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システム思考で視点を変えよう(3)「マネージャーの仕事は問題解決?」

2011年12月29日

IT関連の会社でマネージャー職に就くSさんは、技術知識はもちろんのこと、論理力にも調整力にも優れ、問題解決のプロを自認していました。どんな問題が起きても、新しい知識を吸収し、問題を解決します。周りからも、とても頼りにされていました。この業界では、解決すべき問題にはこと欠きません。バージョンアップやモデル変更、設備の入れ替えがあるごとに、常に新しい問題が起き、自分の出番となっていたのです。

ところが事業部長が替わり、仕事の仕方が変わりました。「問題を解決することではなく、問題が起こさないことが仕事だ」というのです。それでも「問題などなくならない」とタカをくくり、Sさんは問題解決にいそしんでいました。しかし、ふと気がついてみると、自分のところへの仕事の依頼が大きく減っていたのです。

Sさんは仕事がつまらないなと思うようになりました。問題はさほど発生しないし、たまにあっても解決してそれでおしまい。一体、自分の存在意義は何なのだろうか?もっと問題のある会社に転職しようかなどと考え始める毎日です。

「問題のない状態」を目指すこと自体が悪いわけではありません。しかし、「問題のない状態」に到達した瞬間、何が起こるかが肝です。

考えられるパターンは4つ。まず、1つ目は、気を抜いてまた問題が出てくるケースです。そうすることによって、また仕事が発生しますが、仕事をすることでやがて問題がなくなり、仕事がなくなります。

2つ目は、半ば意図的に問題を生み出すケースです。自分たちの存在意義がない事態を恐れ、組織自らが問題と仕事を作りだしてしまうのです。これは有名な「パーキソンの法則」で、未熟な組織は持ち時間分だけ仕事を作り出すので、常にみな忙しい状態が続きます。

3つ目は、Sさんのように目標を見失ってしまうケースです。達成した後、新たな目標を見つけることができないと、ただ呆然としてしまうのです。

このような場合、4つ目のケースとなる「より高い質の目標を見出すこと」が重要です。Sさんの例で言えば、その優れた技術力や問題解決力を活かして、部下を育成したり、組織をつくる課題に挑戦してもよいでしょう。さらには、豊富な現場の問題解決能力を活かし、事業部長が行ったように、そもそも問題を発生させない仕組み作りに着手することもできます。このような例では、目標が現状を改善し、改善した現状が目標を高める好循環が回ります。

将来のビジョンを描くときに、とりわけ目の前に問題があるとき、つい「問題のない状態」をビジョンとしてしまうことがよくあります。しかし、このようなビジョンや目標の設定は、思わぬダイナミクスを創りだしてしまいます。

また、ビジョンを「他者との比較」をもとに設定したときにも、同じようなことが起こります。2番の時には1番の背中を追って必死だったのが、1番を追い越したときに、とたんに目標がわかりづらくなってしまうことです。

問題の解決も、競争で1番になることも、短中期には目標となり得ますが、長期的な目標としては適さないと言われます。では、どのような目標設定がよいのでしょうか?

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