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日経エコロジー4月号システム思考掲載記事 補足資料

2006年03月08日

先月に引き続き、日経エコロジーの4月号の「新環境学」のコーナーでシステム思考の「レバレッジ・ポイント」を紹介しています。

こちらはその記事の補足資料となります。詳しくお読みになりたい方は、日経エコロジー4月号をご覧ください。

システム思考の第一人者である故ドネラ・メドウズ氏は、てこのように小さな介入で大きな変化を創り出すポイント、レバレッジ・ポイントを効果度によって12の段階に類型しました。その類型を6つに簡素化したものが下記になります。

6.「数字」、「パラメーター」
5.物理的な「フロー」と「ストック」の構造
4.情報の「フロー」の構造
3.システムの「ルール」、「インセンティブ」
2.システムの「目的」
1.システム構造や目的を作る「パラダイム」

日経エコロジーでは「情報のフローの構造」への介入例として、米国での化学物質管理の例を紹介しています。ここでは、そのほかの例をいくつかの補足してみましょう。

図1: クールビズ (パラメーターへの介入)

AprChart1.gif

「パラメーター」の介入の例として、クールビズ、ウォームビズなどの温度設定があります。

たとえば、図1の左側は介入前の状態をあらわすループ図です。室温の設定温度を26度としているとしたら、外気の気温や人の活動から室温が高くなり、設定温度を超えるとサーモスタットが作動してクーラーを稼動します。そして、室温が26度まで下がるとクーラーの稼動は停止します。クーラーが稼動している間は、電気を使用し、それが地球温暖化ガスの排出などの原因となって環境負荷を高めます。

図1の右側は、「クールビズ」運動による介入の後をあらわすループ図です。オフィスや家庭でのクーラーの設定温度を26度から28度に上げることによって、室温が設定温度を超過する時間や度合いが弱まり、クーラーの稼動が減ります。それによって、電気使用量が下がり、環境負荷が下がるのです。

昨年の夏は、多くの企業がこのクールビズを導入し、省エネに一定の成果をあげることができました。このように、すでにあるシステムの中のパラメーターを変えることがレバレッジ・ポイントになりうるのです。

また、オフィスや過程の壁やドアの構造材を変更し、熱を遮断したり、保温したりしやすくすることによっても省エネの効果を高めることができます。このような変化は、熱エネルギーの物理的なフローやストックを変える介入です。十分な効果は期待できますが、すでにあるビルや住宅を工事しなおすのはたやすいことではありません。建設・建築を始める前に、そういった設計をすることで、効果の高いレバレッジを得ることができます。


図2: 電気メーターの設置場所 (情報のフローの構造への介入)

AprChart2.gif


「情報のフローの構造」を変える事例は、日経エコロジーで紹介した有害化学物質排出目録(TRI)のほかにも数多くあります。情報の構造は、物理的な構造に比べて変えやすいので、しばしば有効なレバレッジ・ポイントとなります。

図2は、住宅の電力使用量を測る電力メーターの設置場所が、居住する家族の行動を変えた事例です。左側の介入前では、電力メーターが家の地下室の入り口に設置されていました。家族は電気を使用しても、どれくらい使っていたかを見ることなく、使いたい時に使いたいだけ使用し、それにあわせて環境負荷も増えていきました。

右側の介入後は、電力メーターを玄関の見えやすい場所に設置した場合です。電気をたくさん使用するとメーターがぐるぐる回って、電力の使用が目に見えるようになりました。そうすると、家族は自然に省エネをしようとして、電気を使う家電製品などの利用を控えます。それによって電力の使用量が減り、環境負荷も減っていきました。

このように、情報が目に見えるようになり、また行動をする人の手元により早く届くことで、行動を大きく変えるレバレッジ・ポイントとなりうるのです。

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