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蜂群崩壊症候群

2009年08月20日

植物と昆虫の共生関係が、最近欧米でとても大きな話題となり、また日本でもにわかに関心が高まってきています。

その発端となったのは、2006年秋から現在にかけて起きている蜂群崩壊症候群(CCD)という現象です。ミツバチの働き蜂が、コロニーに女王と幼虫、食糧を残して突然失踪してしまうのですが、コロニーの周辺には死骸も見あたりません。働き蜂のいなくなったコロニーはその後崩壊にいたります。

この不思議な失踪事件によって、北米では2006年の一冬の間にミツバチの4分の1もがいなくなってしまいました。ヨーロッパの一部の国々やインド、ブラジル、台湾なども報告されており、最近は日本でも起こっていると言われています。

さて、ミツバチがいなくなってしまって大騒ぎなのは養蜂家ばかりではありません。実は、農業で栽培する野菜、果物などの作物の多くは、ミツバチなどの昆虫によるの花粉媒介によってその果実をつけることができるのです。アーモンド、桃、大豆、リンゴ、サクランボ、イチゴ、キュウリ、メロン、スイカなどの多くの作物が、ハチの失踪によってその生産量を落とすことになりかねません。ミツバチをはじめハチの花粉媒介に依存する作物は全米には100種近くあって、食物の3分の1を占め、その経済影響は数千億円にもなりうると言われています。

ミツバチの数はまだ回復しておらず、そしてもっとやっかいなことに、蜂群崩壊症候群の原因は解明されていません。ウィルスやダニによる疫病、栄養失調、殺虫剤、過労働や環境変化によるストレスなどの諸説が出されていますが、どの原因も決め手を欠き、どうやらそれらの複合的な要因や養蜂のあり方が失踪の原因ではないかと考えられています。

詳しくは、ローワン・ジェイコブセン著『ハチはなぜ大量死したのか』(文藝春秋、2009年)
をお読みになってください。科学的見識に基づきながら、ミステリー仕立てで書かれた良書で、システムや共進化の関係に関しての重要な洞察も含まれています。

食卓を彩る果物や野菜を食べながら、「この作物はどんな昆虫が花粉を媒介したのだろうか?」と思いを馳せてみてはいかがでしょうか?

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