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自己組織化とは?

「自己組織化」とは、システムが自らその構造を追加、修正、進化させることを言います。生命の進化、技術の進歩、市民による革命などはみな自己組織化の例であり、また、学習する組織(ラーニング・オーガニゼーション)もまた自己組織化できるかどうかが一つの重要な特性となります。

生命ならば、環境変化にさらされながら、多様なDNAという原材料のもとに、新たな組み合わせや突然変異によって新しい機能が加わり、環境の中で適者生存の法則により淘汰されながら進化していきます。

技術の進歩ならば、環境変化や満たされていないニーズのもとに、多様なアイディアやプレイヤーたちがさまざまな発明やプロトタイプをつくり、実際の市場や社会の中でテストされ、しばしば小さな変化が積み重なって、市場や社会に普及するイノベーションとなるかが試されていきます。

市民による革命は、圧政の猛威やその発生原因でもある古いレジームの崩壊リスクが高まっている状況で、勇気ある市民が異を唱えて新しい統治の原則を示し、多くの市民や団体がつながって新しい統治原則の支持を示すかどうかによって、時に急速に、また時に時間をかけてレジームのシフトをしていきます。

自己組織化を導く条件と課題

これらの例から見てわかるとおり、自己組織化が起こるときには概して、システム変容を迫る環境変化、多様性という原材料、新しいアイディアを生み試す場、そして、そのアイディアの普遍性を試し選択淘汰する環境が存在することがわかります。

学習する組織について言えば、組織変容を必要とする事業環境の変化にはことかかず、また、ビジネスでは、その製品・サービスが市場で競合を上回り顧客のニーズを満たすかどうかで選択淘汰されるメカニズムが存在しています。残る鍵は、多様性のある人材、能力の組み合わせ、そして、そのような人たちが新しいアイディアを話し合い、育てていく場を持っているかどうかと言えるでしょう。学習する組織が多様性や対話を重んじ、また、ダブル・ループ学習やトリプル・ループ学習などを促す深い学習サイクルを組織プロセスに組み込む所以です。

自己組織化を語るとき、もう一つ重要なことは、それが少数のルールや原則によって、局所的な自己組織化を積み重ねることでやがて大きなシステムの変容を導く点です。少数のルールは、例えば生命ならばDNAの働きが基本ルールになって、生物の構造や機能を決めています。キャンベルスープの組織開発において、彼らが大事にした基本ルールは、「キャンベルは社員を大切にし、社員はキャンベルを大切にする」です。そしてそれをトップやマネジャー層たちが率先垂範することで、会社規模の行動変容をもたらしました。

私たちの社会や組織も、末節にある法やルールはさまざまですが、根幹をなす憲法や理念はシンプルです。新しいシステムのパターンを望むとき、構造を細かく変えることよりも上位にあるシステムの目標やその存在の根幹をなすパラダイムを変化させることは、ドミノ式に多くの変化を生み出します。閉塞感のあった欧州において地動説から天動説に変わり、新たな新大陸を目指す動きがあちこちで広がったように。 

 

一方で、異質なものや多様性、実験に対して、私たちは基本的に大きな恐れがあります。一時的であったにせよ、コントロールを手放さなくてはいけなくなるからです。(とりわけ、トップや為政者は、構成員たちの自己組織化を恐れがちです。)

動物は鳥やほ乳類、ヒトにいたるまでさまざまな進化を重ねてきましたが、一つ変えずにきたことが、左右対称の法則です。目も耳も、腕も足も翼も、左右対称を基本として残した上で、さまざまな実験を重ねてきました。私たちの社会や組織もまた、人間として、社会で生きる同胞、同僚として変えずに持ち続ける価値観があり、その何を大事にして共に残していくか、あるいは新しい変化を導く原理とするのか、に関わる共通理解なくして、組織や社会の構成員が最終的にその選択を受け容れることは難しいでしょう。

より多くの人が自己組織化を進んで望むには、より具体的に、今起こっている状況の「ありのままの真実」をみつめ、それが何を意味するかについてさまざまな視点で探求し、選択肢についてもその中長期の意味合いまで見極め、そして何を残し、何を変えるのかについて話し合うプロセスが必要です。同時に、このようなプロセスに参加しない人たちは、いかなる変化にも後ろ向き、無関心な姿勢を示し、また表面的なことに迎合した行動に終始することがしばしばです。 

今、歴史上の大きな転換点の一つにさしかかっているかも知れません。ローマ帝国末期しかり、漢王朝末期しかり、ナチスしかり、洋の東西問わず時代の変わり目においては、構成員たちが考えることを放棄し、トップとその取り巻きの独裁に依存した組織はたいてい潰えていきました。近年の日本の組織にもそうした例がないでしょうか? 

一見強いトップが引っ張っているように見える組織も、実は構成員たちの自ら考えることを促すことで存続できたと考えています。本当に強いトップは、自己組織化を重んじる結果あまり前面にでてこないこともあるでしょう。また、多様性や異質性を受け容れて実験やプロトタイプの場を築くような「変化の担い手」の存在も重要な役割を果たします。

あらためて、組織開発の中で、自己組織化とその条件について考え、議論してみてはいかがでしょうか?

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