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【開催レポート】2014年1月16日「食のサステナビリティと企業」連続セミナー(4) 「生物多様性が食品企業にもたらすリスクとチャンス」 <第4期サステナブル・フード・ビジネス研究会>

2014年02月19日

自然の恵みを原材料とする食品業界にとって、生物多様性は原料・商品調達や顧客への安定供給の根幹を握る死活問題ともいえるでしょう。食品業界に限らず、私たちの経済や生活は、生物多様性の恩恵を受けています。

ところが、その活動によって掛かる自然への影響のために、生物多様性が「生態系サービス」と呼ばれる恩恵を提供し続けることが難しくなっていることに対して警鐘が鳴らされています。

生態系サービスの減少がビジネスにどのようなリスクをもたらすのでしょうか?
先駆的な食品企業は生物多様性問題にどのように適応し、チャンスを見出しているのでしょうか?
国内ではどのような目標設定をしていけばよいのでしょうか?

o.jpg(ファシリテーター/スピーカー:チェンジ・エージェント代表取締役社長 小田理一郎)

講義 「生物多様性が食品企業にもたらすリスクとチャンス」

はじめに、生物多様性や生態系サービスの基本的な考えかたについて簡単におさらいし、世界の食料と生物多様性の現況と傾向、経済的な影響について弊社小田より概況をお話しました。生物多様性というと二酸化炭素と比べても定量化しづらく、日本のビジネスにまだまだ浸透していません。その一つの理由に例えば、農作物に対して、蜂の受粉サービスのような、「自然の恵み/生態系サービス」のほとんどの部分が、外部経済、市場では評価されていないことがあります。そして、生物多様性は機能を急速に失っており、その規模は毎年日本のGDP分に相当するほどとの研究報告が最近なされました。

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つぎに、私たちが、商品やサービスを扱う際に、原料調達、輸送に関してどのような生態系サービスの恩恵を利用しているかについて、話合いました。水や木材などの供給サービス以外にも、間接的には、気候の制御などの調整サービス、文化的サービスあらゆるものに関わりがあることが確認されました。

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科学的な側面からみると、生物多様性での変化は、徐々に劣化するフェーズから、ある閾値を超えると、不可逆的で急速な変化が起こることが知られています。また、経済的な側面からみた、リスクやチャンスについて、企業にとって、水の規制の強化のリスク、訴訟のリスク、ブランドリスクが起こりうるが、逆に規制による顧客嗜好の変化で、市場が変化しブランディングをチャンスにしている企業での事例などを交えて紹介しました。リスクやチャンスを特定するための枠組みについては、「企業の生態系サービスレビュー」(ESR)の活用についても解説しました。

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参加者による討論では、どのようなリスクやチャンスがあるか確認し、自社の状況に置き換えて、話し合いました。さらに、実際に仮の事例を設定し、「企業の生態系サービスレビュー」(ESR)の枠組みを使って、リスクを確認し、生物多様性の問題をどう自社の戦略に当てはめられるかグループで考えました。

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次回 3月13日の連続セミナーのご案内:「価値創造企業」

企業が自ら本当の意味で市場を創造することは簡単ではありません。そんな時代にあって、社会から存在を認められる多くの企業がとりはじめたアプローチは、「共創」です。さまざまな業務提携が広がる中で、環境問題や社会課題といった分野は、実は共通価値を見出しやすい分野ともいえるでしょう。そうした価値共創の事例を紹介し、共創を成り立たせるために必要な条件は何かについて考えます。これからどのような共創が求められるか、今何を考え、為すべきなのかについて話合います。

日時: 2014年3月13日(木) 16時30分~19時

会場: 東京都千代田区 大手町駅周辺(ご参加の方に個別しお知らせします)
参加費: 一般 5,000円(税込)

今後の予定

A.「食のサステナビリティと企業」連続セミナー

 第1 回(7/11)「2013 年度サステナブル・フード・ラボの報告」 (終了しました)
 第2 回(9/12) 「貧困と企業」(終了しました)
 第3 回(11/7) 「気候変動・エネルギーと企業」(終了しました)
 第4 回(1/16) 「生物多様性(森・水・土・海)と企業」(終了しました)
 第5 回(3/13) 「価値共創企業」(終了しました)

B.「食のサステナビリティ」マルチステークホルダー・ダイアログ

 第1 回(8/8) 「フードロス」(終了しました)
 第2 回(10/10) 「世界の飢餓と私たちの食について考える」(終了しました)
 第3 回(12/5) 「日本の里山・里海」(終了しました)
 第4 回(2/6) 「国際協力」または「震災復興支援」(終了しました)

★サステナブル・フード・ビジネス研究会の会員を募集しております。
★会員以外の方の、単回でのご参加も可能です。(有料)

研究会へのご参加方法

サステナブル・フード・ビジネス研究会は2011年1月に第1期が立ち上がり、今年第4期を迎えました。
食関連事業者による学びあうコミュニティを築いて、世界の最新情報を共有し、話しあい、またビジネスとしてどのように自社のリスクを評価し、また、どのように効率的かつしなやかな食料システムの構築に向けてポジティブな変化のうねりを創るかという、チャレンジに向き合っています。

●研究会が目指すこと
  • 食のサステナビリティに関するビジネス上の課題への認識を高める
  • 食のサステナビリティに関する企業や関係者の動向、課題について知識を深める
  • 一社、業界単独では解決できない問題を協働で解決していく道筋をさぐる
  • 日本の食・世界の食、そして事業継続に関してメインストームにたいしてポジティブなうねりを作り出す

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