でどのような枠組みと事例が学べるのか、日本に持ち帰って活かせるポイントはどういうものか、ぜひみなさんにもお伝えしていきたいと思っています。どうぞお楽しみに!

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■「システム思考で林業活性化を考えるワークショップ」報告記


11月13日に、三重県松阪地区木材協同組合の集まりにおじゃましました。半年ほどまえに、同組合の総会で「林業を再生し、木材の活路を見出すために社会の仕組みをどう変えるべきか」という演題で講演をさせていただきました。理事長をはじめ、理事やメンバーの方々がとても熱心で、現状や問題、これからについて熱く語ってくださいました。講演でシステム思考のご紹介をし、「一度いっしょにやってみませんか?」と結んだ呼びかけに応えていただき、秋にワークショップをおこなうことになったのです。

テーマは「木材産業の活性化について」。約30人のメンバーが集まり、5人ずつ6つのグループになりました。午後1時に理事長の挨拶からスタートです。

最初にビジョンを明確にすることの大切さについて話したあと、テーマである「木材産業の活性化」について、将来像をいろいろな角度から描いてみるワークをしてみました。具体的には「木材産業が活性化すると○○が増える(または減る)」の○○に当てはまる項目を各グループで15個以上出す、という作業です。

各グループで、ブレーンストーミングをしながら、ポストイットに書き込んでいきます。ふだんはその日のこと、明日の売上と、短期的な視点で動かざるを得ませんが、「思ったように実現して、木材産業が活性化したら、どうなっているのか?」と自由自在に空想やイメージをふくらませる作業です。あちこちから笑い声が起こります。グループによっては30個以上出したところもありました。そのあと、他のグループのテーブルを回って、出ている項目を順番に見ていきます。

次に「木材産業が活性化するためには○○が増える(減る)必要がある」を各グループで15個出す作業をしました。2つ3つならすぐ出ますが、15個といわれると、ふだんあまり考えないような観点や分野まで考えざるを得ません(そこがこのワークショップのポイントです)。ふたたび全グループのポストイットを見て回り、「これは!」と思うものはメモして、自分たちのグループにも加えます。

そのあと、各グループで「いちばん増えて(または減って)ほしいもの」1つに絞りました。「給料」「会社の利益」のほか、「国産材の使用量」などが挙がりました。次に、その選んだものについて、時系列のグラフを描きます。これまでどういう動向だったのか、このままいくとどうなりそうか、自分たちが将来に望んでいるのはどういう動向か、をグラフとして明らかにすることで、メンバー間のコミュニケーションや共通理解が進み、同時に「変えたい!」というエネルギーが生まれてくるのです。

休憩のあと、「システムは要素のつながりであり、システムの力を使うことで物事を大きく動かせる」ことを体感するゲームをして、いよいよ自分たちの状況を「要素のつながり」として表していきます。システム思考のループ図というツールを用い、さきほど書き出したポストイットをつなげていくのです。

たとえば、やみくもに販促キャンペーンをするのではなく、「木材に触れる機会が多ければ→木材への親しみやなじみが増し→そうすると、他の素材より木材を選ぶ人が増え→すると、木材使用量が増えるので→木材に触れる機会がますます増える」というような要素のつながりを把握した上で、「どこに働きかければ、この望ましいループ(好循環)を動かすことができるか?」を考えます(この効果的な働きかけのポイントを「レバレッジ・ポイント」と言います)。

各グループで、「こうなれば木材産業は活性化する」という理想的なループを作って、模造紙に書き出し、グループごとに発表をし、講評しました。そして、「何があれば、その理想的なループが回るか」を考えることから、「いま欠けている部分は何か? つながりが弱いところはどこか?」「それをつなげるには何が必要か?」「自分たちは何をすべきか?」を考えていって下さい、と午後4時に終了したのでした。

終了後の参加者のコメントには、

○「業界全体のことを見ていなかった。問題を解決するにはこういうやり方もあることを知った」
○「人間の思考にはいろんな所で見落し、盲点があると感じた」
○「わかっていると思っていることでも、やってみる事の必要性を感じた」
○「ループで考えると、どこが弱いのかが明確に分かる」
○「木材業界全体で真剣に考えれば、木材の需要は増えると思いました」
○「一人で考えないで、全員で考えたら答がでた」
○「いろいろな人の意見をつなぎあわせることで、いろいろな解決策が発見できた」
○「ループによって、様々な問題点や解決法の糸口が見つかる思いがした」
○「視点を変えて考える必要性を感じた」
○「頭がやわらかくなった」

などと書いてあり、システム思考のツールを用いて自分たちで作業するワークショップが、気づきや発想の転換、仲間とのコミュニケーションの一助になったことがうかがわれます。

多くの森林・林業関係者が「要素のつながり」「全体像」「効果的な介入ポイント」を考えていってほしい、と強く願っています。

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チェンジ・エージェントでは、このように業界や組織の抱えている問題に特化して、システム思考の考え方やツールを身につけていただくワークショップや、実際の問題解決の場のファシリテーションをおこなっています。詳しくはぜひお問い合わせください。info@change-agent.jp


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■「システム思考ワークショップ: 望ましい変化を創り出す力をつける」を開催します(2006年1月17日)

<システム思考で真の変化を創り出す>

システム思考は、上記の木材協同組合でのワークショップの様子からも垣間見られるとおり、複雑な状況下で変化に影響を与える構造を見極め、さまざまな要因のつながりと相互作用を理解することで、真の変化を創り出そうというアプローチです。システム思考を身につけて実践することによって、変化に翻弄されるのではなく、自ら望ましい変化を創り出す人材と真に強い組織を作ることができるようになります。

システム思考を身につけることで
● 複雑なビジネス環境下においての事業戦略立案と遂行
● 部門・機能別に分かれた組織運営の統括
● 多様化する企業の社会的責任の実践
● ステークホルダー(利害関係者)とのコミュニケーション
などの場面で、新しい視点と有用なツールを得ることができます。

問題や課題の理解と解決策の戦略化のほか、他部門や社外とのコラボレーションやコミュニケーションにもとても有効なアプローチです。

そのシステム思考の基礎となる考え方やツールを身につけるワークショップを下記のとおり開催いたします。

会社のためにももちろんですが、自分の業務や役割を広い視野からとらえ直し、真のレバレッジ・ポイントを見出すことによって、その効果性や貢献を飛躍的に増大するためにも役立ちます。これまでのワークショップ参加者のうち、約半数が個人としての参加で、それぞれご自分の仕事や人生にとって大切な気づきや考え方、今後の戦略を持ち帰っていただき、高い評価を得ています。1年のはじまりに、システム思考を身につけ、より効果とやりがいの大きな1年にしませんか。


   記

<コースの目的>
変化を引き起こす構造とプロセスを理解し、複雑なビジネス環境下において広い視野での状況診断と効果的な問題解決を可能にする実践的なツールを習得することで、望ましい変化を創り出す力を向上させる

<このような方々に最適です>
企業の経営幹部、次世代経営者候補、戦略・CSR担当マネジャー、管理職・リーダー、起業家

<日時>
2006年1月17日(火) 13:00 - 17:30

<場所>
東京都渋谷区「こどもの城」研修室906号室
(JR渋谷駅徒歩8分、メトロ表参道駅徒歩7分)

<コースの概要>
「システム思考ワークショップ: 望ましい変化を創り出す力をつける」
 システム思考の基礎を身につける

1.なぜシステム思考が必要なのか
・ なぜ解決策は失敗するか―昨日の解決策が今日の問題を作る
・ 「線形」思考と「とりあえず」主義
・ システム思考とは
・ システム思考のツール紹介

2.システム思考のツール(1)時系列パターングラフ
・ 今どこにいるのか、どこから来たのか、そしてどこへ向かうのか
・ 事象ではなくパターンを見る

3.システム思考のツール(2)ループ図
・ システムの構造が行動パターンを決める
・ フィードバックのない構造
・ 自己強化型ループ構造
・ バランス型ループ構造

4.システム思考の演習
・ 自らの課題をループ図で書いてみる

5.システム思考の実践
・ 問題からつながりと全体像を見出す
・ ループ図で広げるコミュニケーション
・ システム思考のさらなる実践的活用法

<料金>
39,000円 (税込)

<定員>
25名程度

<このような効果が期待できます>
システム思考による新しい視点とすぐに応用できるツールを身につけることによって、

● 一見離れたところにある要因とのつながりを見出せます
● 事象や変化の奥にある相互作用の構造を理解できるようになります
● 関係者間の共通の理解やビジョンの共有を促進できます
● システムの抵抗を予期し、自律的で広がりある変化をデザインできます
● 変化に左右されるのではなく、自ら変化の手綱を握ることができるようになります


<お申し込み・お問い合わせ>
(有)チェンジ・エージェント 担当 関・増田・小田
info@change-agent.jp
TEL: 044-930-0012 FAX: 044-930-0013

お申し込みは、下記申し込み票を電子メールでお送りください。

※受付確認後、振り込み口座をお知らせいたします。入金確認を持ちまして正式な受付となります。その後、受講証と詳しいご案内を電子メールでお送りいたします。

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            申し込み票

2006年1月17日システム思考ワークショップに参加します。

ご氏名    [ ]
ご所属 [ ] 
メールアドレス [ ]
連絡先電話番号 [ ]

※このセミナーのことをどこでお知りになったか教えていただけると幸いです。

( ) a. 以前受講した人からのご紹介 ご紹介者名(         )
( ) b. 職場・知人・友人からのご紹介
( ) c. システム思考メールマガジン.
( ) d. チェンジ・エージェントのウェブサイト
( ) e. チェンジ・エージェントからのメールによるお誘い
( ) f. 他のメールマガジンによるご案内 (          )
( ) g. その他 (          )

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ご一緒できます機会を楽しみにしております。

それではまた次回!

                        チェンジ・エージェント
                         小田理一郎・枝廣淳子

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(c)チェンジ・エージェント 2005

システム思考メールマガジンは、出所を明記していただければ、転送歓迎です。
ただし、ウェブへの掲載や印刷物への利用はご遠慮下さい。

ご感想やコメントなどをお寄せ下さい。可能なかぎり、今後の情報発信に役立たせていただきます。 E-Mail:info@change-agent.jp

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http://groups.yahoo.co.jp/group/systems_thinking_byCA/

「システム思考」の入門書 『地球のなおし方』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478871078/junkoedahiro-22/249-2919328-9475557

システム思考入門シリーズのアーカイブ
http://www.change-agent.jp/news/index.html

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