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プロセスワークとシステム思考

2010年10月31日

先日、組織学習協会組織開発コミュニティのイベントで、日本プロセスワークセンター事務局長の横山十祉子さんと対談を行いました。

「プロセスワーク」とは、プロセス指向心理学とも呼ばれる学際的アプローチで、言葉だけでなく身体感覚や動作をふくめた心と体の全体性やものごとの流れ(プロセス)を重視する心理療法として出発し、現在では心理学の枠組をこえて、悩みや葛藤の解決や、より豊かな人間関係や集団/組織の創出を目指すファシリテーション技法です。

このプロセスワークとシステム思考との、共通点や相違点を対談で話し合いました。

共通点は、その根底にある考え方から、具体的にファシリテーションで目指していることまで、数多くありました。

たとえば、プロセスワークではそこに葛藤や病気や不具合などの問題があったときに、「その問題は何を意味しているのだろうか」と考えるそうです。システム思考の場合、「システムの挙動は、どのような構造によってもたらされているのだろうか」と考えます。なぜならば、「システムがある挙動をとるのには必ず理由がある」と考えているからです。

また、プロセスワークでは、より認識できている「1次プロセス」から、あまり認識できていない「2次プロセス」への自覚を促すことで葛藤の解決や本人の成長を促します。システム思考のプロセスもまた、すでに見えている要素やつながりを構造的に示した後、「自分たちに見えていない要素やつながり、フィードバックは何であろうか」と考え、自分たちの視野やメンタル・モデルを広げることを目指します。

そして、どちらの方法も根底では、世界は数多くのつながりで構成され、全体性が個々の状態に大きな影響を与えると考える世界観があります。

相違点はもちろんたくさんあります。プロセスワークは人間の内面(内的システム)により重点があります。また、問題解決だけでなく、スピリチュアリティの実現にも活用されています。

一方、システム思考は現実世界(外的システム)から描き始め、それが内的システムとどのようにつながっているかを考えます。また、システム思考ではループ図などの見える化するツールを多用し、論理性も強いです。

システム思考のツールは、現実世界と関係する人たちの内面にどのような相互作用が働いているかを見るのに力を発揮します。しかし、「何が見えていないか」を考える際には、システム思考のツールは直接的には助けてくれません。気がついていないことに気づくためには多くの場合、現場の観察、周囲の人たちとの対話、そして実践者の熟達に依存しています。

プロセスワークとシステム思考の共通点、相違点を踏まえて、お勧めすることが2つあります。

まず、プロセスワークなどの人間の内面を主に取り扱う実践者にとっては、ループ図などシステム思考の見える化ツールは、より多くの人で理解したり、コミュニケーションしたりするうえで、補完的な役割をしてくれるでしょう。また、組織トップやマネージャーなどの論理性の強い意思決定者たちへの説明を助けてくれることでしょう。

一方、システム思考の実践者にとっては、ループ図を描いても見えていないことやつながりを見えるようにするためのプロセスワークなどの人間の内面について扱うファシリテーション・スキルや「エッジ」「ゴースト」「ランク」などのコンセプトが役に立ちます。特に、ファシリテーターの方やファシリテーターを目指す方にはお勧めです。

今回の対談を通じて、2つの方法の相性の良さや、補完的に活用できる点を実感することができました。今後もこうした異なる分野との対談や対話を行っていきたいとも思っています。

では、また、次回もお楽しみに。

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