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「渋滞は解決しようとしてはいけない?」

2009年06月11日

都市の成長の問題は、都市交通の問題とも大いに関係します。

人口が増加するにつれて、都市の中心部や流入経路での渋滞が起こり、多くの経済ロス、安全問題、大気汚染、エネルギーの非効率利用などの原因となります。渋滞を緩和しようと道路建設を行いますが、中長期には道路で都市との交通の利便性がよくなるので、住宅開発が進み、人口流入、交通量増大によって再び渋滞問題に悩まされることになります。

こうして、道路を建設しては交通量が増えて渋滞が悪化する悪循環を繰り返しながら、都市圏は次々と広がっていきます。その広がった都市圏の郊外にある駐車スペースに置かれた車が、昼間一斉に都市部に集中したら、街中車にあふれるのはごく当然だなと思います。

渋滞に関して、ヨーロッパで交通政策を専門にするシステム思考家がおもしろいことを教えてくれました。街のある場所で長期間の工事のために、通過に何十分もかかる大渋滞が起こったそうです。最初は苦情も多く出ました。ところが、2週間もしたら何もしていないのに渋滞がほとんどなくなったそうです。

理由はいたって単純で、渋滞を避けたいと思うドライバー達は、自分たちで代替の方法を見つけてその道を通らなくてよいようにしたからでした。人はもともと状況に適応する能力を持っているわけです。

都市で慢性的な渋滞が生じたら、それ自体が問題なのではなく、根本的に人口や交通量が都市部の許容量を超えているという本質的な問題の症状なのでしょう。渋滞の不便さをそのままにしておけば、経路や時間を変えたり、公共交通手段を使ったり、あるいはもっと職場に近いところに引っ越すなど、住民が自発的に変化していきます。人工的に無理な方向への介入を続けるのではなく、自然の解消に任せるのが理にかなった方法に思えます。

ですから、症状をいくら解決しても問題はけしてなくなりません。必要なのは、適応に必要な選択肢を確保したり、情報を提供したり、あるいは本質的にものごとのバランスを適正に保つグランドデザインをすることではないでしょうか。

あなたの組織も、症状の解決に疲弊していませんか? そんなときは、是非組織でシステム思考を取り入れてみてください。

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