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システム思考入門(10) 「システム思考と非システム思考の違い(2)」

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(image photo by FutUndBeidl on flicker)


前回は、システム思考と非システム思考の違いの7つのポイントのうち、

1.木ではなく森を見る
2.静的ではなく、動的である
3.一方通行の因果関係ではなく、循環(フィードバック・ループ)を重視する

の3つについて説明しました。今回は、残りの4つのポイントについてです。

4.システムの外部からの影響ではなく、内部で起こることに焦点をあてる

マーケティングではしばしば5C分析という状況分析を行います。企業と企業を取り巻く状況について、英語にしたときにCの頭文字で始まる5つの要素(顧客、競合、環境、コスト、キャパシティ)に分けて分析するのです。この5つのCのうち、顧客、競合と環境については、外部分析とも言います。「外部」という言葉からわかるように、これらの要素は、企業というシステムの「外部」の要因として位置づけられているのです。

しかし、せっかく要素としてあげているのに、顧客や競合をシステムの「外部」に置いてしまうと、マーケティングの本来の機能を発揮することが難しくなります。マーケティングとは、顧客や競合などの外部要因への働きかけにほかならないからです。その働きかけを行った後には、よくも悪くも状況が変化し、先に状況分析はもはや有効ではなくなります。時間の経過とともに、外部要因のスナップショットも何回も撮り直していかなくてはいけません。

システム思考では、システムの境界をより広く取ります。つまり、企業の内か外かではなく、企業の取りうる行動の影響の範囲の内か外かで、システムの境界を引くのです。これによって、自社の行動が影響を与える顧客や競合への変化も織り込んだフレームワークで考えることができるようになります。

このフレームワークは、普通の論理的なマーケティング分析とどこが違うのでしょうか?

私たちは、「売上げが伸びない!」などの問題に直面したとき、その問題を特定の人や要因が原因であると考えがちです。売上げの低下を、顧客の嗜好の変化や景気の影響と片付けるのはたやすいことです。しかし、自分には影響を及ぼせない外部要因と片付けてしまったら、変化の可能性は大きく狭められてしまいます。

たしかに、何かしらの不可抗力な要因が原因である場合もありますが、もし、同じ問題が繰り返し起こったり、悪化し続けたりするパターンがある場合には、特定の人や要因というよりも、自社も含めたシステムの問題であると考えることができます。実際、これまでの研究によれば、多くの場合、自社の品質の低下や納期の遅れが顧客離れを起こしていることがわかります。同様に、競合の価格戦略も、自社の価格戦略への対抗策であることが多いのです。

このように、状況をより大きなシステムとして見た場合、一見外部にあるように見える「原因」も、実は自社の行動の「結果」として捉えなおすことができます。システム思考では、問題が起きている原因は、自らの思考や行動とつながっているシステムの構造にあると捉えます。翻せば、自社の行動を変えることによって、顧客や競合を含むシステムをより望ましい方向に変化させることもできるのです。システム思考によって、変化に翻弄されるのでなく、変化の手綱を握ることができます。

5.要素の羅列ではなく、実際に起こるプロセスに注目する

ものごとやその原因を考えるとき、私たちはしばしば数多くの要因を考えます。

たとえば、「生産」という行為を考えると、そこには「原材料」、「従業員」、「生産設備」、「スケジュール」、「情報」、「生産性」、「従業員のやる気」、「リーダーシップ」、「マネジメントの質」などのさまざまな要因が影響しています。QCサークルなどで用いられるフィッシュボーンなどの手法は、影響を与えるさまざまな要因を整理するのに役立ちます。

システム思考では、要素を羅列するだけでなく、さらに突っ込んで考えます。その大きな違いは、実際にものごとが起こる本質的なプロセスに基づいて因果関係を整理することにあります。ここで基本となるプロセスは、ある「状態」が「行動」を引き起こし、そして「行動」が「状態」を変化させることです。

たとえば、マネジメントの質が高ければ、従業員の優れたリーダーシップが発揮されます。リーダーシップの結果、従業員のやる気が高まります。やる気が高いと、従業員の生産性は高まり、生産量を引き上げます。

では、生産量が下がったとき、マネジメントは何を考え、どのような行動をとるでしょうか? あるいは従業員は何を感じて、どのような行動をとるでしょうか? その結果、変化する状態は何でしょうか? これらのプロセスに着目して、因果関係を整理することで、システムの全体像が浮かび上がっていきます。

6.「測れる」ものではなく、「大事な」ものに注目する

品質管理の基本は、形状や機能、適合性などを計測し、統計的に分析することにあります。日本の優れた品質管理に多大な貢献をしたエドワード・デミングは、かつて「測らなければ管理することはできない」と言いました。こうして、ものごとを計測する統計的管理手法とトータル・クオリティ・マネジメント(TQM)は日本の生産現場ではなくてはならないものとなりました。

数値を計測することは、品質管理技術者のみならず、経営者や政策決定者の最大の関心事といえるでしょう。売上、利益、株価、EVA、GDPなど、特にお金の絡む数字は「最重要項目」のように扱われます。私たちの時間とエネルギーのほとんどが、これらの数値に注がれているといっても過言ではないでしょう。

しかし、エドワード・デミングは晩年、「経営で大事なことのうち、実際に測ることができるのは、わずか3%しかない」といって、TQMといいながら、短期的な視野で数値計測に傾倒し、測りづらい無形のものの価値を過小評価する経営スタイルの横行を嘆きました。彼の主張するTQMとは、本来システム思考に根ざすものだったのです。

システム思考は、測れるかどうかは問題としません。システムの中で変化する「大事な」ものに注目するのが大きな特徴です。正確な数値化はできなくても、従業員のやる気が上がっているか、下がっているかは認識できるでしょう(その認識は従業員によって異なるものではあっても)。また、顧客や社会の会社に対する信頼も同様です。

ビジネスにおいて、財務上の数字は、表面に現れる結果に過ぎません。財務上のボトムラインに本質的に影響を与えるのは、人や情報、ステークホルダー(利害関係者)の関係性、マネジメントの仕組みなど、目に見えない、お金では測れないものばかりです。

7.何かを証明するのではなく、目標の達成に役立つことを重視する

自然科学は真実を求め、仮説を作ってはそれを証明しようとします。また、ビジネスでも、研究開発、エンジニアリングやマネジメント・サイエンス(経営工学)などの分野で、同じように仮説を作ってはその証明をすることに重きが置かれてきました。

たしかに、科学の発展において、これは極めて重要な思考習慣でした。しかし一方で、この考え方を組織や社会といった複雑で生きたシステムにあてはめるのには難しい点がいくつもあります。ひとつ挙げるとしたら、「証明しうるひとつの真実は存在していないことが多い」からといえるでしょう。

システム思考は、対象とする大事なことの状態と、それに関与するさまざまな関係者の思考や行動をモデル化します。しかし、すべての状況にあてはまる普遍的なモデルを作ろうとか、モデルが正しいことを証明しようとは考えません。モデルの価値は、正しさではなく、役に立つかどうかで決まるからです。

そもそもモデルというものは、現実とは常に異なります。どれほど優れた精緻なモデルであっても、それは現実を単純化したものでしかありません。逆に、単純化するからこそ役に立つのです。

地図がそのよい例です。登山をするために、山の地形を正確にかたちどった模型を作っても、持って運ぶことができなければ山の中では役立ちません。平面化され、さまざまな情報が省略されていても、小さく折りたためる地図のほうが山の中では大いに役立ちます。

システム思考のモデルは、単純化した形ではありますが、普段は意識しない、そして目に見えない思考とその結果を見える形として表していきます。その因果関係を追うことで、目の前のことだけではなく、時間や距離を経た、さまざまな人の思考や行動が見えるようになります。そして、そうやって全体像を目にしたときに、大きな気づきと、内的な変化が起こるのです。

そして、モデルとは、私たちの思考が創り出す構造にほかなりません。もし、現在存在している構造が望ましくない状態を作り出すのであれば、その構造を変えればよいのです。この気づきこそが、大きな学習と、変化を生み出す原動力になります。モデルとしての正確さが欠けていたとしても、より望ましい未来のビジョンや、それを実現するための戦略や行動を考えることができれば、そのモデルは十分役割を果たしたといえるでしょう。

システム思考の目的はまさにそこにあります。過去や現在の「真実」を検証するのではなく、未来の選択肢を探り、より望ましい未来を創り出していく力を与えてくれることにこそ、システム思考の価値があるのです。

(>システム思考と非システム思考の違い(1)」)



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