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今、「フードロス」という課題のマルチ・ステークホルダー・プロセスに、ファシリテーターとして関わらせていただいております。マルチ・ステークホルダーとは「多様な利害関係者」のこと、ここでは、行政、企業、NGO、市民などが参画して、どうすれば日本の膨大な食品のムダ、廃棄の量を減らせるかについて話し合っています。
(フードロス・チャレンジ・プロジェクト: http://foodlosschallenge.com/)
世界では食料生産の3分の1に及ぶ13億トンがムダとなっていますが、日本でも実に1800万トンにも及び食品廃棄物が発生していて、うち500-800万トンは本来食べられるにも関わらず廃棄されています。昔の人たちは、モノや命が本来の役割を果たしきれないことを「もったいない」と呼びました。食用に作り出される食料の1割近くが食べられるのに捨てられるのは本当にもったいないことだと思います。
ラーニング・ジャーニーでは「なぜ食品の廃棄やロスが起こるのか」「廃棄やロスを減らすことに積極的な事業者や生活者はどのような取り組みをしているのか」といったことをサプライチェーンのさまざまな段階で学んできました。その学びを共有しながら、「なぜフードロスを減らす取り組みが普及していないのか」「なぜ私たちはやればできるのにフードロスを発生し続けるのか」といった問いについて、掘り下げて考えながら、私たち一人ひとりの当事者としての意識や、創り出したい未来とそのためのアクションについて、対話を重ねています。
「こんな問題は大きすぎる」「自分たちには解決できない」―大きなシステムの課題に取り組むときに、私たちがしばしば感じる壁です。しかし、システムは私たち一人ひとりがつくるもの。私たちはシステムの一部、内因性の一部であり、また、私たちの思考や行動はシステムを代表しているものでもあります。誰か一人が悪いわけではない―しかし、私たちが他者、他の利害関係者たちとどのようにつながっているかが、システム構造をつくり、全体の流れを生み出します。
マルチ・ステークホルダー・プロセスは、誰かを責めるのではなく、自分たちを取り巻く環境、構造、そして私たちのメンタル・モデルをあらためて省察しながら、個々の利害関係者の打ち手を有機的につなげたものにすることで、大きなシステムの変容を図るアプローチです。素晴らしい仲間に恵まれ、この課題についての本質とレバレッジを探っています。