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『成長企業が失速するとき、社員に何が起こっているのか?――職場に「働きがい」と』「エネルギー」を取り戻す方法』発刊にあたって

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5月21日、日経BP社より『成長企業が失速するとき、社員に何が起こっているのか?――職場に「働きがい」と』「エネルギー」を取り戻す方法』が発刊となります。私(小田理一郎)は監訳を担当しましたが、そのきっかけは、著者の一人であるトム・ロス氏と弊社会長の枝廣淳子が旧知の関係であったことです。枝廣は、ロス氏率いるウィルソン・ラーニング ワールドワイド社で一時期お世話になり、ディック・ライダー著『人生に必要な荷物、いらない荷物①②』(1995年、2002年)『ときどき思い出したい大事なこと』(1998年)、ウィルソンラーニングライブラリー著『どんな相手ともうまくいく!「心の合い鍵」の見つけ方』(2008年)などの翻訳に携わりました。今回も同社書籍の刊行にあたってお声がけをいただき、内容がより組織分野に重点があったことから私が翻訳プロジェクトを引き受けることとなった次第です。

いかにして、働く人たちにとって働きがいのある職場を築き、そして働く人たち一人ひとりが宿す潜在的なエネルギーと可能性をいかに組織の中で通わせるか?

本書の主題テーマは、副題にも現れているようにいかにして、働く人たちにとって働きがいのある職場を築き、そして働く人たち一人ひとりが宿す潜在的なエネルギーと可能性をいかに組織の中で通わせるか、ということにあります。文脈として、かつて人々の叡智を集結して市場や社会に認められた組織であっても、失速後に起こる「経営合理化」や「チェンジ・マネジメント」と呼ばれる取り組みを通じて、多くの組織において、人々が切り離され、そのエネルギーは引き出されず、そして、会社にとっての業績も社員にとっての働きがいもどちらも低位に終わっている会社が世界的に多く存在していることにあります。

 私は、会社員時代多くの業務変革や組織変革プロジェクトに関わってきました。独立起業後もまた、国内外のさまざまな組織で変革を行う支援を展開しています。そうした経験から、本書は新旧のさまざまな研究や現場実践の智慧が凝縮してまとまっており、また、実践的に打ち手を展開しやすい実践書としてお勧めできる内容と感じました。書籍で紹介されるのは、海外事例ばかりですが、実務経験から言うと日本の組織の課題と重なることが多くあると思います。日本の読者の皆様にできるだけ読みやすく心がけて翻訳にあたりましたが、そのできばえは是非手に取ってご覧いただき、皆さん自身にご評価いただけたらと思います。

本書の魅力と特徴

私が本書の魅力と思うのは以下の点にあります。

  • 古典的な組織理論から最新のリーダーシップ理論まで、幅広くしっかりした学術リサーチに基づいている
  • アカデミックな理論だけではなく、現場のリーダーや従業員たちに行った大規模な現場のリサーチに基づいて現実の組織のしっかりした観察や分析を行っている
  • そうしたリサーチの結果を、現場のマネジャーに伝えやすい、シンプルゆえにわかりやすいモデルを多数提示している
  • 経営者、現場のミドル層、あるいは社内外の支援者(コンサルタント、ファシリテーターなど)にとって、具体的にどのように人々を巻きこみ、知的な協働作業を展開していくかの具体的な取り組みの例や、あるいは企業での実践例を多数示している

本書の構成を概観しながら、上記の特徴についてごく簡単にですが紹介したく思います。

 第1章では、働きがいやエネルギーと関わりの深い、「エンゲージメント」の考え方について、学術面と実践面の両面から考察しています。著者は、単にエンゲージメントの状態を測るのではなく、動的に改善するために独自の定義を掲げています。本来、組織をよくするはずの、合理化や変革イニシアチブがいかにして従業員の喪失感を生み出しているか、また、変化のためのすりあわせができていない従業員を「やる気が無い」とレッテルを貼ることでいかに的を外し、非生産的であることが多いかと、現代の経営層やコンサルタントが起こしがちな過ちについて問題提起をしています。

 実際の組織でのリサーチ結果を示しながら、従業員の「エネルギー発揮度合い」という指標が過剰に向かう「消耗」「燃え尽き」でもなく、あるいは過小に向かう「保留」「錆びつき」でもなく、いかにエネルギーが効果的なレベルで循環する「高いエンゲージメント」の状態を目指せるかが焦点の一つです。そのためには、反発や受け身ではなく、主体的にエネルギーを使おうとする選択が必要になります。

学習する組織の5つのディシプリンとも重なる社員たちが組織に求めること

その上で、この本の骨格となる内容は従業員たちへのリサーチの結果から得られた知見です。すなわち、変化の時期において、組織の従業員たちがリーダーたちに何を求めるのか尋ねました。広範なリサーチ結果を集約して、以下の6つのポイントが本書の主要な中味となります

  • リーダーが創り出す変化に関する範を示し、有言実行すること(第2章)
  • 未来に可能性があると感じられること(第3章)
  • 一人ひとりの従業員への期待が明確であり、当事者として責任を担えること(第4章)
  • 従業員が相互のつながりを実感し、協働的なチームの一員と感じること(第5章)
  • 情報を知らされるとともに関与でき、組織に一体感を感じること(第6章)
  • 支援、報酬、育成などリーダーが従業員を気にかける行為を通じて、自身の存在価値と居場所を実感できること(第7章)

 そして、第8章では、リーダー成熟の大事なステップが、1)自身の基盤を築くこと、2)人をリードすること、3)組織をリードすること、そしてもっとも高いレベルの実践として、4)高いエンゲージメントのカルチャーを築くことであると提示した上で、具体的なカルチャー醸成のためにリーダーが実践できる取り組みをまとめています。

なお、社員たちがエンゲージメントのために組織に求めることは、学習する組織の5つのディシプリンとも重なります。第3章の「未来の可能性」は、共有ディシプリンの中核であり、"未来のありたい姿"と"今の現実"の間に働かせる"創造的緊張"について、「現実的な楽観主義」という概念で、ストーリーテリングの実践が紹介されます。第5、6章の「つながり」と「一体感」では、組織をさまざまなサブシステムの集合体としてのシステムとして捉え、サブシステム間や個々人がシステムの中でどのようなメンタルモデルやチーム学習の実践が求められるかについて、いくつものモデルが提示されています。第4章、第7章の「当事者責任」「存在価値」では、従業員一人ひとりの自己マスタリーをいかにして育んでいくかが具体的に記載されています。第7章で紹介される「自然報酬」という考え方は、会社の経営層や人事を動かさなくとも、チームをリードする人には誰でも実践できる自己マスタリーの推進策としてお勧めです。

そして、本書を通じて繰り返し強調されるのは、働きがいとエネルギーにあふれる会社を築くには、"リーダー"の意識や行動がいかに重要であるかです。私が実践している「学習する組織」の自己マスタリーや共有ビジョン、「行動探求」におけるインテグリティや相互性に関わる概念や手法がふんだんにちりばめられています。「U理論」やリーダーシップ理論の最先端とも言える「あり方(being)のリーダーシップ」や「インサイド・アウト」によるリーダーシップの源泉についても独自のモデルで紹介されています。

"リーダー"とは誰のことを指すのか?

ところで、"リーダー"とは誰のことを指すのか? それは読者の方に探求いただきたい問いですが、私は以下のようなことを考えています。経営に携わる者なら、本書の内容は実践して当然のことも言えます。一方でさまざまな調査で長年エンゲージメントが重要課題として認識されながら、全体として言えば、は組織のエンゲージメントのスコアは改善していません。この目を背け難い事実は、経営の実践について大いに改善の余地あることを示し、現場従業員の主体性、やる気の問題に頭を悩ませる経営層は自便自身の責任を自覚していただく必要もあるでしょう。しかし、私は、"リーダー"とは単に経営層だけを指すものではないと考えています。むしろ、日本の文脈で組織の変革をリードするのは、ミドル層や、さらにはもっと若く志の火を心に灯している人たちではないかと私は思っています。そして、組織の複数の階層で、リーダーシップの生態系を効果的に紡いでいくことなしに、生命システムである組織の変容は実現できるものではないと考えます。私も外部支援の立場にありながら、社内で奮闘する人たちの苦労、辛酸の思いのお裾分けをいただいてきました。いかに組織の点と点を結び、そして面的に展開するかが実践の要だろうと実感しています。

もし25年以上前に組織変革の矢面に立っていた自分が本書を手に取ったら、ビジネススクールでもここまでは教えてくれなかった現場リサーチの成果、あるいは実践のためのモデルや方法論を知ることで、いくつもの苦労をもっと効果的に乗り越えられると思ったことでしょう。しかし、今の自分は単に個人の学びを越えて、組織のより多くの人たちと一緒に共通言語として学び、さらにそれぞれの組織の環境や文脈に適合させた独自モデルまで発展させたなら、さらに早く、遠くまで行けることだろうと考えます。

現代的な文脈における日本の組織の状況は、マネジメントよりもリーダーシップにより大きな比重を置く必要があると考えています。とりわけ、「コロナ禍」という大きな衝撃を体験し、「Bring Back Better(よりよい復興)」を手がけ、さらには、長期にSDGsや新しい資本主義モデルが目指す社会システムそのものの変容を導くリーダーシップが求められます。本書が実務的な智慧や実践について考え、発展させるきっかけになるようならうれしく思います。

執筆:小田理一郎

5月21日発刊

『成長企業が失速するとき、社員に何が起こっているのか?――職場に「働きがい」と』「エネルギー」を取り戻す方法』(日経BP社


『成長企業が失速するとき、社員に"何"が起こっているのか――職場に「働きがい」と「エネルギー」を取り戻す方法 目次

はじめに

第1章 〝プラグ抜け状態〟――「組織で働く人」がエネルギーを失ってしまうのはなぜか

  • 一人ひとりの「仕事にかけるエネルギー」を高める方法 
  • エンゲージメントとは何か? 
  • エンゲージメント低下――組織が〝プラグ抜け状態〟になる原因は? 
  • エンゲージメント低下企業の事例から学ぶべき教訓とは? 
  • 「仕事の満足度」と「エンゲージメント」 
  • リーダーシップの役割 
  • エネルギーを取り戻す――組織のエンゲージメントを回復させる方法 
  • 本章のまとめ  

第2章 リーダーシップが果たすべき「真の役割」とは?

  • 「職場のエネルギーがリーダーによって決まる」理由 
  • 「ついていきたくなるリーダー」とはどんな存在か?
  • これが、リーダーシップの真の役割だ 
  • 開拓者としてのリーダー・執事としてのリーダー 
  • リーダーシップにおける「勇気」の意味
  • あなたは部下と「相互に影響を与え合っている」と言えますか? 
  • 本章のまとめ 

第3章 最高レベルの「未来の可能性」を生み出す方法

  • 「未来の可能性」がなぜ、重要なのか? 
  • 問題を正しく共有するための「現実的な楽観主義」とは 
  • 未来志向をつくる「現実的な楽観主義」を実現するための4つのポイント 
  • 現実的な楽観主義と戦略開発 
  • 実的な楽観主義のカギを握る「コミュニケーション」のとり方 
  • 「組織のストーリー」の語り方――めざすべき「タイプ3」とは? 
  • 組織化の原則を確立する 
  • 本章のまとめ 

第4章 ベストを尽くす文化をはぐくむ「当事者責任」とは?

  • 働く人一人ひとりに「当事者」としての責任意識をはぐくむ 
  • 従業員はみな、心の奥底で「自分に何を求めているかをはっきりさせてほしい」と願っている 
  • 活力につながる「当事者責任」とは何か? 
  • 当事者責任モデル 
  • 「ベストを求める」――すると従業員はどう変わるのか? 
  • 本章のまとめ 

第5章 「つながり」の強い企業が最後に勝つ理由

  • 「つながりを保つ」というシンプルなことに、なぜ多くの組織は失敗するのか? 
  • 組織の「分断」 
  • あなたの組織につながりを築く方法
  • 職務による分断を乗り越える
  • 協働を大切にするマインドセットを養う
  • 相互影響と協働を「当たり前」にするために
  • 「チーム」をうまく活用する
  • 価値観と信条 
  • 本章のまとめ 

第6章 潜在能力のさらなる発揮に繋がる「一体感」の高め方

  • 人はみな、「関わっていたい」と感じている 
  • あなたの組織が「ひっそりと」してしまう、意外な原因 
  • 一体感を感じられるカルチャー――事例と実践方法 
  • オープンドアに招き入れる 
  • 本章のまとめ 

第7章 「存在価値」―― 組織内に、その人が輝く居場所をつくる

  • 一人ひとりが「存在意義」を感じるために
  • 「存在価値を認める」とは?
  • 従業員が「会社を辞めよう」と思わないときの心境
  • 存在価値を認めるための「関心」はどうやって示したらよいのか?
  • 心からの喜びを生む「自然報酬」の使い方
  • 学びと成長――従業員が辞めない会社の秘訣 
  • 速効で「居場所」をつくるための、今すぐ使える22の問いかけ
  • 本章のまとめ

第8章 企業に「エンゲージメント」のカルチャーを築く

  • 組織のカルチャーを変えるには?
  • エンゲージメントは「カルチャーに重きを置くリーダーシップ」から生まれる
  • あなたの職場のカルチャーを創る
  • アクションプラン1:「未来の可能性」を高める
  • アクションプラン2:「当事者責任」を高める 
  • アクションプラン3:「つながり」を高める 
  • アクションプラン4:「一体感」を高める 
  • アクションプラン5:「存在価値」を高める

エピローグ――これまでを振り返って 

謝辞

参考文献 

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