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デイビッド・ヒューズ氏講演「エネルギー持続可能性のジレンマ―有限な世界の未来にパワーを与える」(要約版)

2007年12月05日

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いま世界は「エネルギー・ジレンマ」に直面しています。2006年の世界は、1850年に比べて、人口は5倍になり、一人当たりが使うエネルギーは8倍になり、つまり、世界全体として1850年に比べて43倍のエネルギーを使っているのです。

しかも、その89%は、石炭や石油、天然ガス、ウラン(原子力)といった再生不可能なものであり、かつ、これらの再生不可能なエネルギー資源は、いずれも今世紀中にその生産量がピークに達すると考えられています。

日本のエネルギー消費を燃料別に見ると、2006年には、化石燃料ベースのエネルギーが83%を占めています。その83%の化石燃料は、すべて輸入に頼っています。残りは、原子力のほか、水力他少量の再生可能エネルギーです。

アメリカのエネルギー情報局のデータによると、日本のエネルギー消費はこのまま続けば10%増えると予想されていますこのシナリオに従うと、そのうちの80%が石油、天然ガス、石炭といった輸入の化石燃料になります。

ピークオイルについては、先ほどデニスも話をしていましたが、これは石油がなくなってしまうということではなく、石油の生産がピークに達するという意味です。これは、われわれの現代文明がどうなるかということを大きく左右する、非常に根本的な問題です。

世界の産油量のピークが来るのかに関しては、いろいろ意見があります。2004年以降に発表された21の推定の単純平均をみると、「2014年にピーク」ということになります。ただ、やはり信頼性という意味であまり高くないものをはずしますと、「2012年にピーク」ということになります。

過去7年間の石油の供給統計を見ると、世界の産油量は2006年の9月に、OPECの産油量は2005年に、ピークを記録しています。ここでの問題は、さらに生産インフラに投資をすることで、下がってきたものをまた上げていくことができるのかどうか?です。

日本は、中東ないしOPEC諸国からの輸入に、非常に大きく頼っている脆弱性を抱えています。実に88%の石油が中東から来ています。日本は天然ガスも100%LNGという形で輸入に頼っており、全体のエネルギーの20%を占めています。

天然ガスもやはりピークが来ると考えられます。石油よりは少し先かもしれませんが。そういった予測のひとつによると、世界の天然ガス生産のピークは2045年にやってきます。

ピークオイルが来るからと、天然ガスなどで置き換えたとしても、埋め合わせはできません。石油と天然ガスを合わせた生産量を見ても、2010年にピークに達するという予測があります。

北米では、すでに2002年に天然ガスのピークがきています。それ以来、資源探査の努力を非常に積極的に続けているにもかかわらず、天然ガスの生産量を引き上げることはできていません。

北米の生産量は、年率で1.5%で下がってくると予想されています。そうすると北米の天然ガスの需要の41%は、LNGという形で輸入しなければならなくなります。

北米でもLNGを受け入れるためのターミナルがつくられていますが、実はいま、そういった再ガス化のためのターミナルのほとんどは空になっています。2006年には、設備容量の70%は、実は稼働していませんでした。世界のスポット市場でLNGを入手しようとしても、非常に競争が激しかったからです。

日本はLNGの最大の輸入国です。2番は韓国です。それから中国、メキシコといったところが、せっせとLNGの輸入を拡大しておりますし、ヨーロッパでも同様のことが見られます。このように、世界には、日本だけではなく、LNGこそこれからの解決策だと考えている国々がたくさんあって、競争が激しくなっていくでしょう。

日本のいま現在のLNG・天然ガスの輸入契約量を見ると、2015年ぐらいになると、かなりの不足が発生します。この不足分はほかの輸入国、たとえばアメリカなどと競争して、何とか手に入れなければいけないということになります。しかし、世界的には、予想されている需要の増加に追いつく分だけはありません。

世界的に、石炭の消費が伸びています。これは天然ガスや石油と比べて安いことが原動力となっています。熱量ベースでいえば、石油に比べると4分の1、天然ガスに比べると2分の1のコストなのです。世界の石炭の消費は、2001年から30%伸びてきています。日本もかなり消費が増えています。

ただ、石炭も永遠に使い続けられるわけではありません。ある予測では、石炭の産出も、2025年にピークを迎えます。

今度は発電をめぐる状況を見てみましょう。アメリカのエネルギー情報局による日本の燃料別の電源の予測をみると、2030年には60%が輸入した化石燃料、すなわち石炭、天然ガス、石油となります。ただ、これはいわば現状維持型のシナリオです。つまり、石油生産のピークが来る、あるいは天然ガスのピークが来るということは、現実としてそこに見えていますが、それらは反映されていない予測なのです。

この予測では、日本においては原子力が成長産業であるということになっています。原子力についてはさまざまな問題があります。マサチューセッツ工科大学が挙げている問題を紹介しましょう。

ひとつはコストです。いまの状況では、石炭や天然ガスと争えるほどコスト、競争力がありません。もしかして炭素税が導入されれば、状況はかわるかもしれないという人もいますが。

そして、安全性です。安全性については、燃料サイクル全体を考えたときに、まだわからないことが多いのです。放射性廃棄物に関しても、何十年にもわたって地層処分について研究されてきてはいますが、本当に安全な処分が実現するには、まだこの先何十年もかかる可能性があります。

また、核兵器の拡散という問題もあります。

実は原子力にも、燃料の問題があります。「原子力は、化石燃料が減っていく世界では万能薬だ」と訴える向きもありますが、実は核燃料も有限です。いまの原子炉の技術をこのまま使い続けた場合、すでに確認された資源量だけではなく、これから発見されるであろうと見積もられているものを含めても、2070年には核燃料を使い果たしてしまう可能性があります。

今度は、別の問題に目を向けましょう。一人当たりのエネルギー消費が、世界のなかで非常に不均衡、あるいは不公平なものになっているという問題です。たとえば日本人は、地球全体の平均の3倍のエネルギーを使っています。

日本は典型的な先進工業国です。先進工業国ではいずれも人口は横ばい、ないし低下するという傾向になりつつありますが、日本でもこの先、人口が減ることが予想されています。ですが、一人当たりのエネルギー消費はまだ伸び続けると予想されており、トータルのエネルギー消費は、やはりこの先伸び続けるという予測になっています。ただし、それを可能にするだけの燃料が実際手に入れば、ですけれど。

その一方で、インドとか中国といった国々が、いわゆる先進国といわれている国に追いつきたいと成長し、もっと消費することを志向しています。

特に大きな問題となるのが、途上国における人口の増加です。中国やインド、そのほかアジアの発展途上国で特に顕著です。中国の場合、2030年の人口が15億を超えるかもしれません。インドは2030年には中国の人口を追い越すと予想されています。また、ほかのアジアの途上国においても、大きな人口の増加が予測されています。

中国では、一人当たりのエネルギー消費も2倍になると予測されています。ただ中国の場合、それが2倍になったとしても、一人当たりで見たときには、2030年の日本人の水準のまだ半分です。トータルのエネルギー消費量で見ると、2030年には中国はアメリカを抜いて、世界一の消費国になると予測されています。

こういった予測がすべて現実になったとしたら、世界は2030年にどうなるか? 1850年に比べ、人口では7倍、一人当たりの消費では10倍、世界全体のエネルギー消費としては66倍ということになります。これは、いまの水準よりも50%高いものになります。

この予測では、エネルギー消費の89%は再生不可能な資源によるものであるとしていますが、これは現実には全然そぐわないものです。現実には石炭、石油、天然ガス、場合によってはウランも生産量がピークに達することになりますので、このシナリオが現実になることはあり得ません。

では、こういったことは、日本にとってどういう意味を持つのでしょうか? 先ほどデニス・メドウズ氏もおっしゃっていたように、日本は、特に70年代の石油危機のあと、積極的にいろいろな施策を打ってきました。

ですが、たとえばピークオイルあるいはピークガスといわれる問題に対しては、非常に脆弱な存在が続いています。たとえば2006年には、一次エネルギーの83%を輸入に頼っていました。この数字には、実は原子炉で使うためのウランの輸入は入っていません。現状維持型のシナリオの予測が実現するとしたら、2030年には、日本は発電のための燃料の60%を、輸入された化石燃料に依存しています。

日本の計画では、発電容量の3分の1を天然ガスでまかなうということになっています。天然ガスをLNGという形で使うということを考えて、その全体にわたる温室効果ガスの排出量なども考える必要がありますし、液化して輸送して再ガス化をするという過程で、実は15%のロスが出ているということも、十分考えに入れるべきでしょう。

日本にとっての大事なひとつの戦略は、海外からのサプライチェーンに対する依存度・脆弱性を減らすことです。輸入に頼る体制を少しでも減らすということです。

そのためには、もちろん省エネや効率化ということも必要ですが、それだけではなく、たとえば食糧にしろ工業製品にしろ、できるだけ地元で手に入れることができるようにしていくことです。たとえ、その分プラスにコストが初期的にかかるとしても、なるべくローカルで手に入れることを考えるべきでしょう。

エネルギーの使い方に関してのパラダイムシフトが必要なのです。

●演者プロフィール

デイビッド・ヒューズ氏 (カナダ地質調査所上級地質学研究員)

地質学者であるデイビッド・ヒューズ氏は、カナダ地質調査所の研究者としてエネルギー資源の研究調査に30年以上携わってきた。カナダの石炭インベントリーのリーダーを務め、石炭に関するデジタル情報を使い、石炭の従来の利用法とコールベッド・メタン生産や二酸化炭素の固定化など新しい利用法にどの程度適用可能であるかを検討している。また、カナダ・ガス・ポテンシャル委員会における非従来型天然ガスのチームリーダーでもある。

近年の関心は、エネルギーに関する「ビッグピクチャー」を描くことにある。エネルギー供給の継続性の長期的予測診断とエネルギー利用に関する政治および環境への影響に大きな関心を寄せている。ヒューズ氏のグローバル及び北米でのエネルギー分析は、アメリカ及びカナダの連邦政府、州政府、自治体、エネルギー供給業界団体及びエネルギーを消費するさまざまな業界団体で利用されている。

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