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新年のご挨拶2008

2008年01月05日

変化を創り出さそうと志す皆様へ

新年明けましておめでとうございます。
いつもチェンジ・エージェントのシステム思考メールマガジンをお読みいただきありがとうございます。

年始にあたり、私どもチェンジ・エージェントの昨年の振り返りと新年の抱負をお伝えしたいと思います。

2007年はシステム思考と学習する組織への機運の高まりを実感する年となりました。3月には『なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか』(東洋経済新報社)を発刊し、おかげさまですぐに重版となるほど好評をいただきました。7月には『入門!システム思考』(講談社現代新書)も出版されました。私たちが直接関わった書籍以外にも、ダイアログ、AI、OST、ワールドカフェなど、システム思考をベースに取り入れた組織学習手法の本が多く発刊された年となりました。

機運の盛り上がりに後押ししてもらったおかげもあって、私たちのオープン研修も多くの受講者をお迎えすることができました。特に、論理的思考やMBA的な旧来型の研修や手法に物足りない方、限界を感じる方にたくさんお越しいただいたように思います。私たちも、さまざまなニーズに応えてコースを拡充し、システム思考をベースに「アドバンスコース」、「学習する組織リーダーシップ研修」、「マーケティング講座」などを開催、また、ループ図の練習のためのメール講座も開設しました。

これらの新しい考え方は、組織でのリーダーシップのあり方にも影響を及ぼしています。リーダーシップ開発および組織開発プログラムの一環として、メンタルモデル、チーム学習、ビジョニングなどの「学習する組織」の基礎を取り入れたワークショップへのご要望を多くいただきました。また、経営戦略演習やケーススタディによる「ラーニング・ラボラトリー」を通じて、マーケティング戦略、オペレーション/プロジェクトマネジメント、組織戦略、投資戦略などを考えるプログラムを提供し、組織のさまざまな課題に対応しました。

海外からの関心も高く、メキシコ、ハンガリーでワークショップを開催し、ドイツで講演、スイスでプレゼンテーションの機会を得たほか、欧米のメディアからの取材も受けました。システム思考の入門書のひとつである『地球のなおし方』の韓国語版が出たほか、英語版にしてほしいとの要望もいただいています。また、国内でも英語のワークショップの要望を受けて、システム思考などのプログラムを英語でも提供しています。

システム思考への要請が、組織の枠組みを超えて高まった年でもありました。システム構造上、深刻な課題である温暖化問題について、枝廣淳子がノーベル平和賞を受賞したアル・ゴア氏著『不都合な真実』の翻訳を担当し、弊社が全面的に編集協力を行いました。さらに、温暖化問題の講演を多数実施したほか、4月には温暖化に関わる科学者や行政関係者、企業、NGO、大学などさまざまな利害関係者を集めての、日本発の「クライメート・カフェ」というダイアログも実施しました。年末にはグループ会社イーズが温暖化に関わる動きを刻一刻と伝える『日刊温暖化新聞』を創刊しております。

また、2007年は、エネルギー、資源、食糧の価格上昇の際立った年であるともいえます。弊社では従前から、原油など化石燃料の構造的な課題について取り組んでいましたが、11月にはアメリカ・カナダから、デニス・メドウズ氏とデービッド・ヒューズ氏という第一人者を、日本国内からも専門家を集めての「エネルギー・チャレンジ」と題するシンポジウムを開催しました。原油価格が幾度となく最高値を更新し、経済界や国民の関心が高まる中、脆弱な日本の課題と解決へのシステム的アプローチについて考えました。

2007年は、総じて、システム思考への関心が高まると同時に、文明の行方を左右するようなシステム構造上の問題が目に見える形で現れました。ティッピング・ポイント(それを超えると一気に加速する閾値)は着実に近づき、ますますシステム思考の必要性が今までになくクローズアップされるようになった1年だったと思っています。システム思考や学習する組織の手法を活用して、さまざまな課題に対して本質的な解決策を見出し、広げていく責任の重さをあらためてかみ締めています。

未来に目を向け、2008年の抱負ということで、私たちは、以下の3つを機軸に事業を展開したいと考えています。
● システム思考の啓発と「システム市民」普及の加速
● 「学習する組織」の推進と組織リーダーシップ能力の強化
● 「温暖化・エネルギー問題」のシステム的考察と解決へのアプローチの発信

1. システム思考の啓発と「システム市民」普及の加速
組織にしろ、社会にしろ、システム構造上の難しい課題に対しては、長期的な視点から、複眼的に、全体像を俯瞰することが必要となります。システム思考を身につけた「システム市民」の数が増えれば、組織やコミュニティでの場当たり的で自滅的な問題解決に「待った」をかけ、本質的な解決策を協働で考え、望ましい変化に向けて動き出すことができます。さらに、私たちの会社の使命でもある「変化の担い手」(チェンジ・エージェント)を増やしていくこともできるでしょう。

私たちは、システム思考の講演・講義、執筆、研修プログラムを通じて、2005年の創立以来3万人以上の方たちにシステム思考の考え方やツールを伝えてきました。今年は、さらに「システム市民」と「変化の担い手」の普及速度の加速を目指して取り組んでいきます。

2. 「学習する組織」の推進と組織リーダーシップ能力の強化
変化の加速する時代に、トップ、ミドル、ボトム問わず、組織変革のリーダーに求められる力は、カリスマ的な指導力でも、先見性でもありません。むしろ、組織のメンバーたちの内外の「つながり」を感じ取り、激しい環境変化の中でしなやかさを保ち、変化に適応しながら、進化し続ける組織システムをデザインする力こそが求められます。進化し続ける組織は、自己組織的にメンバーの潜在能力を開放し、そのつながりのパワーで組織自身も発展する相乗効果の高い組織といえるでしょう。

このような組織は「学習する組織」と呼ばれ、国内外の先進企業はその構築に向けて動き出し、また互いにその実践の成果を共有し、相互に学びあう活動を行っています。日本でもそのような学習のネットワークを広げるため、グローバルに「学習する組織」を推進するSoL(Society for Organizational Learning)という組織の 日本コミュニティ「SoLジャパン」の設立・運営を支援することとしました。

この1月下旬には、SoLの設立者であり、「学習する組織」や「システム思考」の世界的なリーダーであるMITのピーター・センゲ氏を日本に招聘し、「知識経営」の生みの親である一橋大学名誉教授、野中郁次郎氏との対談を開催します。その後も、継続的に「学習する組織」と、そのために必要なリーダーシップに関するプログラムを実施し、日本ならではの、東洋の叡智と西洋的な視点・手法を活かした「学習する組織」の推進に努めます。

3. 「温暖化・エネルギー問題」のシステム的考察と解決へのアプローチの発信
温暖化は、数十年、数百年の時間軸で私たち現代文明の生き残りを左右する大きな問題であり、この2,3年のうちに、この要因を無視してきた経済のルールブックは大幅に書き換えられることでしょう。企業や組織にとっては大きな変化となり、またビジネス機会でもあります。

しかし、もっと短期に私たちの経済や生活に影響を与えるのはエネルギー問題であるとデニス・メドウズ氏は予言します。2008年の年始早々、原油の価格は100ドルを超えましたが、エネルギーも資源も食糧も長期的に見れば、需要増と供給の先細りから価格上昇圧力はかかり続けます。エネルギー、素材、食料の大半を輸入に依存する日本の経済システムは、極度に脆弱であり、この構造を変えずしては日本の経済は常に対応策に追われることになるでしょう。

私たちは、執筆や講演、ウェブサイトの情報発信を通じて、システム思考的な考察と本質的な解決策の糸口を伝えていきます。2006年、2007年のシンポジウムの講演録のほか、世界や日本の各地に見られる「ポジティブ」な動きを多く集め、新しい経済社会システムのビジョンの種を広げて行きたいと考えています。

国際情勢の面でも、資源エネルギー問題でも、気候変動問題でも、世界の変化はますます加速していく1年となることでしょう。変化に翻弄されるのではなく、変化を先読みして手を打つことができる組織、さらには、望ましい変化を自ら創り出していける組織を作っていくために、より効果的・効率的なお手伝いができるよう、一歩ずつ進んで行く所存です。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

チェンジ・エージェント
小田理一郎・枝廣淳子

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