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「システム・リーダー」とは、システム規模での変革を生み出すために必要となる、集合的なリーダーシップを人々の間に育むリーダーのことです。歴史に残るシステム・リーダーには、インド独立の父マハトマ・ガンジー、黒人公民権運動を進めたマーティン・ルーサー・キング牧師、そして、ネルソン・マンデラなどが挙げられます。日本でも、明治維新を実現した志士たちの集合的リーダーシップを育んだ吉田松陰や坂本龍馬などがシステム・リーダーにあたると言えるでしょう。

システム・リーダーは、その個性やスタイルはさまざまですが、たいていは「カリスマ」型、「ヒーロー」型リーダーのスタイルとは合致しません(過去の結果から、後に多くの人を勇気づける「ヒーロー」となっているかもしれませんが)。システム規模の課題は、その複雑性や規模ゆえに個人や一組織だけでは解決できない課題です。必然的に、多くの組織や個人が協働して取り組むことなくして変革は起こりません。このさまざまな関係者たちの、集合的なリーダーシップを育むことが最大の特徴です。

しかし、異なる利害関係者たちの間での協働を育むことは、簡単なことではありません。現実に、多くの協働への願いや呼びかけはうまくいかず、むしろ二極化のダイナミクスや過去のしがらみの慣性に囚われてしまうことは少なくありません。結局は、ネルソン・マンデラや坂本龍馬のような、特別な人が必要なのでしょうか?

私たちの答えは、否です。リーダーシップとは後天的な能力であり、システム・リーダーに必要な能力もまた、磨き、育むことができるものです。現実に、世界では数多くの普通の人たちが自らを変容させて、システム・リーダーに必要な能力を磨くことで、会社の中で、地域の中で、あるいは社会問題の領域で、システム規模の変革を起こしている事例が数多く存在します。「学習する組織」によって組織論のパラダイムを変えたピーター・センゲは、システム・リーダーに共通に見られ、必要となる中核的な能力として次の3つを挙げます。

  1. 自分たちを含めたより大きなシステムについて、自分に見えやすいところだけでなく、他者の視点を含めて全体性を見ることを助ける能力
  2. 互いに異なる立場をもつ関係者たちが、互いに内省的・生成的に聴き、話すことを促す能力
  3. 集団の意識の焦点を、受け身・反応的な問題解決ではなく未来の共創へあてて、共有ビジョンがそれぞれの個人の志と重なり合うことを助ける能力

4月25日に開催するシンポジムにおいて、これらの3つの能力がどのようなものか、そして、今出現している世界の企業、NGO、コミュニティの新たなシステム・リーダーたちがどのようにその能力を育んでいるかについて、事例を交えて紹介しました。シンポジウムに関する記事はこちらをご覧ください。

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