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行動探求(アクション・インクワイアリー)を学ぶ(1)-4つの体験領域のつながりをみる-

2016年01月04日

難しい状況判断の際、何を手がかりにするか

皆さんは、例えばプロジェクトが計画していた通りにいかなかったとき、話し合いの結論がなかなか見えず行き詰ってしまったときなど、難しい状況に直面した際に、何を手がかりに次の行動を見出しますか? もともと想定していなかったような状況の展開に遭遇すると、気持ちが焦り、私たちの視野や注意の範囲は狭くなりがちです。そのようなときに、「自分がどのようなことを見失いがちか」または「どのようなことに目を向けられるよう気を付けておけばよいか」がわかっていたら、後から振返っても後悔の少ない、より冷静な判断をする手助けになるかもしれません。

予測していなかったような状況の変化を受け、次にとるべき行動を判断する際に"目を向けるべきこと(=受け取るべきフィードバック)"としてどのような事柄があるか、それを「4つの領域」に分けて捉える考え方をご紹介します。

1次・2次・3次ループ学習

下記の図は、『4つの体験領域』(ビル・トルバート提唱)を表したものです。ひとつの出来事をシステムとして捉えた際に、第一の体験領域である【目に見える結果】(図の最下部)とそれもたらす要因となっている要素とを4つの領域にわけています。

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1次ループ学習...まず、ひとつめの【行為・働きかけ】とは、自分のどのような行動がそのような出来事をもたらしたか、という要因への注目です。次の行動を判断する際には、「どのように行動を修正すればよいか?」を問います。人間の発達理論においては、十代に突入する頃から、自分自身の行動と周囲に起こる出来事のつながりを理解し始めます。例えば、家族や友人が喧嘩しているのをみて仲裁に入ったり、成績やテストの点数をみて勉強時間を見直したりするような行動です。こうした、出来事の直接的な要因となる第二の体験領域、【行為・働きかけ】に目を向けて自らのふるまいに変化を起こしていくやりかたを、1次ループ学習といいます。

2次ループ学習...次に、ふたつめの【戦略・構造・ゴール】とは、結果をもたらすに至った【行為・働きかけ】が、どのような構造や戦略の中で生まれたのか、という要因への注目です。次の打ち手を判断する際には「どのように戦略を見直すべきか?」を問います。効果的な答えを紡ぎだすのに問題解決能力やクリエイティビティが求められ、二十代前半頃から注意を向け始める領域といわれています。プロジェクトに遅れが出た際に、単に1日の仕事量を増やすのではなく、仕事への取り組み方や順序、複数の人や部署間のコミュニケーションの在り方や意思決定経路などを見直そうとする行動です。こうした、同じ結果をもたらすパターン化した行為を生み出す背景に潜む第三の体験領域【構造・戦略・ゴール】に目を向け、新たな構造を創造しようとするやりかたを、2次ループ学習といいます。

3次ループ学習...さらに、事業や経営の経験を積んだ成人の中でもほんの一握りの人だけが注意を向けることのできる、第四の体験領域があります。それが、【構造・戦略・ゴール】(第三領域)を決める、(大抵の場合は無意識に)思考や感情を導くコンパスとなっている【注意・意図・ビジョン】です。平易にいえば、「そもそも、(私は/相手は/人は)どうしたいのか」という自身や他者の意識・無意識下の意図に注目することで、次の行動を判断する際に、まず「意図は何か?」「ほんとうにそれでよいか?」という最も深い問いをもつことができます。この、誰もがふだん直感的に定めたり、無意識にもっている第四の体験領域【注意・意図・ビジョン】までを、行動が求められているまさにその瞬間に振り返る習慣のことを、3次ループ学習といいます。

3次ループ学習の意義

さて、この3次ループ学習とはいったい、どういうことなのでしょうか。

例えば、皆さんはいま、この文章を読みながら何かを学んだり、振り返ったり、さっそく学びを活かそうとしているところかもしれません。この瞬間にも、「そもそも自分はなぜこれを読んでいるのか?」「なぜこの学びを活かしたいと思ったのか?」「なぜ興味が湧くんだろうか?」「それは何を心から意図しているからだろうか?」といった問い答え、あるいはそういった感触をもっているとしたら3次ループ学習の入り口に立っていることになります。

実は、こうして自身や他者の意図(第四領域)を振り返ることで、いったいなぜ現状のような構造(第三領域)が存在し、繰り返される行為(第二領域)が生まれ、結果(第一領域)として表面化するのかという一連のつながりがひとつひとつクリアに見えてきます。これが、全ての繋がりの根っこの役割をしている【注意・意図・ビジョン】に目を向ける3次ループ学習の意義です。

(つづく)


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