News & Columns

ニュース&コラム

レバレッジの効いたリーダーシップ(1)4つのレバレッジ領域

2021年12月23日

この記事は、『社会変革のためのシステム思考実践ガイド』著者であるディヴィッド・ストロー氏のブログを翻訳して紹介しています。


私たちが直面する複雑な問題は、私たちの対応能力を上回るスピードで拡大しています。そのため、私たちは容易に過負荷を感じ、進むべき道が分からなくなります。このようなストレスは、疲弊するだけでなく、同じように疲弊している人たちとの間に非生産的な対立を生み出します。

過負荷と混乱に対する典型的な反応の1つは、もっと多くの努力をすることがより良い結果につながると思い込んでしまうことです。また、より早く次の仕事にとりかかるために、もっと速く仕事をすることもあります。しかし、どちらも効果や効率は上がりません。より多くの努力をして効果が上がるのはある時点までで、その先ではミスが増え、生産性はさらに低下します。また、より速く仕事をすることは、質の低い結果を招き、手戻りの仕事に多くの時間を費やすことになる傾向があります。さらに、速く仕事をしなければならないというプレッシャーから、時間を節約するために一人で仕事をするようになります。しかし、一人での作業は、不完全で互換性のない解決策を生み出し、それによって生じた問題を解決するために他の人と一緒に作業する時間をさらに必要とします。

それに対し、システム思考は、レバレッジの観点から考えることを奨励します。時間展開を考慮して最も持続的で大きな影響を与える、いくつかの重要な協調的変化を探求します。レバレッジポイントは強力ですが、しかし明白でないことが多いのです。

この4部構成のブログ記事の目的は、3つのシステムレベルからレバレッジを見出すことを支援することです。リーダーとしてのあなた自身、あなたの組織、そしてあなたが影響を与えようとしているより大きなシステムの中に、レバレッジを見出すことを目指します。これらのレベルは相互に関連しています。まず、自分自身から始める必要があります。なぜなら、このレベルは自分が最もコントロールしやすいからです。自分自身の意図、思考、行動を観察し、疑問を持つことから始まります。自分自身にレバレッジをかけることで、より効果的な組織のリーダーになることができます。そして、より効果的な組織は、自分たちが影響を与えようとしている大きなシステムの中にあるレバーを、よりうまく活用することができるようになるのです。

この最初の記事では、3つのシステムレベルすべてに現れる4つのレバレッジ領域を紹介します。次の3つの記事では、自分自身、組織、そしてより大きなシステムにおいて、それぞれレバレッジを見つけることに焦点を当てます。

4つのレバレッジ領域

意義のある方向性を示すことで活力を与える

私たちは、ますます混沌とし、急速に変化する世界に生きています。このような世界は、「VUCA」と呼ばれ、その特徴として、脆弱、不確実、複雑、曖昧です。VUCAの世界は、私たちをクリエイティブ(創造的)ではなく、常にリアクティブ(反応的)にさせる傾向があります。このような状況下で、私たちは、海の中でただ頭を水面上に保とうとするばかりで、目指すべき岸辺を見失いがちです。そこで、私たちが最も大切にしていることを常に思い起こすことが重要です。それは、時代を超えた価値観であったり、刺激的な目的意識・使命感であったり、望ましい姿の明確なビジョンであったり、あるいは、想定外の事態に備えるべきものであったりします。最も大切なものに触れることで、困難な状況に陥ったときでも、前進するための活力と決意を得ることができるのです。

どんなに困難な現実も受け入れる

私たちは、好むと好まざるとにかかわらず、今いる場所にいるのです。現在地を知ることで、私たちが目指す場所に到達する上で向き合うプラスとマイナスの両方の力が確立されます。現状を知るために重要なことは、1)物事に対する考え方(メンタルモデル、信念、想定事項)、2)私たちの行動によって引き起こされる意図した結果及び意図しない結果、3)私たちが経験する問題と私たちが信じる解決策に対して責任を持とうとする意志、です。

私たちの思考は、私たちが見る現実を形成し、それゆえ私たちが取ろうとする行動を形成する強力なレバーです。私たちの行動が意図しない結果を招く可能性があることを理解することは、限られた資源をより有効に活用するのに役立ちます。私たちが経験する現実に、意図しないことであったにせよどのような影響を及ぼしているかを認識することで、より大きなコントロールを発揮することができるようになります。私たちは、まず自分自身の意図、思考、行動によって引き起こされる問題に焦点を当てることを学びます。

長期的に考え、短期的に行動する

有意義な方向に進むためには、長期的な目標を立て、そこに到達するためにあらかじめ戦略を立てるなど、長期的な思考が必要です。同時に、長期的な成果に向けて勢いをつけるために、短期的な成功体験を示す必要があります。その際、短期的な真の成功と、手っ取り早い安易な解決策を見分けることが重要です。

手っ取り早い解決策は、明白であり、即座に結果が出るので魅力的です。しかし、手っ取り早い解決策は、問題の症状に対処している一方で、必要な注意と資源を根本的かつ持続的な解決策から遠ざける長期的な負の結果を生み出し、問題をかえって悪化させることが多いのです。

それとは対照的に、真の短期的な成功は、長期的に重要で持続可能な改善をもたらすものですが、長期的な成果を得るための強固な基盤を構築するために、新しい関係、洞察、能力、仕事の慣行などに先行投資しなければならないため、あまり好まれない場合が多くあります。

継続的に学習する

私たちは、手っ取り早い解決策や行動への偏重から、省察の重要性を軽視しています。しかし、VUCAの世界では、短期的な行動を実験として扱い、新しい情報を採り入れ、今何が求められているのかを学ぶことが必要なのです。

省察は行動と同じくらい重要なのです。振り返り、新たな視点を得るためには、まず、強く前のめりになるのではなく、一歩引いてみることが必要です。一歩下がるということは、休息と再生のための十分な時間を与えることであり、「ただ何かをするのではなく、そこに立ち止まる」ことです。そうして初めて、私たちは明晰な思考力、刹那的な利益と真の進歩を見分ける知恵、そして必要に応じて軌道修正する強さを取り戻すことができるのです。

まとめ

レバレッジを活かすリーダーは、意義のある方向性を示すことで活力を与え、どんなに困難な現実も受け入れ、長期的に考えながら短期的に行動し、実験や状況の変化から継続的に学びます。次の3つの記事では、自分自身、組織、そして改善したい大きなシステムにおいて、どのようにレバレッジを見つけるかについて、より具体的に見ていきます。

関連する記事

Mail Magazine

チェンジ・エージェント メールマガジン
システム思考や学習する組織の基本的な考え方、ツール、事例などについて紹介しています。(不定期配信)

Seminars

現在募集中のセミナー
募集中
現在募集中のセミナー
開催セミナー 一覧 セミナーカレンダー