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News & Topics

意識の広がりを基盤にした、システム規模の変化を起こすリーダーシップ

MIT上級講師のピーター・センゲは、2000年からエグゼクティブ・チャンピオン・ワークショップを毎年米国バーモント州のストウで開催しています。主催するのは、「学習する組織」の実践・普及を図る組織学習協会(SoL)です。(近年はプレゼンシング・インスティテュート共催)

エグゼクティブと銘打つ通り、参加するのは企業、NGO、財団、国際機関などで活躍する役員やシニアリーダークラスの人たちが中心でした。北米中心ながら5つの大陸すべてから、50人ほどのリーダーたちが美しい山あいのロッジに集いました。

今回はじめて参加をすることになったのはとても意義深いものでした。直前の7月にあったODNJにおいて、サステナブル・フード・ラボの創設に携わり、また多国籍企業の企業文化の変革を進めたユニリーバのアンドレ・ファン・ヘームストラと共に組織開発に関わるセッションを行いました。アンドレさんは振り返って、サステナブル・フード・ラボの誕生のきっかけは、実はこのエグゼクティブ・チャンピオン・ワークショップに参加したことだと教えてくれました。

過去このワークショップから参加した人たちは多くの足跡を残しています。アンドレさんのほかにも、サステナブル・フード・ラボの共同代表ハル・ハミルトン、フォードやベンチャーで学習する組織を次々と育てたロジャー・サイヤン、ナイキの社会価値を飛躍的に高めたダーシー・ウィンスロー、元世界銀行副総裁の西水恵美子さんなどです。こうした実績を残している人たちはリソースパーソンとして、より若いリーダーたちに「生きたケーススタディ」を提供してくれます。

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今までなかなかタイミングがあわずにいましたが、清里合宿の仲間たちが後押ししてくれて今回の参加にいたりました。また、アンドレさんとのやりとりもその意を強くしてくれました。

ワークショップのテーマは、「意識の広がりを基盤にした、システム規模の変化を起こすリーダーシップ」です。それぞれの参加者たちの組織や地域が抱えるシステム規模の課題に対して向き合うために、自らのリーダーシップを研鑽します。

ここ数年ファシリテーションを行っているのは、ピーター・センゲのほか、オットー・シャーマー、アラワナ・ハヤシの3人です。全体のホストはピーターさんが務めますが、対話の進行はオットーさんが、そして、体を使ったワークの進行はアラワナさんが務め、3人で場や参加者のフィードバックをよく観察しながらファシリテーションを進めて行きます。

3日間の流れはU理論に沿った設計です。今の状況を俯瞰し、そのエッセンスを感じながら余計なものを手放し、今浮かびつつある未来を迎え入れて、その未来を形にし、周りの人たちと共に創造していくことを意図しています。

それぞれのモジュールでは、テーマやケースを出して小グループでワークを行い、そのワークの間に起きたことや現れた洞察・問いについて振り返って、最後に全体の場で洞察を共有しながら対話します。

ワークの中で特に印象的だったのは、アラワナさんの身体を使ったワークです。私たちはたいてい、課題や解決策を頭の中で考え、整理して、行動につなげようとします。こうした論理的なアプローチは、複雑性の少ない課題においては有効ですが、複雑で不確実な課題に対しては頭で考えること自体がボトルネックとなることがしばしばです。意識を頭の中ではなく心や身体に向けて、「感じる」行為を通じて、潜在意識や源にアクセスをします。意識が自分の内側・外側・全体に広がった状態から、直観を使って未来創造を図ることは、論理では浮かび上がらないインスピレーションを多数生み出していきました。

そして、ともすれば、抽象的になりがちな身体ワークも、前後の対話で文脈を共有し、またごく簡単ながらもシステム思考やU理論を交えることで、問題の本質に入りやすいことを実感しました。

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場の設計も緻密に練られています。1~2日目に組織が直面する難しい課題や自分の内面の課題も話せるような安全な場がに醸成されていました。また、「意識」を広げ、深めるのは簡単なことではないですが、朝の瞑想や簡単なミニワークを積み重ねることで、2日目の午後のハイライトともなるワークを行うまでには、多くの人が、自分の内と外、そして自分のグループやより大きな文脈への意識を感じ、共通言語として話し合うことができるようになっていました。

身体ワークで「感じる」ことを助けてくれたのは、野外に設営された大きなテントの会場です。「緑の山の州」と呼ばれるバーモント州のなだらかな高原の草地の上で、靴を脱いで大地を感じながらワークする参加者が数多くいました。

その美しい自然に重ねて、オーストリアから移住したトラップ家の精神が場に深みを与えてくれます。世界が第二次世界大戦に向かう頃、トラップ氏は優秀な海軍将校でありながら、ナチスの方針に反対して国を追われアメリカに移住しました。故郷のアルプスに似た美しい山あいの土地の使い物にならない納屋が売りに出されたとき、「この景色を買おう」といってバーモント州に拠点を構え、その後「サウンド・オブ・ミュージック」のミュージカル興業で大成功を納めつつ、移住した土地を守り続けていました。

U理論でいうところの「アブセンシング」は、恐怖と狂信を源に、エゴと分断、そして原理主義を助長します。トランプ大統領候補や移民問題への対応、ネオナチスなどに象徴される原理主義への傾倒は、グローバル社会がこのアブセンシングに流されていることの兆候なのではないかと思えます。そうした潮流の中でいかに惰性に流されず、自らの内的基盤をもちながら全体性への意識、「愛=他者の存在の正当性」をもって、そこにいる人たちと向き合っていけるか。歴史と今が重なる文脈の中で、私たちの対話と内省が展開されていきました。

私自身の最大の学びは、「コンパッション(慈悲)」でした。エンパシー(共感)は受動的であるのに対し、コンパッションはより能動的で、相手が抱く恐れ、不安、ねたみ、エゴなどを吸い入れながら、吐き出すときにはやすらぎ、希望、愛、全体性に転換していきます。相手のマイナスの感情や状況を受けとめながら、プラスの感情や前進するための手がかりを差し出すというものです。

この考えに触れたとき、すぐに私の心に浮かび上がったのが、故ドネラ・メドウズです。自然科学やシステムに通じながら、精神性や慈愛を基盤としてシステムの変革に向けて世界にメッセージを発信し続けました。彼女のあり方こそが、コンパッションそのものであったと思ったときに、それこそが私が現世において実践し、伝え、広げたいレガシーであると感じました。

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今後に向けてですが、日本においても、こうしたワークショップを開催するだけの知識や技術は十分あると感じています。社会、市場、宗教における「原理」志向が強まる今日、こうした手法が、企業でのリーダーシップ開発から、ひいては、学校教育まで、さまざまな場で展開することは、個の基盤と多様な全体性の両立を図る上で重要です。

そのために、主宰者、設計者、ファシリテーターそして学習者としての私たちのあり方を互いに高め、研鑽し合うような人的ネットワークの存在が欠かせないと感じています。その模範を示してくれるピーターさん、オットーさん、アラワナさんには感謝に堪えません。

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