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システム思考入門(22) 「システム思考の実践(5)地球生態系と社会経済システムのレベル」

前号で文明社会に関するシステム思考の応用をご紹介しました。今号ではさらに、地球規模での生態系と経済社会システムについてご紹介します。

我々の生活を考える上で、地球の生態系は人間の社会生活や経済生活の基盤となって、さまざまなサービスを提供してくれる重要なシステムです。たとえば、私たちがきれいな空気を吸えるのも、おいしい水を飲めるのも、また、大地や海の恵みを味わい、森や動物や自然に憩うことができるのも、すべて生態系の仕組みのおかげです。

いわゆる食物連鎖といわれる「食べるもの」と「食べられるもの」のネットワークも重要なシステムです。たとえば、キツネとウサギを考えて見ましょう。キツネはウサギを食べますので、ここでは、キツネが「食べるもの」、ウサギが「食べられるもの」です。

もしキツネが増えすぎると、エサであるウサギが増えるペースを上回って食べてしまい、ウサギの数は減少します。すると、食べものが十分にいきわたらないキツネは、餓死して数が減ります。しかし、今度は、天敵が少なくなったウサギはどんどん繁殖し、その数を増やし始めます。ただし、いつまでも増え続けるわけではありません。一時的に数の減ったキツネも、十分なエサ(ウサギ)がいるようになれば、その数は増えていきます。キツネの数が増えると、ウサギの数は再び減少に転じます。このキツネの数とウサギの数の関係は、バランス型フィードバック・ループになっていることがわかります。このような自然のサイクルは、食物連鎖のいたるところにあるのです。

生態系システムは、食物連鎖だけではなく、地球のさまざまな場所で働いている物理的および生理的な法則によって、制御されています。イギリスの著名な科学者であるジェームズ・ラブロック氏は、惑星の生理的な成分を研究する専門家で、火星の大気の成分を分析して、火星には生物は存在し得ないと結論付けた功績で有名です。彼の高度なシステム的洞察は地球にも向けられ、「ガイア理論」を打ち出しました。ガイアというのは、ギリシア神話に出てくる大地の神ですが、彼は地球がさまざまなフィードバックによる調整を行っていて、あたかも意思をもった生命のような挙動を示すと発表しました。

たとえば、地球の大気圏の空気の成分は、長い歴史を見てたゆまず調整が続けられています。もちろん、質量保存の法則がありますから、炭素、酸素、窒素などの基本的な原子の量は変わっていませんが、その化学的な状態を変えながら、海、陸、大気の間を移動しているのです。

たとえば、大気中の二酸化炭素が増えると、二酸化炭素の温室効果によって地球の温度が上昇します。温度が上昇すると植物がさかんに光合成をするなどして陸や海に吸収されます。大気中の二酸化炭素が減れば、今度は温度が減少しますので、植物の吸収は減って二酸化炭素があまり吸収されなくなるのです。ここでは、自然のバランス型フィードバックが二酸化炭素の濃度を調整しています。

実際地球は過去40万年にわたって、二酸化炭素の濃度が180ppmから280ppmの間を行ったりきたりして、濃度の低いときには温度が減少していわゆる氷河期となり、また二酸化炭素の濃度が高いときには温度が上昇して温暖な気候となっていました。

しかし、この自然のフィードバック調整に異変がおき始めてきました。いわゆる温暖化問題です。最近、国連機関のIPCCが地球の温暖化に関する科学的な知見を新しく発表し、また、元アメリカ副大統領のアル・ゴア氏が「不都合な真実」という映画と本の中でも温暖化に関する科学の基本的な説明を行っています。

産業革命以降、人間の経済活動が石炭や石油など化石燃料と言われるエネルギー(主に炭素と水素でできています)を燃焼することによって、二酸化炭素が大気へと放出されます。その量が、森や海の自然の吸収できる能力を上回ってしまっているために、もともと地中深くにあった二酸化炭素が次々と大気中へたまり、今では過去40万年の最高を更新する380ppmまで濃度が上がってきました。その結果、気温の上昇をはじめとするさまざまな気候への影響が出ているうえ、極地や高地での氷を溶かし、海面を上昇させるなど、地球の地理も大きく変え始めています。これらの気候や地理の変化が、人間社会の生活へと大きな影響を与え始めているのです。

元世界銀行のチーフ・エコノミストであるニコラス・スターン氏は、今の温暖化の構造を続けると、今世紀の終わりには気温が産業革命以前に比べ4度以上上昇し、食糧・水・海面上昇・天災・感染症被害などから世界のGDPの5~20%を失い、数十万人が命を失うと試算しています。一方で、経済システムの再構築を行えば、回避するための投資はGDPの1%程度と考えられます。彼のチームの報告書は、イギリス政府に提出されていますが、環境問題と経済問題、そしてその人道的な影響を加味した画期的なレポートと評価され、さまざまな議論を誘発しています。

私たちの文明は、農業革命以来定住し、主にバイオマスといわれる森林などの植物をエネルギー源として社会経済システムを作ってきました。やがて、産業革命を迎えて、一部の国では石炭、石油、天然ガスなどのいわゆる化石燃料をエネルギー源として、大量生産やグローバルな移動が可能な社会経済システムを構築し始めます。しかし、その化石燃料をベースにしたエネルギーシステムは、温暖化問題と、石油および天然ガスの生産量が減少傾向に転じるピーク・減耗問題という2つの大きな問題を引き起こす原因となっているため、転換に迫られています。

今日、新たにニューエコノミー、ナレッジ・エコノミーという新しい社会経済システムが生まれつつあり、多くの期待が寄せられています。ナレッジによって、エネルギーへの依存を減らすとともに、化石燃料以外で資源供給の問題も、排出物の問題もない、新しいエネルギーを求め、世界の各地では太陽光や風力などの自然エネルギーへの転換がはじまっています。

しかし、その新しい社会経済システムが、どのようなものになっていくかは、まだはっきりしているとはいえません。長く繁栄するだけのしなやかさを保ちながら、一部の人に偏ることなくたくさんの人々が幸せを享受できるような社会経済システムを構築するには、できるだけの多くの人が共有ビジョンを持って、意見や立場の異なる人たちとの対話を重ねながら、複雑なシステムの問題を解決していく必要があるのは間違いないでしょう。



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