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「変化を創り出す」ということ~その技、そして思い~(2)「チェンジ・エージェント社の思い」

2010年06月16日

(2010年4月に開催したチェンジ・エージェント社5周年記念講演の講演録「『変化を創り出す』ということ~その技、そして思い~」を数回に分けてお届けします。プレゼンテーションのスライドは、こちらおよび、第1回の講演内容は、こちらのサイトからご覧いただけます。)

私自身は、環境問題にずっとかかわって活動しています。環境というのは、たまたま今、一番自分が活動しやすいので選んでいるフィールドで、環境を専門にずっとやっていくかどうかはわかりません。

環境問題について、今すごく思うのは、まるで週替わりのように、次々と環境問題が出てくるなということです。週替わりはおおげさですけど。もともとは、公害から始まりましたよね。そしてごみの問題になったり、それから「オゾン層が問題だ」と言われたり、温暖化の問題になって、そして今やもう、「温暖化は古い」と言う人たちも現れています。もう、「次は生物多様性だ」と。こんなふうに、テーマがぐるぐる変わっていくんですね。

先週、企業の方々が30~40人集まる所で、温暖化と生物多様性セミナーという所で講師を務めました。企業の方に、「両方とも話せますけど、より聞きたいほうの話を長めにするので、どっちが聞きたいですか?」と聞いたら、全員が生物多様性に手を挙げられました。よって、温暖化の話は全部飛ばして、生物多様性だけ話をしました。

これが、1~2年前だったら、「温暖化、温暖化、温暖化」です。温暖化の問題が解決したわけではないんですが、もう次の問題が大切だというふうになっている。

生物多様性というのは―今日は環境がメインの話ではないので詳しく話しませんが―、温暖化に比べると難しいです。いろいろな理由があって難しいんですが、1つは見えにくいんですよね。もちろん、温暖化も見えにくいですけど、温暖化は温度とか、CO2とか、ある程度測れるものがあります。なので、良くなっている、悪くなっているというのがわかります。でも、生物多様性は何で測っていいのかというのがわからない。

温暖化の場合は、自分が例えば、車に乗るとガソリンを燃やして二酸化炭素を出す。そこのつながりは、想像すればわかりますね。でも生物多様性は、自分が暮らしていることが、どういうふうに世界のいろいろな生物とか、生きている環境に影響を与えているか、なかなかそのつながりが見えにくい、などなどの問題で、生物多様性のほうが、難易度が高いと思っています。

それをどう伝えるか、どうやって取り組むかということで、今いろいろな企業の方に相談を受けて一緒に考えているんですが、ちょっと一歩引いて考えると、私は、温暖化の問題が出てきた時もそう思ったし、今、生物多様性についてさらに思っているのですが、これは人類の進化の過程ではないかと思っています。ちょっと話が大きくなりすぎているかもしれませんが、私はそう思っています。

つまり、今、私たちのほとんど、これまで生きてきた人類のほとんどが、「自分の周り半径50センチ、今から5分ぐらい」のことを考えながら、大体の時間生きているんじゃないかと思います。もちろん、ブッダとかガンジーとか、そうじゃない例外もいますけれど、大体は自分の周りの狭い所、そして割と短期的なことを一生懸命考えている。

じゃあ、進化したあとの人類はどうなっているかと言うと、おそらく、自分が何かを考えるときに、ごく自然に地球の裏側とか7世代後のこととか、それが考えに入ってくるような、つまり思考の軸が伸びた、広がった、そんな人類になっていくんじゃないかと、私は思っているんですね。

たとえば公害問題といえば、目に見えますよね。「あの工場の排気ガスが」「あの工場の排水が」というように。それ対して、温暖化というのは見えない。見えないけれど、ある意味数字にすることはできる。たとえば「二酸化炭素を減らせ」という形で目標を定めることはできる。少し難易度は上がっていますよね。目に見えない。けれど数字化はできる。

生物多様性は目に見えないし数字化もできない。つながりさえよくわからない。
さらに難易度が高い課題が今、人類に来ているわけです。

こういった形で、私は、人類が進化していく過程にいるのではないかと思っていますが、ただ、進化には時間がかかりますので、進化を待っていると、おそらく問題解決ができなくなる。間に合わなくなります。地球がだめになるほうが、人間が進化するよりも速いペースで今進んでいると思うんですね。

なので、先ほど小田が挨拶のところでも話しましたが、進化を待っているだけではなくて、間に合うような形で必要な変化をつくり出していく。チェンジ・エージェントというのは、日本語にすると「変化の担い手」という意味です。変化をつくり出していく人、変化を応援する人。そういう人たちを何とか増やしたいというふうに思って、今、活動しています。

もともとこのチェンジ・エージェントもしくはシステム思考との、私自身の出会いは、2002年です。ドネラ・メドウズさん―皆さん、『世界がもし100人の村だったら』でご存じの方が多いと思いますが、この物語、小さなお話そのものがシステム思考です―、そのドネラさんたちがつくったバラトングループという、国際的なシステム思考の研究家、実践家、そして持続可能性の実践家たちが集まっているグループがあるのですが、そこに招かれて、システム思考という考え方に出会いました。

出会った瞬間、「あ、これだ!」と。日本にぜひ伝えたいと思って、それから勉強して、2005年にチェンジ・エージェントをつくりました。

その時思ったのは、今時間的にそんなに余裕がないので、「チェンジ・エージェントの大量生産ができないか」ということでした。一人ひとりコーチングをしながら、その人を変えていくというのもとても大事です。私自身、大学、大学院でカウンセリングをやっていたので、一人ひとりとじっくり向き合うことがどんなに大事かというのは、よくわかっているつもりです。それがほんとは大事だけど、でも、それでは時間がかかって、なかなか間に合わない。何とかチェンジ・エージェントの大量生産のお手伝いができないか。

小田とこの会社をつくる時によく言っていたのは、「もし本当に変えたいという気持ちと変えるスキルを持ったチェンジ・エージェントを200人、日本の中で育てることができれば--それは政府にも、自治体にも、企業にもNGOにも、いろいろな所に、そういった人たちが合わせて200人--、連携して物事を進めていけたら、日本は変えられるんじゃないか」ということです。

200という数字は全然根拠ないです。勘で言っているだけです。でも、そんな夢を見て、200人のほんとのチェンジ・エージェントを育てたい。そして変化をつくり出すことを応援したり、自分でもやっていく。そういった人たちを、ずっと裾野を広く、広げていきたいという思いで活動してきました。

(つづく)

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