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システム思考で視点を変えよう(5)「机の上が手をつけられないほど乱雑に」

2012年02月28日

Tさんの仕事では情報がとても重要です。さまざまな情報を集めてはメモをとり、それを整理しながら、レポートを作成したり原稿を書く仕事をしています。

そんなTさんの悩みは、机の上がいつも乱雑なことです。「こんなメモがあったはず」としょっちゅう探しものをしていて、執筆も思う通りにははかどりません。なんとか書き上げても、すぐに次の仕事に手をつけなくてはならず、机を片付ける時間も十分取れません。その結果、机の上はますます乱雑になっているのでした。

Tさんの机の上は、「机の上が乱雑である→メモを探すのに時間がかかる→執筆の生産性が低い→片付ける時間がなくなる→机の上がますます乱雑になる」と、典型的な悪循環の様相を呈しています。

机の上が整理整頓されている人であれば、状況はまったく反対に好循環となります。「机の上が整理されている→メモが簡単に見つかる→執筆の生産性が高い→片付ける時間がしっかりある→机の上はいつも整理されている」となり、生産性の高いモードで仕事ができるわけです。

両者の分かれ目はどこにあるのでしょうか? ここでは、「ティッピング・ポイント」という考え方が役に立ちます。ティッピング・ポイントとは、ものごとの急激な変化が始まる閾値、あるいは変化がますます強くなり出す閾値のことです。

「机の上の書類の量」を増やすのは使用するための「書類の取り出し」です。一方、「机の上の書類の量」を減らすのは「メモの片付け」です。仕事をする上で、メモを取り出さないわけにはいきません。しかし、使用後に保管場所に戻すようにすれば、机の上の書類の量は減少します。つまり、片付けるプロセスは、机の上が散らかると発動するバランス型ループになります。

机の上の乱雑さは、実は「ますます乱雑になる」自己強化型ループと、「散らかったら片付ける」バランス型ループの力関係で決まります。

自己強化型ループの強さを、「1日あたりに取り出す量」で、バランス型ループの強さを「1日あたりに片付ける量」で測ると、片付ける量が取り出す量と同じなら、机の上の乱雑さが増すことはありません。しかし、「1日あたりに取り出す量」が、「1日あたりに片付ける量」を上回ると、その差分が机の上に溜まっていき、徐々に自己強化型の「ますます乱雑になる」ループが回り始めるわけです。

バランス型ループが十分に機能しなくなってしまうと、そこから自己強化型ループが急激に力を持ち始めて、手がつけられない状態まで散らかってしまうのです。このバランス型ループが自己強化型ループに力負けするポイントが、ティッピング・ポイントです。

マネジメント上の重要な原則は、望ましくないもののティッピング・ポイントを絶対に超えないこと。悪循環のティッピング・ポイントに近づいてきたら、超える前に先手を打っておくことが重要です。

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