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三次ループ学習で無意識の制約から解放される~「行動探求」より~

2016年05月31日

システム思考や学習する組織に共通する学習ループに関する理論をご紹介します。「学習」と聞くと、ただの「知識取得」や「勉強」ではないかとの誤解があるようですが、組織における真の学習やシステム思考の活用における学習は、実践に根ざした、質の異なる学習を目指しています。

一次ループ学習:私たちの行動へのフィードバックプロセス

私たちはしばしば目標を設定し、現実が目標に届いていない場合、学習することで、次の行動の改善につなげようとします。たとえば、PDCAサイクルのように、計画策定、実行からその結果をモニターして、計画との乖離について評価、そして行動や計画そのものの見直しのアクションを起こします。これはもっとも基本的な学習で、「一次ループ学習」と呼ばれます。このプロセスを繰り返し、過去の意思決定の成功や失敗を振り返ることで、重要な学習をもたらします。このプロセスは組織が目標やゴールに効率的に近づくためのマネジメントシステムの基本でもあります。

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二次ループ学習:私たちの戦略へのフィードバックプロセス

さらに学習の質を大幅に改善するのが先ほどのループにもうひとつの学習ループを付け加えた「二次ループ学習」です。複雑な状況下や変化の激しい環境下において、過去成功していた戦略やポリシーに頼っていても成果が思うように上がらなかったり、中長期にむしろ悪化するような状況に直面することがしばしばです。そのようなとき、私たちがもつ、意識・無意識の前提(メンタル・モデル)の見直しが必要かも知れません。

私たちは、どのようなインプットがどのようなアウトプットにつながるかのモデルを頭の中に構築します。そのモデルがメンタル・モデルであり、メンタル・モデルとはしばしば過去の成功や失敗の体験から培った知識体系ともいえるものです。しかし、インプットに対してしかるべきアウトプットが、アウトプットに対してしかるべきアウトカムやインパクトが思うように出ていないとしたら、私たちのモデルのどこかに重要な見落としや見誤りがあることを示唆している可能性があります。厄介なのは、メンタル・モデルがどのようなデータが重要か、意味があるのか、といった思考の流れを決めてしまうことが多く、自らのメンタル・モデルを肯定するデータや情報に目が行きがちで、否定するデータや情報は気がつかなかったり、重要視しないことが個人としても、組織としても起こります。

自分たちが情報を取捨し、解釈する、メンタル・モデルは正しいだろうか? これまでの成功体験が通要しないとしたら、どのような情報を探り、解釈すべきだろうか? こうしたことをゼロベースで考えるようになるには、しばしば訓練や規律ある学習プロセスが必要となります。(システム思考のプロセスをはじめ、学習する組織の手法やツールには、こうした二次ループ学習を支援するものが多くあります)

 

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三次ループ学習:私たちの注意・ビジョンへのフィードバックプロセス

より高次の学習は、「三次ループ学習」です。このプロセスでは、意識を絶えず行き渡らせることに焦点があたっています。

私たちは自分の中、あるいはチームの中で起きていることで、注意の向いていない無自覚な領域に対して、効果的な行動を考えることができません。ところが、私たちの注意は、通常とても限られたものであることがほとんどで、それがさまざまな制約となってわたしたちの判断をゆがませてしまうのです。

三次ループ学習では、自らの注意の範囲を意図的に広げた学習を可能にします。たとえば、混乱した会議の最中、自身やチームのメンバーの内部で心理的になにが起きているか、会議の議題になっている課題はどんな外的システムのなかにあるのか、場に現れている状況に、注意を研ぎ澄まし、そこにどのような意図やビジョンが欠けているかを発見し必要であれば、ビジョンを修正し、新たに生み出す能力を育みます。

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注意と意識を意識的に広げる実践

では、私たちはどうすれば、自分の通常の注意が受けている制約に気づき、それを意識的に広げることができるでしょうか。

学習する組織では、メンタル・モデルや自己マスタリーのディシプリンによって自分たちの意識を広げ、自らの源にある意図やビジョンに気づくプロセスをデザインしていきます。特にビジネスの場でよく実践される手法の一つが行動探究(アクション・インクワイアリー)です。

行動探究(アクション・インクワイアリー)では、私たちが意識を向ける範囲を4つの体験領域に整理し、気づきの範囲を絶えず広げ、行き渡らせるためのフレームワークと、(たとえば、振り返りのジャーナルノートのつけ方といった)具体的かつ実践的な方法を提供します。

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すでに努力を続けている人や組織が伸び悩みを感じたとき、それは一次ループ学習による行き詰まりを示している可能性があります。自身を磨くために、また、組織のマネジメントをより本質的で効果的なものにするために、二次ループ学習や三次ループ学習の手法を学び、習慣として採り入れてみてはいかがでしょうか。


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https://www.change-agent.jp/events/001398.html

▼行動探究(アクション・インクワイアリー)について"もっと知りたい"方へ<関連コラム>
https://www.change-agent.jp/learningorganization/actioninq/

▼学習する組織について"もっと知りたい"方へ<関連コラム>
https://www.change-agent.jp/learningorganization/column.html

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