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被災の地から、日本の未来を思う

2011年05月12日

(メルマガ2011年5月12日あとがき)

年始以来、久々のメルマガ再開となります。年始当初は、業務集中によって滞っていましたが、3.11震災以降は、震災対応などに注力し、また、電力事情なども勘案して不急のメルマガの発信を差し控えておりました。

しかし、震災後のさまざまなものごとの展開を目の当たりにしながら、システム思考や学習する組織が変化を創る方法論としてますます必要とされていることを実感しました。電力の逼迫などの状況も注視しますが、メルマガを再開してお役に立てていただけるよう、情報発信をしていきたく思っています。

当初、東京から間接的な支援を中心に行っていましたが、4月下旬から、枝廣、小田が順次被災した宮城県石巻市に参りました。ご縁のあった緊急支援NGOの事務所で応援スタッフとして微力ながらお手伝いをさせていただいております。このメルマガも石巻市からお届けしています。

実際の現地の様子を見て自然の力にあらためて畏怖を感じると共に、そこで被災されながらもがんばっている方々のお話を聞きながら、人間の芯の強さなど、学ばせていただく毎日です。

そして、今がまさに石巻、東北、そして日本が復興して、私たちが真に望む未来を創造できるかの岐路にきていることを感じます。そして、今このときに、私たちが何を考え、何を会話するか、周囲の人達とどのようにやりとりをするかが、未来の下地をつくっているからです。

被災した人達と東京から支援にきている人達で車座になって話をしました。皆さんの話を聴きながら、「あるものを一緒に探す。そこにいる人達で一緒に始める。」という組織開発の原則を思いました。会話が私たちの思考をかたちづくり、その思考が私たちの行動、そして、未来をかたちづくっていきます。

今回、たまたま東北沖で地震が起こり、大きな被害が福島、宮城、岩手など広域にわたって発生し、その影響は電力網やサプライチェーンなどを通じて日本全国に及んでいますが、今回のような災害は、日本の多くの場所で、ほとんどの日本人の人に起こりえただろうことを思います。そして、今なお起こりうることを心しなければならないでしょう。

今回のような規模の災害が訪れたときに、どれだけ被害を緩和し、どれだけの復元力をもつことができるかは、ハード面、ソフト面で私たちがどのような経済や社会の構造をつくっているかに依存します。とりわけ、私たちの未来を左右するようなレバレッジは、人・組織・コミュニティの力、ネットワークの質、そして誰もが発揮しうるリーダーシップにあると言っても過言ではないでしょう。

私たちを今まで支配していた価値観は、「大きなインフラ」「効率化」「標準化」などです。しかし、短期的な効率を目指すことはえてして長期的な効率につながらないのが複雑なシステムの特徴です。衝撃に耐え、回復する「しなやかさ(レジリエンス)」を実現するには、「多様性」「冗長性」「ネットワーク」「モジュール」といった、システムの別の特性を伸ばさなくてはいけません。効率としなやかさがバランスよくあって、はじめて長期にわたって持続的な価値創造が可能になるからです。

チェンジ・エージェントでは、引き続き、システム的な観点から、東北の復興のためにできることを継続し、この体験から学んでいきます。そしてその学びを活かしながら、広く、人材、コミュニティ、ネットワークの育成を図り、自分たちの周りで、「今ここ」で一緒にいる人達と、未来を語り、今の現実を変えて行くうねりを起こしていきたいと思っています。

小田理一郎・枝廣淳子

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