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アンディ・ハーグリーブス「期待を超えるパフォーマンスを出す組織とリーダーの15の要因」

2010年12月08日

ボストン大学のアンディ・ハーグリーブス。彼が中心となった米英共同チームが見出した、世界の「期待を超えるパフォーマンス(PBE: Performance Beyond Expectation、以下PBE)」を生み出した組織とリーダーの研究成果に関する、ペガサス・カンファレンスでの講演内容を紹介します。

期待を越えるパフォーマンスを生み出した組織(PBE組織)とは?

彼のチームの定義するPBE組織とは、持続的に、少ない資源で多くを成し遂げ、業界他社よりも優れ、倫理的にも卓越し、必ずしも最大ではなく、ベストの組織です。全世界のビジネス、スポーツ、教育の3つのセクターで約20のPBE組織を見出しました。

ビジネス界では、倒産などの危機を経て再建に成功したり、およそ成功が疑われる分野で成長して、その後持続的な成果を残している企業です。英小売りのマーク&スペンサー、伊自動車のフィアット、米shoebuy.comなどです。スポーツでは、クリケットで世界一を誇るオーストラリア・チーム、カーリングのキルケニー(アイルランド)、ラグビーの英ハル・キングストン・ローバース、サッカーは英バーンレイなど、日本人にはなじみの少ないですが、それぞれ厳しい基準に合致した組織です。教育界では、たとえばロンドンで貧しいアラブ系住民が多く住む教育地区で、最下位クラスの学校ばかりの地区が、リーダーシップ改革後にロンドン全体の平均を上回るようになったところなどが挙げられています。

セクターを超えて見られる15のリーダーシップ要因

それらPBE組織にセクターを超えて見られる15のリーダーシップ要因を上げました。すべて、「F」の文字を含めて発表されているので、元の英語を含めて紹介します。

  1. すばらしい夢(Fantastic Dream) - みなが志し、具体的に語られる夢
  2. おそれを認める(Fear) - 過去の失敗に正面から向き合い、変化を誓う
  3. 逃げずに闘う(Fight not flight) - 障害を前にして挑む
  4. 過去とつなげる未来(Fundamental Futures) - 将来の変化を過去につなげる
  5. しっかりした基盤(Firm Foundations) - 何年にも及ぶ基盤作り
  6. 不屈の精神(Fortitude) - 粘り
  7. 流れに逆らう(Counter Flow) - 本流に逆らい、あるいはすり抜ける(他とは異なる戦略を採用)
  8. 迅速で公正な指標(Fast and Fair tracking) - 進捗を測る意味ある経営指標設定(安易な経営指標は手段と目的を取り違えて失敗する)
  9. 持続可能な成長スピード(Feasible growth) - できるかぎり速くではなく、持続できるスピードで(持続的に成功するターンアラウンドには3年以上かかる)
  10. フュージョン・リーダーシップ(Fusion Leadership) - 異なるリーダーシップ・スタイルを織り交ぜる、二分法で割り切らない
  11. 高い組織への忠誠(High Fidelity) - (リーダーが)周囲の人たちへ忠誠を誓う
  12. 友愛(Fraternity) - 重要なコミュニティと対話・協働を行う
  13. ひらめき、フロー、柔軟性(Flair, Flow and Flexibility) - 活気あるチームワーク
  14. 失敗への寛容(Fallibility) - 人は間違えるものと認める、失敗の余地をつくり、学習につなげる
  15. 友好にあるライバル関係(Friendly rivalry) - 協調と競争を上手に組み合わせる(試合中以外はノーサイド、敵に塩を送る)

これらの中には、少なからず直感に反するものもあります。たとえば、講演会場の多くの人は、「おそれを知らない(Fearless)」を要素に挙げていましたが、アンディはそれでは無鉄砲なだけなので、その逆に「おそれを認める」ことのほうが成功には重要であるとしていました。このように、一つ一つの要因が、単純な線形でなく、現実に即して考えてみれば納得できるものばかりです。

求められるリーダーシップの質

これらの要素を単独ではなく、先に挙げてある要因がしっかりと基盤としてできた上で進めることも大事です。たとえば、ひらめきや柔軟性も、共有するビジョンや組織の基盤ができていなかったら、ただの気まぐれにしかなりません。15の要因すべてまでいかなくとも、先に挙げた要因を基盤に、全体性としてのリーダーシップの質が求められます。

ビジネスであれ、スポーツであれ、教育であれ、多くの組織が、時間、人、金といった資源を十分にない中、他者よりも優れ、倫理的にも正しく、持続的な成果を求められます。ないものや不利な風向きを嘆くのではなく、今あるものを直視して、最大限成果につなげられる一人ひとりのリーダーシップの質が求められているのでしょう。


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