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データハイライト 「数字は語る」 (アースポリシー研究所)

2011年12月05日

データハイライト 「数字は語る」
http://www.earth-policy.org/data_highlights/2011/highlights12/? (英文)
アースポリシー研究所

レスター・ブラウンの最新刊、『仮邦題:崖っぷちに立つ世界:環境破壊と経済破綻を防ぐ方法』(World on the Edge: How to Prevent Environmental and Economic Collapse) に添えられた数百のデータは、現在の地球の苦境を明らかにするとともに、今後どうなる可能性があるのかを認識させてくれる。その中から主要データをいくつかここに挙げてみたい。

危機に向かって方向転換:
1950年以来、世界経済が10倍近く拡大するにつれ、地球規模で消費量が天然資源の量を上回り始めた。生態学的赤字が進むのを許したのと同じ価値観が、世界中の財政赤字増加の一因となりつつあり、経済発展を阻害する恐れがある。
      
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        【グラフ】世界総生産(1950年-2009年)
         単位:1兆米ドル(2009年)
         出典:産業審議会

化石燃料や再生不可能な帯水層(水の充満した地下の堆積層)中の地下水など、地球の天然資源の一部は、有限で、枯渇する可能性がある。しかし、中には再生可能なものもある。利子を生む銀行口座のようなものと思ってもらえばいい。元金が残っている限りは、その利子で無期限に暮らすことができる。

自然界なら、土壌が維持されている限り、同じ土地から収穫できる。漁獲高が各漁場の持続可能な漁獲量を下回っていれば、海で魚を獲り続けることができる。
揚水量がかん養率(地表の水が地下に浸透する率)を超えない限り、地下から水を得ることができる。重大な結果を招くこともなく、炭素は大気、陸地、海洋を正常に循環できる。

しかし、人口が増加し、世界経済が拡大する中、需要が地球の再生容量を超えた。私たちは森林を乱伐し、田畑を過剰耕作し、牧草地で過剰な放牧を行い、帯水層の水を過剰揚水し、海で魚を乱獲し、自然が吸収できる量をはるかに超える炭素を大気中に排出している。

こうしたマイナス傾向の多くが絡み合い世界の食料供給に影響を与えている。長年、世界は飢餓人口を減らすことに成果を上げてきたが、1990年代後半にこの流れは逆行した。今日、世界では10億人近い人々が栄養不良である。

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        【グラフ】世界の栄養不良者の数(1969年-2009年)
         単位:百万
         出典:国連食糧農業機関(FAO)の資料を基にアースポリシー研究所で編集

食料価格が上がるにつれ、飢餓人口がさらに拡大しそうだ。2010年の夏、凄まじい熱波がロシアの小麦の収穫に壊滅的打撃を与えたことを受けて、2011年初頭、主要穀物価格は史上最高近くにまで値上がりした。高騰する食料価格により最底辺で暮らす人たち――彼らの多くは収入の半分以上を家族の食費に使っている――が最も打撃を受けた。

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        【グラフ】穀物価格指標(1990年1月 - 2011年1月)
         出典:国連食糧農業機関(FAO)

安価で十分な食糧を確保できない政府は、政情不安や社会不安の危険にさらされる。基本的な安全保障を供給できなければ、国は破綻に陥るかもしれない。世界の破綻しつつある国家の多くは、高い人口増加率と衰える資源基盤が足かせとなっているため、国際的な食糧援助に大きく依存している。
 
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        【グラフ】破綻の可能性が高い国家の数(2004年 - 2009年)
         国の数
         出典:アースポリシー研究所、平和基金会、フォーリン・ポリシー

新しい方向:
時間がなくなってきているが、危機から引き返すことは可能だ。各国政府にとって安全保障は大きな関心事だが、私たちはいまだに前世紀――2つの大戦と冷戦に支配された時代――に作られた安全保障の定義を引き摺っている。

今日、私たちは、武力侵攻というよりむしろ、気候変動、人口増加、水不足、貧困、食料価格の高騰、破綻しつつある国家などの影響から危機にさらされている。
世界全体の軍事支出は年間で1兆5,000億ドル(約123兆円)を超えるが、従来型の国防支出では、私たちの将来を真に脅かすこれらの問題を取り組むのに、ほとんど効果がない。世界の軍事支出のわずか12%をこうした問題に振り向けるだけで、貧困撲滅、基本的医療の確保、人口安定化、地球の自然のシステムの回復といった目標を達成することができる。

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        【グラフ】地球と社会の回復を目指す予算と世界の軍事予算の比較
         単位:10億ドル(約820億円)
        【グラフ横軸凡例】 基本的社会目標 地球回復目標 世界の軍事支出

気候安定化とは、再生可能なエネルギーを劇的に増やし、エネルギー効率を生かし、交通システムを再構築し、森林伐採を抑え、植林をすることにより、炭素排出量を急速に削減することを意味する。過去10年間にわたり、太陽エネルギーと風力が世界のエネルギー産業の中で最も急成長を遂げていることは、早くも希望の兆しである。
      
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        【グラフ】資源別の世界エネルギー増加率(2000年-2009年)
         平均年間成長率(パーセント)
        【グラフ横軸凡例】太陽 風力 石炭 地熱 天然ガス 水力発電 石油 原子力

出典:アースポリシー研究所編集

政治家の間では2050年までに二酸化炭素排出量を80%削減しようという話し合いが行われているが、気候がもたらす大災害を防ぐには、より大胆な削減が必要になりそうだ。それとともに、『崖っぷちに立つ世界』で述べられた気候安定化対策が一緒になれば、2020年までに炭素排出量は正味80%削減されることになるだろう。

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        【グラフ】プランB 2020年の二酸化炭素排出削減目標(単位:百万トン CO2)
        【凡例】電気、熱源用化石燃料を再生可能エネルギーに切り替え
         交通システムの再構築 産業における石炭と石油使用の削減
         実質的な森林伐採の終了 炭素隔離のための植林
         炭素隔離のための土壌管理 その他の正味排出量
        【グラフ横軸タイトル】 排出基準[2006] = 93億5,000万トン CO2

出典:アースポリシー研究所


(枝廣淳子の環境メールニュース No. 2040 (2011.11.11)より http://www.es-inc.jp)

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