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つながりで生み出す大きな変化:インドネシアに広がるバイオダイジェスター

イーズ(代表:枝廣淳子)とチェンジ・エージェント(CA、代表:小田理一郎)は、世界の東西、南北のさまざまな国から集まる国際会議の気候変動の議論に12年前に参加した際に、「もしも先進国のお金の1%を発展途上国に回せれば、発展途上国の気候変動に関するかなりの問題を解決できる」という考えに触れました。この考えに着想を得て、すぐさま同じ会議でインドネシアからの参加者に声をかけました。それから継続的にインドネシアのNGOに、収益の1%以上のお金が途上国に回る取り組みを続けています。寄付や事業を通じて循環したお金によって、どのような変化が作り出されたのでしょうか。

イーズとCAが提携しているのは、インドネシアのKAILとYPBBという2つのNGOです。インドネシアには、「人材開発を行うNGO」「技術開発を行うNGO」のように専門特化したNGOがたくさんあり、KAILは人材開発を行うNGO、YPBBは技術開発を担うNGOです。専門特化したNGOがあることで、たとえば人材開発のための専門部署を設ける余裕がないNGOやコミュニティ団体は、人材開発をアウトソージングできる仕組みです。技術開発を行うYPBBは、先進国のコストが高い技術や解決策を、インドネシアでも使える価格の安い技術にする仕事を担っています。こうした様々な専門的なNGOが関わることで、小さな団体だけでは行えない活動も実現できるようになります。

ジャワ島の「循環型」研修施設

イーズ/CAから仕向けられた資金の一部は、ジャワ島のバンドゥンにある研修施設の建設に使用されています。この研修施設の面積は2,000平米(600坪)ほど。敷地にはメインの2階建ての建物や、パーマカルチャーの研修などを行うための小さな建物があります。庭もパーマカルチャーの考え方に従って作られています。食べられる植物が植えられているゾーンや、植物が迷路のように植えられていて、ヒーリングの研修ができるゾーンもあります。

この研修施設の大きな特徴は、建材の8割にリユースを中心とした再生材が使われていることです。バージン材が使われているのは、シロアリ対策のコンクリートなど、どうしても必要な場合のみです。建材として使える木も敷地内で育てられています。施設では雨水も活用しています。バイオダイジェスター(詳しくは後述)を導入し、ガスコンロに用いるガスにも、敷地内の有機廃棄物から発生するメタンガスが使用されています。このように敷地内で手に入る資源も余すことなく使うことで、「なるべく外からモノを入れず、外にモノを出さない」循環型のシステムを構築しています。こうした技術の支援はYPBBが担当しました。

「一石三鳥」以上のバイオダイジェスター

上でご紹介した研修施設で使われているバイオダイジェスターは、もともとはYPBBとPESAT(農村コミュニティ支援団体)が2007年からインドネシアのレンバンという地域で始めたプロジェクトによって開発されたものです。この地域では、人々は煮炊きに灯油を使うのが一般的でしたが、当時、政府の補助金打ち切りのため、灯油価格が上昇し、燃料を得るために、森林を伐採する動きも広がっていました。このような状況の中で立ち上がったのが、牛を飼っている農家を対象にバイオジェネレーターを設置するプログラムでした。実はこれが、イーズ/CAがはじめて資金を仕向けた際にお金がつかわれたプロジェクトでした。

レンバン地域は人口の83%が野菜農家に従事していますが、その多くが貧困線以下の生活を送っています。牧畜を営んでいる農家もありますが、その多くは野菜農家ではないため、ほとんどの牛の糞が肥料として使われることなく、農家は化学肥料を使用していました。牛の糞尿から出るメタンガスの温室効果が、二酸化炭素よりも大きいことはよく知られています。でも、バイオジェネレーターを使えば、その厄介者のメタンガスをエネルギーに変えることができるのです。しかも、バイオガスをつくる過程で、野菜農家が使用できる有機肥料も生産できます。「温暖化対策」、「エネルギー生産」、「肥料生産」と、バイオジェネレーターを設置するプログラムは、この地域にとって「一石三鳥」でした。

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(バイオダイジェスターの仕組み)

開発されたバイオダイジェスターの仕組みはシンプルです(上の図)。土を掘り厚手の特別なビニール袋を入れて、その中に牛の糞尿を溜めていきます。ビニール袋には、糞尿をかき混ぜるための棒がついていて、その棒で中身を定期的にかき混ぜることで発酵させ、メタンガスがつくられます。メタンガスは軽いので上にあがってきます。それを一箇所にためておき、ガスコンロに引いて調理などに使うのです。シンプルな技術だからこそ、地域のエンジニアでも設置することが可能です。現地のエンジニアに設置工事を頼めば、支払ったお金は現地にとどまり、地元に経済効果をもたらします。

バイオダイジェスターの糞尿を溜める容器には、セメントを使ったタイプのものもあります。ただし、セメントを使った容器は値段が高いため、貧しい地域に普及させることはできません。そこで、YPBBは現地に導入するための安い価格の装置を開発しました。このプロジェクトに関する2009年のレポートによると、セメントを使ってバイオダイジェスターを作った場合は、800万インドネシア・ルピア(日本円では2019年8月のレートで約6万円)購入にかかるのに対して、ビニール袋の場合は、200万インドネシア・ルピア(約1万5,000円)ほどで設置可能です。灯油を買うために1年に100万インドネシア・ルピアから200万インドネシア・ルピアかかるので、2、3年で元がとれる計算です。

しかし、初期の現場で生じる課題を克服するための開発と、そのためのパイロットプロジェクトのための資金が見つかっていなかったため、2007年当時、KAILとYPBBは工数の4割をも割いて資金提供先を探していた矢先でした。イーズとCAから、協働プロジェクトとして開発のための資金を投じることによって、チームは資金調達よりも技術や能力開発そのものに工数を投じ、プロジェクトを進めることができました。

このパイロットプロジェクトを通じて、現地の人々からは、「以前は灯油を使って煮炊きをしていたので、灯油代がかかっていた。でも、いまは自分たちが飼っている牛の糞尿で、エネルギーを作ることができる。灯油代が浮いたので、そのお金で学校に子どもたちをやれるようになった」といった喜びの声を聞くことができました。

インドネシア中に広がるバイオダイジェスター

このバイオダイジェスターは、インドネシア中に広める価値のあるものです。ただし、YPBBは技術開発に特化したNGOであるため、普及に関しての強みや経験は持ち合わせていません。そこで、普及については、オランダのHivosという開発支援団体が、支援を行うことになりました。この支援のおかげで、現在では、何万台ものバイオダイジェスターがインドネシア全土に広がっています。この過程で技術開発も進み、現在では、家畜の糞尿の代わりに、木材などの有機廃棄物を用いた都市部でも導入しやすい、バイオダイジェスターが作られています。

この変化は、イーズ・CA(日本)、YPBB・KAIL(インドネシア)、Hivos(オランダ)など国を超えたさまざまな人々や団体がかかわることで、作り出されたものです。「一部のお金を発展途上国のために」、あなたもはじめてみませんか。

執筆:新津尚子


※本記事は、幸せ経済社会研究所/有限会社イーズ内(https://www.ishes.org/)にて「注目の取り組み事例」として紹介された記事を許可を得て転載させていただいております。

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