News & Columns
寒中お見舞い申し上げます。
2011年東日本大震災、東京電力福島第一原発事故、和歌山台風、タイの洪水などの災害、事故で影響を受けられた皆様に心よりお見舞い申し上げます。
平素チェンジ・エージェント社の取り組みにご興味を示してくださる皆様に、厚く御礼申し上げます。昨年の活動について振り返りつつ、今年も皆様のそれぞれの活動や目指す変化についてお役に立てるような、考え方、手法、体験や学び、想いなどをお伝えしていきたいと考えております。
昨年6月に上梓したピーター・センゲ氏の『学習する組織―システム思考で未来を創造する』は、全訳書となって非常に分厚い本であるにもかかわらず、多くの方に入手いただき、上梓後3ヶ月ではや三刷となりました。「ビジネス書の杜」という書評サイトでは、2011年のビジネス書ファン投票第1位、そして、その年の最高のビジネス書におくられる「ビジネス書の杜アワード2011(このビジネス書がすごい!2011)」を受賞しました。
http://change-agent.jp/news/archives/000421.html (目次)
http://people.weblogs.jp/books/2011/08/discipline.html (書評)
http://people.weblogs.jp/books/2011/12/fan2011.html (2011ファン投票1位)
http://people.weblogs.jp/books/2012/01/award2011.html (アワード2011)
私たち自身、この本の上梓に関わることができて、とても光栄に思います。ピーター・センゲ氏の、人や組織に関する極めて深い洞察は、変化の担い手としての私たちの活動にもとても有益な示唆を与えてくれます。また、日本で活動する多くの同志たちの心にも響いている様子を日々目の当たりにしています。
また、昨年は「システム思考」や「学習する組織」の研修やプログラムが拡がり始め、企業の本流に入り始めるのを実感した年でした。今年はその拡がりが、確実に展開していけるよう、組織やコミュニティの後押しをすることを今年の抱負にします。
http://change-agent.jp/products_services/training_program/lineup.html (チェンジ・エージェント社の研修メニュー)
また、昨年は「サステナブル・フード・ビジネス研究会」を立ち上げ、食品関連のメーカー、小売り、商社の方々と、食の価値、供給、アクセスの長期にわたる安定を意味する「食料安全保障」を築くために、今何を考え、何を行っていかなくてはならないかの勉強会を重ねています。
今年も日本と世界の食のシステムを持続可能なものにできるよう、学習ネットワークを拡げて活動していきます。2月10日には、食料問題と環境問題の世界的な権威であるレスター・ブラウン氏を招聘して、環境問題と食料安全保障を考えるシンポジウムを開催します。パネリストには、研究会などを通じて拡がったネットワークから国内の取り組みについてお話しいただきます。グローバルな視点をもちながら、足元からの行動することを一緒に考えてみませんか? 詳細は下記をごらんになってください。(現在キャンセル待ちとなっています。書籍は2月上旬発売開始です。)
レスター・ブラウン『地球に残された時間~80億人を希望に導く最終処方箋出版記念シンポジウム
太平洋東北沖での地震、津波による大震災の被災地にも何度も足を運びました。訪れる都度、自然への畏怖、そして、誰にでも起こりえた大規模な災害を目の当たりにして、生かされた者としての意味や役割について考えずにはいられませんでした。同時に、震災後に東北の人が見せた精神や行動、団結、そして世界まで展開していった人々の絆と利他のネットワークには心を動かされ、勇気をいただきました。
足元では、私たちの暮らす経済社会は平時には効率的に機能していても、緊急時にはきわめて脆弱な、構造的な課題を有することを露呈しました。折しも、昨年12月のSREXと呼ばれる国連へのレポートで、大雨・大雪、洪水、熱波、干ばつなどの極端な気候・気象現象が過去増加しており、今世紀の終わりまでに大幅に増えるだろうとの予測が報告されました。また、地震国である日本では、いつまた大きな地震や津波が訪れるかわかりません。被災地での早期の復興に努力すべきは言うまでもありませんが、そのほかの地域を含めてこの国がどのような社会のあり方を目指すのかを再考するときだと思います。
私たちの生活や産業活動を支えるエネルギーについても、深刻な被害をもたらした原発事故を受けて見直しをしなくてはなりません。原発事故や使用済み燃料処理などのリスクとコストを再考し、どれくらいのエネルギーを使い、どのようなミックスで供給するかの新しいビジョンと戦略が必要です。
また、福島や新潟の原発に依存してきた首都圏のように、都市での生活は、エネルギーや食料や水や森や海など、根底では地方・農村によって支えられていますが、農村部は今高齢化や過疎化によって、都市部を支える基盤を急速に失いつつあります。一方、燃料や食料などを輸入に依存していますが、31年ぶりの貿易赤字となった背景には、円高だけでなく、高騰するモノを買えるだけの価値を創出する力を失い始めていることにも目を向けなければなりません。過去40~50年にわたって私たちの経済や生活を支えた前提が疲弊しているのが現状です。単純ではない、さまざまな依存やしがらみが絡み合う中で、私たちの視野、意識の範囲を広げ、どのような国やコミュニティを創っていくのがより多くの人たち、今と将来の世代にとって幸せをもたらすのか、対話を重ね、将来のビジョンを共に築かねばならないでしょう。
同時に、どのようなものさしで経済社会の進歩を測るかも再考したいところです。今までは規模や効率、標準化ばかりがもてはやされていました。しかし、短期的な視点で規模や効率ばかりを追求し、自然を制御しようとする試みは、長期的に見れば予測不可能だが時より起こる極端な事象に対しての脆弱性をかえって増して、社会そのものの持続性を危うくします。持続可能であるには、衝撃にしなやかに耐え、再起できるような、「レジリエンス」の側面をもっと考慮しなくてはならないでしょう。量と質、効率と安定、標準化と多様性のバランスが求められています。
今年は「レジリエンス」についてもっともっと研究を重ね、学んだことを共有していきます。そして、前提を再考し、全体のつながりとバランスに目を配り、共有ビジョンを築き、ビジョン実現に向けて語り、試し、学び、仲間を広げていける人づくり、組織づくり、コミュニティづくりを支援して参ります。
本年もどうぞよろしくお願いします。
小田理一郎・枝廣淳子