イベント&セミナー
システム変容の可能性
アダム・カヘンは、南アフリカの民主化プロセスからコロンビアの和平交渉、生産者から消費者にいたる食料システムの改革、気候変動対策の国際協働に至るまで、30年以上にわたり世界50カ国で分断された当事者たちが未来を共に創る協働の場とプロセスを支援してきました。彼と一緒に働いた多くの関係者たちは、互いの違いを越えて粘り強く協働し、前進を積み重ねながら、システム変容を実現していきました。「システム変容」とは、問題が起きてから対処するのでは無く、問題の発生する根本原因を除去すべく、そのシステムの根底にある構造や価値観そのものを変えていくプロセスです。
アダム・カヘンはその功績から、カナダ勲章を受章し、シュワブ財団の「ソーシャル・イノベーション・ソートリーダー・オブ・ザ・イヤー」にも選ばれた伝説的なファシリテーターです。これまで、日本でもいかに多様な人たちが対話の場を開催し、ファシリテーションを行う技術やプロフェッショナルのあり方に大きな影響を与えてきました。今回の特別セミナーでは、対話ファシリテーションの場にとどまらず、変容したいシステムの内側にいるプレイヤーたちが組織内外の人たちと協力してどのように日々の実践をデザインするかに焦点を当てています。学習する組織のディシプリンに置き換えるならば、これまでシステム思考や共有ビジョンを導くチーム学習から、それらすべて支える自己マスタリーを掘り下げます。
根源からの関わり
もとより、身近な家族、組織や事業の課題であれ、社会や経済の課題であれ、今のパフォーマンスを出すべく設計されているシステムそのものの変容は容易なことではありません。そのカギとなるのが、アダムの主張する「根源からの関わり」です。システムの根本から変容には、その営みに関わる私たちが根源に立ち返り、また、他者との関係性においてもより深いレベルでつながることで、生成的な関係性と変容を築くことが要諦にあります。アダム・カヘンの最新著書『Everyday Habits for Transforming Systems』(日本語版2025年10月刊行予定、小田理一郎翻訳)では、以下の7つの日々の習慣を紹介しています。
- 〈責任を引き受ける〉(期待されたことだけ、好きなことだけするのではなく)
- 〈三つの次元で関わる〉(「システム内の主体」「個々の当事者」「同胞」のうち三つの次元の一部だけではなく)
- 〈見えないことに目を向ける〉(いつも見ていることを見るだけではなく)
- 〈裂け目に働きかける〉(無視したり敬遠するのではなく)
- 〈進むべき道を模索する〉(慣れ親しんだことや安全なことだけをするのではなく)
- 〈異なる他者と協働する〉(自分たちに似ている人や好きな人たちだけではなく)
- 〈忍耐と休息〉(短期間だけ突っ走るのでも、燃え尽きて倒れるのでもなく)
特別セミナーの構成
今回の特別招聘セミナーでは、三部構成にて「根源からの関わり」を学びます。第一部講演編では「根源からの関わり」の日々の習慣について全体像とそれぞれについて解説します。第二部ワークショップ編では、「根源からの関わり」の日々の習慣を参加者の関わるシステムの文脈及びリーダーシップ課題に紐付けて、どのように能力を高め、日々の実践に落とし込むかを探求します。第三部では、これまでの実践者たちがもっとも困難に感じる6番目の習慣「異なる他者と協働する」に焦点をあてたワークショップを行います。アダムの著書『敵とのコラボレーション』を進化させた改訂版の主要ポイントを紹介しながら、3つのストレッチ演習を通じて、私たちが違いを越えて他者と協働する意志と能力の向上を図ります。)詳しくは下記プログラムをご覧ください。
折しも、今ほど日本社会でシステム変容が求められているときはないでしょう。ビジネスにおけるイノベーションやトランスフォーメーション(DX、GX、SX)にせよ、社会課題に取り組む上でのソーシャルイノベーションにせよ、個別の組織やプロジェクトの取り組みによってある成果はあっても、要素の技術や改善には限界があり、組み合わせやシナジー、抜本的、連鎖的な変化までには及んでいません。「根源からの関わり」の日々の習慣は、システム内のプレイヤーたちが主体的に、つながりあい、大義に向けて前進していくための基本習慣、そしてそれらを根源的にするための自己認識やあり方を指南してくれるものです。
数々のシステム変容を支援した伝説級のファシリテーターから直接学び、そのあり方を目の当たりにできる機会です。さらには、日本でシステム変容を進めたいと願う人たちとセクター横断で交流し、互いの違いを越えて共に学べる機会であります。ご一緒に、日本のさまざまな現場、システムにおける変容の触媒となるような、私たちのあり方、関わり方、行動様式を共に磨きませんか? 皆様のご参集をお待ちします。
プログラム
2025年10月3日(金)19:00-20:45 @浅草橋会場
第一部 講演編「根源からの関わり~システム変容のための日々の習慣」
2025年4月発刊アダム・カヘン著『Everyday Habits for Transforming Systems』(日本語版2025年10月刊行予定、小田理一郎翻訳)で提唱する「根源からの関わり」について、アダム・カヘン氏による講演、その後会場において質疑応答を行います。
2025年10月4日(土)9:30-17:30 @田町会場
第二部 ワークショップ編「根源からの関わりの日々の習慣」(会場参加のみ)
第一部で提示された「根源からの関わり」の日々の習慣について、インタラクティブなワークショップ形式にて日々の実践にどのように落とし込むかを探求し、参加者の事例に則して学びを掘り下げます。
- 導入/チェックイン
- 「根源からの関わり」の日々の習慣に関する洞察、問い、議論
- 「根源からの関わり」の日々の習慣の体験とチャレンジ
- 「根源からの関わり」の日々の習慣の強みとエッジの探求
- ケースクリニック
- 「根源からの関わり」の日々の習慣まとめと次のステップ
- チェックアウト
2025年10月5日(日)9:30-17:30 @田町会場
第三部 ワークショップ編「異なる他者と協働する」
「根源からの関わり」の日々の習慣の中でも、もっとも多くの実践者たちが難しいと感じている「異なる他者と協働する」について、大幅な改訂予定の『Collaborating with the Enemy』(原書本年秋発刊、日本語訳来年発刊予定)の主要ポイントをもとに、インタラクティブなワークショップ形式にて具体的な実践方法を学び、参加者事例に適用します。
- 導入/チェックイン
- 『敵とのコラボレーション改訂版』の主要ポイント講義及び質疑
- 3つのストレッチ演習(1)「他者とどのように協働するか」
- 3つのストレッチ演習(2)「協働をどのように進めるか」
- 3つのストレッチ演習(3)「私たち自身がどのように貢献するか」
- ケースクリニック
- 「異なる他者と協働する」まとめと次のステップ
- チェックアウト
※第二部、第三部の体験型ワークショップの参加の条件として、前日の第一部講演にご参加下さい。講演で紹介される内容を理解している前提でワークショップは開催されます。第一部は、オンラインでの参加も可能ですので、集合で1日目夜のご参集が難しい方も、オンラインで必ず参加いただけるよう、お願い申し上げます。
対象
- システム変容・システムチェンジの実現を志す方
- 部署・組織・セクターを超えて多様な他者たちと働く必要がある方
- 企業、官公庁、NPO・財団などにおける現場リーダー
- 組織開発、コミュニティ開発、能力開発などに取り組む部門の実務者、ファシリテーター、コンサルタントなど
- その他、変化の担い手を志す方、システムリーダーシップを磨きたい方
講師・ファシリテーター
アダム・カヘン(Adam Kahane)
レオス・パートナーズ、ディレクター
人々が最も重要かつ困難な問題に対して共に前に進むことを支援する国際的な社会的企業であるレオス・パートナーのディレクター。レオスは、互いに理解、同意、信頼がない関係者の間でも、最も困難な課題に対して前進できるようなプロセスを設計し、ファシリテーションを行う。
アダムは、企業、政府、市民社会のリーダーが協力してこのような課題に取り組むためのプロセスの組織化、設計、推進を行う第一人者である。これまでに50カ国以上、世界各地で、経営者や政治家、将軍やゲリラ、公務員や労働組合員、地域活動家や国連職員、聖職者や芸術家などと協働してきた。
1990年代にロイヤル・ダッチ・シェル社においてグローバルな社会、政治、経済、技術のシナリオを作成するシナリオ・プラニングのチーム責任者として活躍。1991年~1992年にアパルトヘイトによって分断されていた多様な人々が集い、民主化への移行を実現するために南アフリカで実施された「モンフルール・シナリオ・プロジェクト」のファシリテーターを務める。
この経験を基に、「変容型ファシリテーション」「変容型シナリオ・プランニング」「ソーシャル・ラボ」「ストレッチ・コラボレーション」などの方法論を開発し、アメリカ、ヨーロッパ、中東、アフリカ、オーストラリアなどでセクター横断的な対話と行動のプロセスの支援を実践している。最新刊では、システム変容がどのように起きるかについて、ファシリテーションにとどまらずリーダーシップの視点から「根源からの関わり」の日々の習慣7つを見出し、提唱している。
アダムはカナダ勲章を受章。2022年、ダボスの世界経済フォーラムで、シュワブ財団の「ソーシャル・イノベーション・ソートリーダー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた。
【著書】
- 『Everyday Habits for Transforming Systems』
- 『共に変容するファシリテーション』(原題:『Facilitating Breakthroughs: How to Remove Obstacles, Bridge Differences, and Move Forward Together』)
- 『敵とのコラボレーション――賛同できない人、好きではない人、信頼できない人と協働する方法』(原題:『Collaborating with the Enemy: How to Work with People You Don't Agree with or Like or Trust』)
- 『社会変革のシナリオ・プランニング ‐対立を乗り越え、ともに難題を解決する』(原題:『Transformative Scenario Planning: Working Together to Change the Future』)
- 『未来を変えるためにほんとうに必要なこと ‐最善の道を見出す技術』 (原題:『Power and Love: A Theory and Practice of Social Change』)
- 『手ごわい問題は、対話で解決する』(原題:『Solving Tough Problems: An Open Way of Talking, Listening, and Creating New Realities』)
小田 理一郎(Riichiro Oda)
有限会社チェンジ・エージェント 代表取締役
大学院大学至善館 特任教授
米国オレゴン大学経営大学院経営学修士(MBA)修了。人や組織が自律的に目的を達成する効果的な仕組みをつくるための組織変革のスキルを2年間の米国留学で学び、多国籍企業で10年間、製品責任者・経営企画室長として、営業、生産、サプライ・チェーン、開発などさまざまな分野で業務・組織変革の実践に取り組む。2002年、企業の社会的使命の追求と非営利組織マネジメントの強化のためのコンサルティング提供のため独立、その後米国で法人化。2005年には、日本で有限会社チェンジ・エージェントを設立。人材育成、組織開発、チェンジ・マネジメントのための研修、コンサルティング、ファシリテーション、講演、執筆に従事している。2008年よりピーター・センゲ氏設立のSoL(組織学習協会)の日本コミュニティを設立し、日本での組織学習実践家たちのコミュニティを運営し、2012年よりグローバル組織での理事を務める。至善館MBAプログラムでシステム思考、東京科学大社会人向けMOTプログラムで組織論を教える。
【主な著書、訳書、解説書】
- 小田理一郎著『「学習する組織」入門』
- 小田理一郎著『マンガでやさしくわかる学習する組織』
- 枝廣淳子・小田理一郎著『なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか』
- アダム・カヘン著『共に変容するファシリテーション』
- アダム・カヘン著『敵とのコラボレーション――賛同できない人、好きではない人、信頼できない人と協働する方法』
- アダム・カヘン著『社会変革のシナリオ・プランニング――対立を乗り越え、ともに難題を解決する』
- アダム・カヘン著『それでも、対話を始めよう』
- ピーター・センゲ著『学習する組織――システム思考で未来を創造する』
- ドネラ・メドウズ著『世界はシステムで動く――いま起きていることの本質をつかむ考え方』
- デイヴィッド・ストロー著『社会変革のためのシステム思考実践ガイド』
他多数
開催概要
日程・会場
2025年10月3日(金)19:00-20:45 @浅草橋会場
第一部 講演編「根源からの関わり~システム変容のための日々の習慣」
2025年10月4日(土)9:30-17:30 @田町会場
第二部 ワークショップ編「根源からの関わりの日々の習慣」
2025年10月5日(日)9:30-17:30 @田町会場
第三部 ワークショップ編「異なる他者と協働する」
※講演とワークショップでは会場が異なることにご注意ください。
定員
公募48名(申込先着順)
- 一般公募枠 40名
- NPO公募枠 8名
※ご入金後の受講票の発行をもって本申込とさせていただきます。
参加費
一般公募枠 |
297,000円(税別270,000円) |
NPO枠(フルタイム役員・職員の方) |
198,000円(税別180,000円) |
※恐れ入りますが振り込み手数料はご負担ください。
※NPO枠でご参加をご希望の方は弊社基準に基づき審査をいたしますので、 お申込み時に該当欄にチェックをお願いいたします。審査に必要事項をご案内します。
キャンセルポリシー
開催日を含む15日前まで:返金手数料を除いた全額返金
開催日を含む14日前から8日前まで:参加費の50%申し受けます
開催日を含む7日前から当日:参加費の全額申し受けます
※15日前:9月18日17:00、8日前:9月25日17:00とさせていただきます。
その他
- 必ず全日程の全時間参加いただくことが条件です。
- 招聘講師は英語で話しますが、日本語への同時通訳(講演)または逐次通訳(ワークショップ)がつきます。
- 参加者による撮影、録音はお控えください。(10月3日の講演は、オンライン配信・録画配信を検討しています。)
主催・協力
主催: 有限会社チェンジ・エージェント
協力: レオス・パートナーズ(Reos Partners)
お申込み
以下のフォームに必要事項をご記入の上、お申込みください。
ご入金確認を持ちまして正式な受付となります。その後、受講票と詳しいご案内を電子メールでお送りいたします。(※フォームからの送信ができない場合は、大変お手数ですが事務局 seminar@change-agent.jp まで以下の申し込み票の項目をご記入いただき電子メールでお送りください。)
※受付確認後、振り込み口座をお知らせいたします。入金確認(受講票メール送付)を持ちまして正式な受付となります。
※領収書が必要な場合は備考欄にお書き添えの上、ご相談ください。
※お申し込み後、一週間たちましても返信が届かない場合は、インターネットの送受信にトラブルがあることも考えられます。特に、Gmail転送サービスなどをご利用の場合、Gmailの仕様変更により、メールが不達となる事象が複数発生しました。上記遅延がございましたら、ご一報いただけますようお願い申し上げます。
お問い合わせ
有限会社チェンジ・エージェント 担当:板橋、岩下、小田
東京都台東区浅草橋1丁目19-10 PF浅草橋ビル5F
TEL: 03-5846-9660 FAX: 03-5846-9665
EMAIL:seminar[@]change-agent.jp
※メール送付の際は[@]を@に変換ください
公開日:2025.7.3