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『社会変革のためのシステム思考実践ガイド』日本語版まえがき(後半)

システム思考の新たな実践ガイドを11月16日に上梓します。ソーシャルセクターで注目を集める「コレクティブ・インパクト」の実践書となっています。

著者はピーター・センゲらと共にコンサルティング会社を設立して学習する組織の実践を重ねたディヴィッド・ストロー、タイトルは『社会変革のためのシステム思考実践ガイドーー共に解決策を見いだし、コレクティブ・インパクトを創造する』です。

著者ディヴィッド・ストローが関わった豊富な社会変革事例をもとに、システム思考の実務的なプロセスをわかりやすく解説しています。

ソーシャルイノベーションの専門家の井上英之氏にお書きいただきました、本書の「日本語版まえがき」(後半)を出版社からの許可得て発売に先立って掲載します。

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システム思考とソーシャルイノベーション

本書では、コレクティブ・インパクトを推進するツールとして、システム思考がどう役立ち、深いところからの社会の変化を促していくのかについて紹介しています。著者のストロー氏は、システム思考を「望ましい目的を達成できるように、要素間の相互のつながりを理解する能力」と定義しています。システム思考に触れるのが初めての方への導入となるように、基本的な用語やツールの説明もしています。では、システム思考という手法は、ソーシャルイノベーションにどのように役立つのでしょうか?

私は、大きく二つのポイントがあると考えています。一つは「(よくしたいのに)意図と異なる結果が生まれるパターンを紐解く」。もう一つは「個々の要素について、より深い理解ができるようになる」です。この本の冒頭からたびたび登場する、「犯罪者に対する厳しい実刑判決」の事例を見てみましょう。

1.意図と異なる結果が生まれるパターンを紐解く

犯罪者に対する厳しい実刑判決は、次のような意図や期待していたことに反する結果を生み出しています。

意図

犯罪を抑制し、市民を守りたい。

意図に反する結果

  • 受刑者の九五パーセントが社会復帰するが、厳しい罰を受けた経験によって心が閉ざされ受刑者たちの再犯率が高まる。
  • 受刑者に子どもがいる場合、残された子どもたちは不安定な境遇に置かれ、新たな貧困や犯罪など、社会不安の可能性も高まる。

しかし、厳しい実刑判決が社会不安や犯罪を生み出す可能性に関しては検討されないまま、厳しい実刑判決がくりかえされています。

この事例で着目したいのは、厳しい実刑判決を出す裁判所の判事は、決して、「犯罪を増やそう!」とは意図していないということです。良かれと思って行っている行為が、必ずしも結果として自ら望む未来に対して貢献していない。それどころか、逆効果であることすらあるのです。つまり、私たちが「意図している」ことと、実際に実現されている「結果」にある、大きなギャップに気づく必要があるのです。

これは、私たちの身近なところでもよく起きています。家族の幸せを願っているにもかかわらず、家庭の関係が悪化してしまうことがあります。同じように、自分が意識していなくとも地球環境に負荷をかけている場合もありますし、組織の誰も望んでいないのに長時間労働が蔓延してしまう、という場合もあるかもしれません。

誰も意図していないのに、どうしてこのような状況が起きるのでしょうか?これを紐解こうとするのが、システム思考の一つめのポイントだと思います。

2.個々の要素について、より深い理解ができるようになる

複雑な社会システムの全体像を把握するためには、個々の要素の理解が欠かせません。たとえば、受刑者たちはなぜ犯罪に至ったのか、属性や経済的な状況はどうか、地域特有の状況はあるか、といったことを、もっと高い画素数で見る必要があります。また、受刑者だけでなく、問題に関わるさまざまな人たち、受刑者の家族や友人、近所の住民や職場の人たち、警察や司法、刑務所といった人たちも含まれます。

もちろん、いま問題に関心をもっている自分自身も「要素」の一つです。「自分は受刑者をどのように見ているのか」に気づくのも大事なことです。システム思考は、自分も含めた各要素がどのようなダイナミズムで関わりあっているのかを観察し、互いの関係性やその背景にあるメンタルモデルなどを理解する際の手立てになります。そうすることで、それぞれの状況に置かれているプレーヤーたちへの共感や受容が生まれ、システム全体が見えるようになってくるのです。そして、この理解が進んだ時、これまで「課題」や「問題」だと捉えていたものが、違ったものに見えてくることがよくあります。

実刑判決の例では、受刑者を大量に生み出していたのは「犯罪そのもの」よりも、実は「人々の犯罪に対する恐れ」だったのだ、という気づきが生まれたことが示されています。

システムシンカー(システム思考家)になろう

本書でもたびたび登場する、システム思考を世界に広げた一人でもあるピーター・センゲさんは、よく「私たちは、すべて生まれもってのシステムシンカーです」と言っています。また、本書の著者ストロー氏も、「システムを感じる」ことは、ほんとうは子どもの遊びのように簡単なんだ、と述べています。ぜひ、この「システムを感じる」ということについて、日常での経験などと照らし合わせながら、本書を読み進めてみてください。

このシステム思考は、一見、左脳的・分析的に見えますが、実は体感や感情も同じくらい大切です。私たちが日常的に感じている五感や自然とつながる感覚への認識をもち、他者への愛情や共感を育む、つまり「人間らしくあること」と、システム思考は密接につながっています。自分に起きていることと、同じような状況の人は何人もいて、私たちはいつも誰かを「代表」しています。そして、それは何かの縮図となっていて、同じメカニズムやパターンで社会問題や世界情勢も動いています。ここで、「私」という存在が、自らも変化しながら誰かと共に新しいパターンをつくりだせば、システムを変えるような変化が広がっていくかもしれません。あらゆる「私」という存在には、大切な「代表性」があると思うのです。

私たち人間という生物には、本来、他者の感情を自分のことのように感じ、共感し、他者と協働する力も備わっています。だからこそ、これまで人類は、社会的生物としての力を発揮し、この世界で生き残ってきたとも言えます。

いま、新しい協働のあり方が問われています。どうやったら違いをこえて協働できるでしょうか。

また自分を理解するように他者を理解し、つながることができるでしょうか。多様性を保ちながら、コラボレコラボレーションを実現できるでしょうか。よりよい未来をつくるために、システム思考が教えてくれるメッセージは大切だと思います。

本書は、社会の問題だけでなく、組織の課題に取り組んでいる人たちに読んでほしいと思っています。あるいは、身の回りの関係性に悩みを抱えている人や、何かを変えるために自分ひとりで始めるのはむずかしいと思っている人たちにも。この本の存在が、誰かを信じることや、他者の背景に好奇心をもって対話してみることの可能性を広げ、多くの人が本来持っている前向きな望みを結集し、よりよい未来につなげていく、大切なきっかけとなることを祈っています。

2018年10月
井上英之

『社会変革のためのシステム思考実践ガイドーー共に解決策を見いだし、コレクティブ・インパクトを創造する』(11/16発売)


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