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【開催レポート】サステナブル・フード・ビジネス研究会第4期「食のサステナビリティと企業」連続セミナー(3) 11月7日「気候変動とエネルギーの現状と世界の取り組み」

2013年12月13日

日本でも、2013年、西日本で夏平均気温がここ50年で第1位の高温、東北地方の7月の降水量が第1位の多雨になるなど、極端な天候は記憶に新しいと思います。平均気温の上昇は、洪水、干ばつ、台風、集中豪雨など極端現象の頻度や度合いを高めるおそれが強く、食料生産の場面においては直接的な被害が多く報告されています。

さらに、食料生産は災害以外にも気候変の影響をとても大きく受けます。現在の農業適地では気温が1℃上がるごとに、穀物の反収が1割程度落ちる一方、他の地域での収量の増加はインフラやノウハウなどの浸透に時間もかかりますし、海域酸性化や海洋の温暖化は、魚のすみかを脅かし、漁業においても直結した問題となっています。

では私たちは、どのように気候変動とそれを引き起こしている諸課題と向き合っていくことができるでしょうか?

9月に発表された「IPCC評価報告書」最新の内容についても触れつつ、企業活動のなかで今後どのような戦略をたてていくことができるか一緒に考えました。


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(ファシリテーター/スピーカー:チェンジ・エージェント代表取締役社長 小田理一郎)

講義 気候変動とエネルギーの現状と世界の動き

はじめに、世界の食料と気候の現状について弊社小田より概況をお話しました。世界の平均気温はここ10年はもっとも暑いと記録し、穀物生産量は減産し、ここ数年でも伸び続ける消費に追いつくことができず、穀物の在庫が減り続けている現状を確認しました。

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次に、IPCCの最新報告から、気候変動に対する科学者の分析、科学的背景に触れ、温暖化が人為的要因で起こっていることがほぼ確実であろうという評価がさらに高まったことや、今後予想されるその影響の複数のシナリオについて、認識を共有しました。またそのようなシナリオに向けて、世界の食品企業がどのように適応策や緩和策に取り組んでいるかについて海外の事例を紹介しました。

先進的な企業に見られる特徴として、自社の生産や物流などについての対策は進めながらも、ライフサイクルでの影響で大きな比率を占める川上にあたる農業生産や川下にあたる消費者のライフスタイルなどの課題に取り組んでいます。また、必然的に、サプライチェーンの中での利害関係者の協働を促すさまざまな施策に取り組む様子の報告がありました。

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参加者による討論では、課題を確認し、自社の状況に置き換えて、何が重要か、またどのようなアプローチができるかについて話し合いました。

気候変動というテーマは、原因のドライバーとなっている範囲が広く、個々の努力や成果が見えにくい問題です。それゆえに、単独の企業や国家単位で取り組みを行っても、解決の道筋をさぐることが難しいと言えます。また、求められる目標の値と、現在企業ごとに行っている取り組みとのギャップが大きく、自社だけで取り組みを継続しつづけることが難しい、といった問題意識が、共有されました。

自社で実施できることを行いつつ、農業、小売、物流、消費など、サプラーチェーン全体でどのように意識を合わせていけるか、消費者や生産者など自社を超える範囲でどうすれば有効な取り組みをすすめられるかが鍵になるといった認識が共有されました。次回以降も、これらの問題意識や、問いをさらに掘り下げていきます。

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次回 1月16日の連続セミナーのご案内:「生物多様性が食品企業にもたらすリスクとチャンス」

生態系サービスの減少がビジネスにどのようなリスクをもたらすのでしょうか?

先駆的な食品企業はどのように生物多様性問題にどのように適応し、チャンスを見出しているのでしょうか?

生物多様性の現況と傾向、経済的な影響についてを概説、食品業界が生物多様性問題に取り組むためのフレームワークと事例を紹介します。

>>>お申込み・詳細

日時: 2014年1月16日(木) 16時30分~19時
会場: 東京都千代田区 大手町駅周辺(ご参加の方に個別しお知らせします)
参加費: 一般 5,000円(税込)

今後の予定

A.「食のサステナビリティと企業」連続セミナー

 第1 回(7/11)「2013 年度サステナブル・フード・ラボの報告」 (終了しました)
 第2 回(9/12) 「貧困と企業」(終了しました)
 第3 回(11/7) 「気候変動・エネルギーと企業」(終了しました)
 第4 回(1/16) 「生物多様性(森・水・土・海)と企業」
 第5 回(3/13) 「価値共創企業」

B.「食のサステナビリティ」マルチステークホルダー・ダイアログ

 第1 回(8/8) 「フードロス」(終了しました)
 第2 回(10/10) 「世界の飢餓と私たちの食について考える」(終了しました)
 第3 回(12/5) 「日本の里山・里海」(終了しました)
 第4 回(2/6) 「国際協力」または「震災復興支援」

★サステナブル・フード・ビジネス研究会の会員を募集しております。
★会員以外の方の、単回でのご参加も可能です。(有料)

研究会へのご参加方法

サステナブル・フード・ビジネス研究会は2011年1月に第1期が立ち上がり、今年第4期を迎えました。
食関連事業者による学びあうコミュニティを築いて、世界の最新情報を共有し、話しあい、またビジネスとしてどのように自社のリスクを評価し、また、どのように効率的かつしなやかな食料システムの構築に向けてポジティブな変化のうねりを創るかという、チャレンジに向き合っています。

●研究会が目指すこと
  • 食のサステナビリティに関するビジネス上の課題への認識を高める
  • 食のサステナビリティに関する企業や関係者の動向、課題について知識を深める
  • 一社、業界単独では解決できない問題を協働で解決していく道筋をさぐる
  • 日本の食・世界の食、そして事業継続に関してメインストームにたいしてポジティブなうねりを作り出す

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