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石巻ラーニングジャーニーを終えて

2018年08月03日

 7月7日~8日宮城県石巻市でのラーニングジャーニーを開催しました。今年は10名の参加者の皆さんとともに、石巻で個人、組織、地域のそれぞれの立場から復興に取り組まれている方々の話を伺いました。

 次の3人の方々の話を、できるだけゆかりのある場所で伺いました。

  • ご両親が被災されて亡くなり、ご自身の体験や当時の様子をありありと伝えてくれる語り部の高橋匡美さんの話を甚大な被害を受けた南浜町で聞きました001142-02.JPG
  • ご自身の会社が大きな被害に遭いながらも被災事業者たちの横のつながりを築き、石巻の魅力をかつて以上にするために尽力されている松本俊彦さんの話を石巻市街地にて聞きました。001142-11.JPG
  • 5年間のブランクを経て今年から石巻市議会議員として、地域に恩返しをしたいとパワフルに活動される阿部かずよしさんの話は牡鹿半島の宿で伺いました。001142-07.JPG

 どの方の話も聞き手である私たちの心に強く響くものでした。夕方には、参加者同士一人ひとりが何を感じたか、問いが立ったことは何か、それらは自分にとってどのような意味があるか、といったことを振り返って対話をしました。001142-06.JPGさらに、その初日の夜には、現地サポートをしてくださったサードステージの杉浦さん、新井さん、昨年に続きお世話になった割烹民宿めぐろの若旦那にも被災のときやその後の活動・想いなどについて話を聴きました。001142-08.JPG

 翌日には、地元住民助け合い団体寄ライン牡鹿の皆さんと交流しながら、牡鹿半島の漁業や地域の人口の過去と今、これからについて皆さんの想いとともに話を聴くこともできました。001142-01.JPG

 レジリエンスとは、人、集団などがもつ衝撃への弾力性やその後の再起力を表すシステム特性です。震災によって多くのシステムは機能を停止し、時間をかけて再起していくものもあれば、未だ再起せずあるいは消えかかっていくものもありました。とりわけ、それぞれの個人、家族、コミュニティが受けた衝撃は甚大なものでした。アイデンティティを保ちながらその営みを持続していくことが出来るのか? それは、そのシステムがもつ潜在的な構造に依拠する一方で、衝撃的な出来事に対してそこで人々の間でどのように集い、語り、互いに耳を傾けて、再起力を育んでいけるかも大きくかかわっていました。

 そこから私たちは何を学んだのか、自分の今抱えている課題にどう関係するか、学びをどう生かせるかを考えました。いくつかのテーマに分かれて対話をしましたが、その一例として、ここでは、世代交代におけるレジリエンスのグループの話を少しご紹介します。001142-10.JPG

 時代が流れていくなかで、自分の想いと違うものを引き継がなければならない、という状況に直面すると、得てして組織が抵抗勢力との分断の危機に陥ることがあります。そうしたときに組織の基本的な構造の転換をどうしたら引き起こせるかがテーマになりました。転換にあたって、旧世代と新世代それぞれにおける、譲れないもの、譲ってもよいもの、捨てるものに整理する切り口が、対話を深めるきっかけとなったようでした。前例や従前のルールに囚われることなく、一方の世代の譲れないものと、他方の世代の譲ってもよいものとの重なりに着目することを通じて、なにかそこにつながりを見出すことができるのではないかとの意見がありました。一気に物事を進めることは難しくとも、時間をかけて対話をつなげることが大切であること、そして、そこにはスペースのようなもの、余裕が必要ではないか、という話は、一人ひとりが日常の仕事や生活の仕方を振り返る、大変印象に残るものでした。

 石巻という日常と離れた場所に多様な背景や関心を持つ方々が集い、レジリエンスという一つのテーマを自分ごととして捉えながら、共通体験と対話を通じて学びを深めました。1泊二日という短い時間ではありましたが、互いの学びを助け合いよい場の空気感のもとに、それぞれに自らのあり方を問うラーニングジャーニーを終えることができました。001142-03.JPG

 このとき、西日本では豪雨災害が起こり、日に日に悪化する被害情報が入ってきたタイミングでした。被災地から参加いただいた方もありました。改めてレジリエンスとは他人ごとではなく、いつなんどきに自分ごととして直面することかしれないと感じました。毎日酷暑が続きますが、早い復興を心から願ってやみません。

以下に今回の参加者の声を記載します。

・「天命に突き動かされている方々の『生きる』というエネルギーを、浴びまくったよう」

・「自己のアイデンティティをより強固に収斂(しゅうれん)していく体験でした。」

・「素晴らしい時間をありがとうございました。皆さんとの探求の

時間は、楽しさもつらさもありました。意味のある時間でした。」

・「サードステージのお二人と語り部の方々とのやり取りにもあたたかいものを感じ、頭から尻尾まで、細部にわたって全てに気付きがある味わい深い旅だったと思います。ご一緒した皆様も本当に個性豊かで、自分もふくめて業種、職種、年代、役職等々異なると思うのですが、自分一人では気づけなかった異なる視点、気付きをたくさんいただけました。二日間どうもありがとうございました!」

・「立ち向かうというより共存する姿勢、己の弱さと向き合いつつ一歩踏み出す行動力に、前に進む勇気を頂きました。ありがとうございます!」

・「本当に志の高い、真摯なメンバーと共に旅ができて、本当に学びが多かったです。」

・「今回のラーニングジャーニーに参加し、石巻を訪れる過程を通して、自身を振り返ることができました。また、お会いしたすべての方(石巻の皆さん、ラーニングジャーニーに参加した皆さん)から元気を貰い、とても有意義な時間でした。」

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(北見 幸子)

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