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シナリオ・プランニングで組織のレジリエンスを高める

(レジリエンスとは、システムが外部の衝撃に対して、その衝撃を吸収し、いち早く再起する特性のことです。今回から2011に行った経営者向けのレジリエンスに関する講演より、抜粋してご紹介します レジリエンスについてもっと詳しく読む

私たちビジネスを取り巻く事業環境は、今、世界で人口が増え、需要が増え、さまざまな圧力が増え、競争が増え、規制が増える、など増加傾向のものがある一方で、資源、廃棄物処理能力、社会・環境・経済のレジリエンス、行動の選択肢がどんどん減少しています。将来に向かって持続可能なビジネスを創ろうとする時、今までのように効率(厳密には短期的な効率)を追求しても、すぐに潰れてしまうでしょう。一方で、なんでもかんでも縮小に向かうのがいいのかと言うと、それだけではすべての人々のニーズを満たすことはできません。

 こうした状況において、どんな組織が、持続可能なビジネスを生み出せるのか。そのひとつのモデルを示すのが、「学習する組織」です。今までの組織というのは、トップや戦略参謀という考える人がいて、実行する人たちに指示し、その結果をモニターするといった形で運営します。こうした中央のコントロールに依存する組織も20世紀は十分に機能していました。しかし、21世紀になって、ものごとがより複雑化し、環境変化が激しくなっている状況では、事業の環境変化毎に対応策をトップに伺いを立て、判断を仰いでいてはとても間に合いません。一方で、全ての人が考えて実行する組織では、それぞれの持ち場で考えられることは考え、より迅速に実行に移します。組織の中でリーダーシップが分散化して、それぞれの人が責任をもって考え、行動する組織となるのです。今回はこうした「学習する組織」にまつわるストーリーとして、シェル社の事例を紹介します。

長寿企業になるためにシェルが取り入れた「シナリオ・プランニング」

  シェルが、レジリエンスを高めるために行った取り組みが、「シナリオ・プランニング」です。1970年頃、長寿企業になるための秘訣を探して研究調査を行いました。その結果、まずわかったのは多くの大企業の平均寿命は30年ほどでしかなく、中小企業はさらに短いことです。そして、多くの企業は、事業環境の大きな変化にきわめてもろいこともわかりました。

  永く存続する企業を築くために環境変化に対して柔軟な思考や発想で適応する能力は重要ですが、実際には多くの経営者やマネージャーたちはそれをもちあわせていませんでした。人々が世の中のことを見て、考え、行動する際の思考の枠組みをメンタル・モデルと呼びますが、多くのマネージャーたちは次のように見る傾向が強いのです。「効率を重視すれば結果を出せる」「標準化をすることによって質が高まり結果につながる」「企業は人々の集まるコミュニティではなく、利益を生み出すマシーンである」などです。メンタル・モデルは部分的には現実にあっていますが、全体像や大局の中で常にあっているものではありません。実際に経営者やマネージャーの判断や行動の前提には、「未来に起こることは今までの延長線上にある」という考えが強く根付いているため、後になって「想定外」といわれるできごとが起こったときに、企業の存続を危うくする事態が多いことがわかりました。

 シェル社の課題は、いかに経営者やマネージャーたちのメンタル・モデルを広げるか、つまり、想像力をましてさまざまなリスクや機会を想定事項に組み入れるかについて考えるかでした。その目的に適した手法が「シナリオ・プランニング」だったのです。

 シナリオ・プランニングでは、日常の思考に挑むような起こりうる未来に関しての複数の外的環境シナリオを作成して、ユーザーたちはもしそのようなシナリオが展開したら、何を行うかについて検討します。

 具体的に、シェルがこのシナリオ・プランニングを定着させる時代背景を見てみましょう。石油の1バレルあたりの2000年実質価格を1861年頃から1970年頃まで見てみると、$120/バレルほどでしたのが、生産量も増えさまざまなイノベーションから急速に効率化がすすみ、1972年頃には、$20を切る程度まで推移していました。また、消費量も生産能力も年率7~8%成長しており、競合各社もそろって生産能力強化に努めていた時代です。

                          

                   石油の消費量、生産能力と稼働率

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 1972年シェルはこのシナリオ・プランニングでは、一つのシナリオにおいて、「もし原油の供給が減少に転じるとしたら何が起こるか」という問いかけをマネージャーたちにしました。今までのトレンドからすると考えられないような状況設定に対して、多くのマネージャーたちはそんなことがあるわけがないじゃないかと反応します。価格はイノベーションや量産化によって低く抑えられ、生産能力は増強され、いわば、「いけいけどんどん」の成長局面において、原油の供給が減少するなどありえないと見られていたのです。しかし、トップとプランニング部門は、検討することで、メンタル・モデルを広げることの重要性を認識して、マネージャーたちがこの演習を実施することを強く求めました。 

 

石油ショック、そのとき組織のレジリエンスを高めた「分散型の意思決定」

そして、その演習の翌年にあたる1973年10月、中東諸国などがOPECというカルテルを結成し、いわゆる石油ショックがおこりました。このとき、世界の石油が枯渇したわけではありませんが、産油国が生産量をコントロールして、実質的に供給が限られる状態が現実に起こったのです。それによって価格が高騰し、消費が急減します。

ほとんどの石油企業は、この状況においての対策を検討しますが大きな成果にはいたりません。そのことは端的に生産能力の調整に現れています。価格上昇後3年間ほど消費は低下し、その後上下動しながらも横ばいの時期が80年代まで続きます。当然、新たな生産能力の増強はやめる局面なのですが、業界の大半はこの石油ショックは一時的なものでまた消費は増加に転じると考え、生産能力の増強をその後8年間も続けました。その間、消費は伸び悩んでいたため、稼働率の大幅な減少を招き、過剰投資・供給能力によるコスト高によって利益が十分あがらない、低迷状況に陥ります。

 なぜ現実に価格が上がり、消費が減少、ないし伸び悩んでいるのにもかかわらず生産能力増強を続けたのか? これがまさにメンタル・モデルの影響です。現実が変わっていても、また、消費量は回復し、成長軌道に戻る、未来は過去の延長に戻る、という思考の前提をあらためることができずにいたのです。

 一方で、シェル社だけは、シナリオ・プランニングの成果によって、まったく異なる意思決定パターンを展開します。マネージャーたちは、演習の中で供給が絞られた後の価格の動向やその後の消費の回復について、現実的な見方やその確かめ方について、組織ですでに共有していました。したがって、いち早く生産能力の追加をやめて、高い稼働率を保ちました。

 また、一言で原油とはいっても産地によって硫黄成分や粘度などが異なります。中東からの原油の供給量が抑えられていますので、代替の原油を調達する場合、異なる性質の原油に対応する必要があって、石油会社の多くは既存設備では対応できませんでした。ところがシェルは、既存の施設で複数の原油の質に対応できる「アップグレーディング」という技術に投資を向けていました。このことによって他社に比べて原油調達の幅がより広く、オペレーションが継続しやすくなりました。

 さらに、何十カ国でオペレーションをやっていましたが、石油商品の流通の動向は、市場や価格の設定方法、規制などが国によって異なります。したがって、どのように対応すべきかの方向性は国や市場によって異なるのです。他の石油会社は危機対応として意思決定を中央トップに集約しようとしたため、国毎への対応は失敗や大幅な遅れにつながることが多くありました。一方でシェルは、この緊急事態における意思決定の権限を各地域・国に分散することで市場毎に異なるニーズに対してより迅速に対応することができたといわれます。

 その結果、シェルは当時7社ある石油メジャーの中で6・7番目に過ぎなかった存在から、一気にトップグループに躍り出たのでした。そこで大きな役割を果たしたのは、現場で迅速に意思決定できる分散型の意思決定です。何十カ国で経営する大企業にあって現場によって状況が異なり、また刻一刻と変化する状況において中央に意思決定を集めるということは、大幅な意思決定の遅れを伴い、えてして情報系統は混乱し麻痺状態になりがちです。シェル社においては、シナリオ・プランニング手法を活用することで、分散型の意思決定に必要なメンタル・モデルを広げるという備えが中央のレベルでも現場のレベルでもすでにできていたのです。組織のレジリエンスを高めることにおいて競合他社を大きく上回ることで、事業変化に上手に対応していったのでした。


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