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新年のご挨拶2013~本年の抱負

2013年01月07日

新年あけましておめでとうございます。

目的達成とそのための学習の根本は「振り返り」にあると言いますが、年末年始にあたって一年を振り返り、また新しい一年に向けて展望される方も多いのではないでしょうか。

今号のメルマガはチェンジ・エージェントの昨年一年間の振り返りと新年の抱負です。次号よりいつものメルマガをお届けしますが、今回はよろしかったら私の近況についてお読みください。

チェンジ・エージェントが昨年を振り返ってあらためて実感したことは、「ネットワークのつながり」でした。

昨年も、大局を見て構造のツボをつく「システム思考」や、人と組織がしなやかに変化に適応し進化し続ける「学習する組織」を中心に、オープンセミナーや組織向け研修、あるいは組織開発プログラムを年間通じて提供しました。

昨年は、従来の個々の人に焦点をあてた「人材開発」の枠組みを超えて、組織そのものが強くなる「組織開発」の考え方が急速に広がり始めた印象があります。「システム思考トレーニング」や「学習する組織リーダーシップ研修」などのオープンセミナーへの参加者数・参加組織数も増加しましたが、加えて参加者皆さんの課題意識の高さから、セミナー当日及びその後まで参加者間でのやりとりやつながりが広がっているのをうれしく思います。

今まで東京のみだった「学習する組織リーダーシップ研修」を、昨年大阪でも初めて開催しました。大阪にも、組織開発の学習・実践コミュニティが広がる萌芽を感じています。今年も継続して大阪でのセミナーを実施します。今まで東京で組織開発コミュニティ、福岡での学習コミュニティの展開や、九州の教職員能力開発ネットワークなどを応援してきましたが、他の地域にも広がっていくことへ期待がふくらんでいます。

組織向け研修や組織開発プログラムでは主に小田がコースを提供していましたが、ネットワークを通じてお会いした、これらの分野で経験が豊富な田村洋一氏、吉沢昇司氏らを講師として迎えて、より広く、重層的に提供できる体制が整いました。東京で開催するシステム思考トレーニングベーシックコースでは、吉沢氏との2名で担当して隔月で開催する予定です。

東北復興に関して、震災後から宮城県石巻市を中心に支援しておりましたが、昨年はより広域に広げ、またリーダーシップ開発など私たちの本業の強みを活かす分野での支援を開始することができました。震災対応には、人命救助などの第一段階、衣食住の支援などの第二段階に続いて、人やコミュニティが再生に向かう第三段階があると言われます。この第三段階においては多様な人々の間で対話し、共有ビジョンを創り、現実に変化を起こすリーダーシップを強化するなど組織開発のノウハウが活用されることが期待されています。

NGOのJFS主催「復興に携わる若手リーダー育成ワークショップ」を、日本興亜損保のご支援を受けて、5月、10月に仙台で、12月に陸前高田で開催しました。参加者は、これまでのつながってきた復興関連のネットワークとそこを起点にした口コミによって約70名の方が集まりました。講師には、組織開発の実践者ネットワークでの公募に応じてくれた橋本洋二郎氏、佐々木薫氏と弊社小田があたり、東北で直面する課題の現実、取り組み続けるそれぞれの方の想い、そしてこれからの共有ビジョンや実現への道のりについて活発に話し合いました。このワークショップは、今年も1月に仙台で、2月に福島県で開催する予定です。

昨年8月には、同じく日本興亜損保支援のプロジェクトの一つで、「世界が東北に学ぶ旅」と題して、国内外の若者14名を集め、東北の現実を直視しながらも、復興の現場で取り組む現地の方々がひたむきに取り組む姿やその方々の想いに触れて、そこから感じたことや出現する想い、未来のイメージなどを話し合うプログラムを開催しました。

世界のネットワークへの案内を通じて応募のあった250名の中から厳選されて集まった若者たちは、出身国も、背景も多彩でしたが、東北はじめ世界起こっている事態に真剣なまなざしを向け、よりよい未来づくりに関わる意欲の強い人ばかりでした。ファシリテーターには、リーダーシップ開発としてのラーニング・ジャーニーに造詣の深い、由佐美加子氏(『U理論』共訳者)、ボブ・スティルガー氏が、公募に応じて参画してくれました。

東北の現実の一面に触れた若者たちの様子を日本語と英語のビデオにまとめていますので、よろしかったらご覧ください。
http://www.japanfs.org/tohoku/ja/journey/movie/pages/032434.html (日本語)
http://www.japanfs.org/tohoku/en/journey/pages/032461.html (英語)

世界に目を向けると、ラーニング・ジャーニーなどのリーダーシップ開発、組織開発の手法は、企業組織が抱える現実課題の解決を進めるためにしばしば採り入れられています。食料危機がいよいよ顕在化し始めている食品業界では、『学習する組織』のピーター・センゲ、『U理論』のオットー・シャーマー、『未来を変えるために必要なこと』のアダム・カヘンなどの先駆者たちが、マルチステークホルダーでの対話やリーダーシップ開発を進めることで大きな成果を出し始めています。

チェンジ・エージェント社では、こうした動きを日本でも起こすべく、「サステナブル・フード・ビジネス研究会」を主宰し始めて3年目になります。食品事業者を中心に学習ネットワークを築き、2ヶ月に一度の勉強会を重ねていますが、今年も活動を継続し、ネットワークを多様な利害関係者たちに拡げて行きたいと考えています。

2012年は、弊社の海外での活動も順調に広がった年でした。

今、エネルギーは日本や世界の重要課題の一つ。そして日本の技術が海外にどのように普及するか、期待も大きいところです。JICAを通じてこの3年間、海外の政府や電力会社などで再生可能エネルギーを担当する方たち向けに、システム思考を活用した政策分析を行い、これからのエネルギー政策・戦略立案のお手伝いをしてきました。おがけさまで海外の参加者達からの評判もよく、今後も継続的に政策・戦略立案を支援して行く予定です。

また、シンクタンクからの委託で、「なぜ日本の技術は優れているのに海外ではそれほど普及しないのか」について調査しています。2011年にはインドネシア、2012年はインドを訪ね、それぞれ20名近くのエネルギー専門家・実践家たちにインタビューを行ってきました。現地・現場で実際にどのような意思決定が行われるかを見聞きすることは学習の基本として私たちが知らず知らずにもっている前提に気づかされます。そして、こうした海外の専門家の紹介もまた、今まで築いた海外の実践家ネットワークのつながりのおかげと実感しました。

世界のつながりの一つは、『学習する組織』のピーター・センゲの創設した組織開発協会、通称SoLのコミュニティです。この3年ほど、洋の東西をまたぐ真にグローバルなコミュニティを創ろうと、各国代表の間で対話が重ねられました。チェンジ・エージェントの小田も日本代表として、そして東洋側を代表するお世話役として対話をサポートしてきましたが、昨年5月、ついに「Global Association of SoL Communities」(通称Global SoL)の設立にこぎつけました。各国・地域のSoLコミュニティがそれぞれネットワーク組織でありますが、このGlobal SoLはネットワークのネットワークともいえる存在です。2014年、フランスのパリで第4回グローバル SoLフォーラムを開催されることを決めました。東洋と西洋の叡智を融合し、世界の大きな課題解決に向けて学習ネットワークを拡げて行く予定です。

私たちチェンジ・エージェントにとって、システム思考や学習する組織の基本や実践を学ぶ基盤となっているのが、1982年に故ドネラ・メドウズとデニス・メドウズによって設立された「バラトン・グループ」です。一年に一度世界の東西・南北からシステム思考の実践家たちがハンガリーのバラトン湖畔に集い、サステナビリティの現状や実践について議論します。枝廣が理事を務めた後に小田が理事となって、現在では同グループの会計担当及びフェローシップ委員長を担っています。

過去500名ほどの参加者が集っているバラトン・グループでは、現在活躍している実践家たちをスピーカーのほか、サステナビリティで活躍する新しい人材発掘のためにドネラ・メドウズ・フェローシップ・プログラムを設けて、主に途上国の女性(先進国・男性もまれに)たち数名をフェローとして招きます。途上国で活躍する若く優秀な人材たちのビジョンや課題に耳を傾け、彼女らのリーダーシップ開発を行っています。

こうして振り返って見ると、昨年のさまざまな活動は今までお会いしてきた人たちとのネットワークの賜であり、また、その活動の成果としてさらにネットワークが広がり、また絆が深まっていくのを実感します。

そして、ネットワークが機能する上で重要なのが、「共有ビジョン」ではないかと考えます。共有ビジョンの立て方もいろいろで、目的や意図に共鳴して集まった人々が戦略や目標の基礎となる具体的なイメージをつくっていく場合もあれば、目的は違えども、互いに手を組むことでそれぞれの目的に資するつながりや重なりに注目してビジョンを共有する場合もあります。部分的であれ、全体的であれ、「共有する未来」を描いたネットワークはきわめて有効に機能すると実感します。

もちろん、すべてのネットワークや、ネットワークのすべての人と共有ビジョンを描けるわけではありません。しかし、共有する未来や共通の関心をもちうる人たちを知る機会がなければ、実現できることは自分自身や自組織でできる範囲に限定されます。ネットワークづくりも、目先のことよりももっと先にある目的を見据えて長い目で見て拡げて行くことが大事ではないかと思います。

私たちのように小さな組織ではなおさらですが、現在日本や世界が直面する課題は、一個人や一組織で解決できるような簡単なものばかりではありません。だとしたら、個人や組織が能力として、「共有する未来」を持ちうる仲間たちとつながること、あるいは今周囲にいる利害関係者たちと共通の関心や共有しうる未来について深く対話ができることも広げておくのが有効でしょう。

2013年、チェンジ・エージェント社では、まず私たち自身、食料、エネルギー、環境といった現代社会の課題解決のためのネットワークを拡げて、課題解決能力そのものを高めていきます。結局、私たちに直接変えられるのは私たち自身しかありません。その私たちの範囲が広ければ広いほど、変化の範囲も広がっていきます。

人づくり、組織づくり、ネットワークづくりに関して、私たち自身の実践から学び、そして、日本と世界の一流の実践家たちからも学び、その学びを日本に広げて、実践し、また世界にもその学びを拡げて行きます。

微力ではありますが、夢は大きく、そして実践は足元で、目の前の一人ひとりに寄り添って進んでいく所存です。

本年もどうぞよろしくお願いします。


2013年正月  小田理一郎・枝廣淳子

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