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2020年代を展望する(2)何が起こりうるのか、何が求められるのか

前回は、私どもチェンジ・エージェント社が、変化を主導して未来を創造していくための人づくり、組織づくりの経験を通じて、2010年代の10年間がどのような時代であったかを振り返りました。

本編では、今始まったばかりの2020年代、社会や組織に何が起こりうるのかを展望し、その文脈を踏まえて人づくり、組織づくりに何が求められるのかについて考えます。そして、2020年代におけるチェンジ・エージェント社の担う役割について考えてみます。

●2020年代はどのような社会になりうるのか

「VUCA(脆弱、不確実、複雑、あいまい)」と呼ばれるこの時代において、10年という期間を経て世界や日本で何が起こるかを予測することは到底できるものではありません。予測するのではなく、何が起こりうるのかの可能性を問うのがシナリオ・プランニングの原則でもあります。ここでは、大まかに日本の人財や組織への意味合いの大きい、変化の駆動要因についてごく一部を列挙します。

・東京オリンピック/パラリンピック後の日本経済や地域経済はどのようになっていくだろうか?

すでに減少傾向にある人口について、死亡数の増加と出生数の減少はそれぞれ加速化していくであろう。地震リスクに加え、気候変動による台風・豪雨・洪水などの災害リスクなどが増し、国や自治体の財政の重しとなり、また個々人が住む場所の見直しも進めていく契機も増えるだろう。東京オリンピックというカンフル剤がなくなった後の日本経済や地域経済は失速するであろうか、それとも何とか持ちこたえるだろうか?

・2030年までに日本の職場の労働者構成と職務内容はどのようになっていくだろうか?

労働人口は減少傾向にある中、女性、シニア、障がい者、そして外国人労働者などを増やそうとするそれぞれの対策は加速することであろう。一方、自動化、人工知能、ロボットなどによる労働力の置き換えもそのペースを高めていく可能性もある。新たに求められるスキルにマッチした能力開発、顧客の払う対価、労働者への賃金は、それぞれの職種で、抜本的に変わるのであろうか、それともパッチワークが繰り返され、多くのセクター・業界で低賃金への依存は続くのか? 果たして多様性が活かされ、公正で誰もが成長と活躍のチャンスがある職場に向かっていくのであろうか?

・日本の海外事業や海外事業所を進める人財をどのように確保・維持しているだろうか?

商社など以外でも、日本の社員が海外で活躍する機会は増えていくであろう。日本から出向する人財は、海外でマネジメントを効果的に行えるであろうか? あるいは、現地の人財を確保し、活躍の機会を設計できるだろうか? 日本の企業は、国内外の優秀な若者たちにとって、魅力的な職場となっているだろうか? さまざまなリスクに対応しなくてはならない状況において、日本の本社と海外事業所は迅速で有効な協働関係を築けるだろうか?

・市場や価値連鎖の再編、資源制約などが加速化して行く中で、日本企業は事業モデルの創出や転換をタイムリーに進めているだろうか?

従来型の産業とIT産業が共存する時代、高度な情報化は市場や価値連鎖の再編をさらに進み、さらに、水、エネルギー、鉱物などの資源のプレッシャーは加速的に強まるだろう。経済モデルや事業モデルの革新は、終始米中欧に先行されるのだろうか、あるいは、日本企業はそのプレゼンスと価値創出を高めることができるであろうか? より多く生まれる協業、共創の機会を的確に捉え、価値実現を図ることができるだろうか?

・混沌とするグローバル経済の中で、日本のプレゼンスとリーダーシップは回復するであろうか?

世界のスーパーパワーが混沌とする時代、自己利益の個別化を目指す価値観を支える体制やポピュリズムはどのように展開するだろうか? 国際的な連帯は、どのようなバランスで維持・変化し、機能するだろうか? 大規模な戦争や核拡散は抑止できるだろうか? 自由貿易の行方はどうなるか? SDGsやパリ協定は効果的に機能しているだろうか? 国と地域、政府・企業・市民・学術セクターにはそれぞれどのような役割が期待され、機能しているだろうか? このような世界情勢の中で、日本や日本企業はそのプレゼンスを高め、リーダーシップを発揮、回復できるような人財を輩出しているだろうか?

●2020年代の人財開発と変革リーダー育成の課題

上述のグローバルな情勢や人口動態などの駆動要因そのものは、私たち日本人や日本企業が変えることは難しく、よくも悪くもさまざまな変化が予期され、変わりゆく事業環境をいち早く見立てて適応することが必要です。同時に、単独ではなしえない分野において、どのように他者・他社とつながり、未来の地域、事業、職場、働き方などを再定義して、新しい境界や価値を共創することも必要となります。つまり、地域や組織が効果的に適応と共創することが求められ、人財面でもまた、この適応と共創というチャレンジに対して、地域や組織のしかるべき変容に向けて変革を推進するリーダーの育成が重要課題となることでしょう。

2010年代の人づくり、組織づくりのトレンドにおいて、すでにこうした変化の萌芽が見られました。2020年代においては、こうした人財像、組織像はますますリアリティを増した環境課において先鋭化して求められることでしょう。前回のメルマガで掲げたさまざまな潮流の中で、人づくり、組織づくりのテーマとして注目すべきは「目的意識の質」、「適応能力の強化」、そして「変化を実現するためのネットワーク」ではないかと考えています。

●目的意識の質

私たちはなぜ働くのか、なぜ事業を行うのか? 今日、収入や収益の成長そのものを目的とすることの意義は薄れてきています。これは収入や収益を否定するのではなく、本来それは手段に過ぎず、仮に目的であったとしてもせいぜい数多くある目的の一つに過ぎないという認識が広がっています。

ビジネス界では、2010年代の終盤から、日本でも投資家が大きく変容し、ESG(環境・社会・ガバナンス)を投資の基準におき、最低限の基準を満たさない企業を排除する一方で、ESGで価値を創造する企業に積極的に投資しようとする(つまり調達コストが下がる)ようになりました。そして、過去の経済成長のおかげもあって、基本的なニーズが充足されている状況化において、事業成長の可能性を多く残しているのが社会課題解決の分野です。企業は、ますますもって、社会価値と事業価値の両立を、さまざまなステークホルダーから求められています。組織は、顧客や社会のニーズに応えるために存在し、もし顧客や社会から必要とされなくなったら、存在する意味がなくなってしまいます。それぞれの組織が、より大きなシステムの中でなぜ存在するのかという視点が欠かせません。

そして、組織は外部からのニーズに応えるだけでなく、起業する者や働く者にとっての意義も重要です。私たちはなぜ働くのか、私たちが固有に世の中に価値を出せることは何なのか、それぞれの国や地域、セクターや業界の中で働きながら、問い続ける必要があるのでしょう。今や、多くの社員、とりわけミレニアム世代以降の若い社員たちは、組織の目的の社会性を重視して働く会社を選ぶ時代です。自分の成長や収入のためだけではなく、働く意義や使命感の充足を重要なニーズとみなし、そうした基準から職場やセクターを選ぶ動きが加速化していくことでしょう。

さらに、本来異なる目的や役割をもつ組織が共創・協働する場面においても、何を、何のために協働するのか、外と内の両面から探求していくことが求められます。

組織は、外からも内からも、"なぜ"をますます問われる時代になっていきます。個人もまたしかりです。目的を改めて問い直しながら、志、ビジョンを育む場、プロセス、技能を築くことが継続的に求められていくでしょう。

●適応能力の強化

乱気流のように、ものごとが急激に大きく変化する時代にあって、ますます個人と組織の適応能力の強化が求められます。ハーバード大学のハイフェッツは、私たちが直面する課題には、「技術的な問題」と「適応を要するチャレンジ」の2つがあるかと言っています。私たちは、ある意味「技術的な問題」への上手な対処を続けてきた一方、適応を要するチャレンジが取り残され、また、技術的な問題へ対処するメンタルモデルが適応を難しくしている状況に陥っているのではないかと考えます。

さまざまなシステムレベルで相互に依存しあう時代、自身の今までの意図や前提をそのままに適応を要するチェレンジに取り組んでも、他者との衝突、平行線あるいはがんじがらめといった状況になることが多くなっています。私たちに必要なのは、相互影響の連鎖の中でどのように自分自身の意図や前提を"リフレーム"できるか、アウェアネスを高めて意識的な選択を行うか、という思考や行動の慣行を広げることにあります。

こうした適応能力を高める上で、もう一つ重要な役割を果たすのが、変革を試みる者の"内的基盤"をしっかり築くことです。つまり、"アウトサイド・イン"で世の中の変化を受け容れるばかりではなく、"インサイド・アウト"で自分の内側から真に求める変化の核を打ち出すことです。変化が必定の時代に合って、重要なのは何を保全するのか、何を変化させないのか、自己の基軸、基盤をしっかりもつことで、その目的や存在意義を全うできます。

このような能力を培うためには、高いレベルの自己マスタリー、あるいは人間としての成熟、発達に努めることが求められるでしょう。

●変化を実現するためのネットワーク

変化を推進するリーダーが、自身を取り巻く組織や地域を変えていこうとするなら、複数のネットワークを意識することが重要です。一つは、変化を起こしたい組織、地域やパートナーシップの内部に築かれるネットワーク、もう一つは、自分自身を有効に機能させるためのネットワークです。

前者において、ロジャースの「イノベーション普及理論」やアトキソンによる文化変容のための「アメーバ理論」などが、いかに望ましい変化のための変化の生態系を整えるか、の見立てと戦略に有効と感じています。相互依存の複雑なシステムの飽くなき観察と全体像の探求、システムの周縁に起こるカオス、新しい革新的なアイディアと安易に変えない基軸の融合、新しいパラダイムへのシフトを図るには、いくつかの役割・機能をもった複数のリーダーたちが有機的にネットワークする必要があります。「リーダー/フォロワー」という相対的な峻別もそれぞれのフェーズ毎には存在しますが、大きな変化が実現に向かうフェーズにおいては、共創のための「数多くのリーダーたち」となってシステム規模の変容を引き起こします。システムの変容は、潜在的に求められる変化を体現するネットワークの形成と変容であるとも言えるでしょう。

こうした変化のプロセスを通じて、「自分自身を有効に機能させるためのネットワーク」はいくつかの重要な役割を果たします。まず自身や組織の気づきや能力開発のため、そして何よりも変容における難しく、混乱しがちな時期において、自身の基盤を整え、変化への情熱を保ちながらも冷静に状況を見極める難問を支援することなどです。こうしたネットワークは、"実践コミュニティ"、"学習コミュニティ"、あるいは"メンターネットワーク"などの形態をとります。

社内や地域内で変革に行き詰まったとき、そのシステムの外や連結点にいるネットワークリーダーたちの助けを借りて、変化を推進する同僚や先人、初心を忘れない若手たちとの交流が多くのヒントをもたらすことでしょう。変化を実現するための方法論は数多くあります。それぞれの変化推進リーダーにとっては初めてのチャレンジであっても、広く社会を見ればすでに多くの知見、失敗と学習があふれています。こうした外部リソースの存在を知り、つながり、活用するためには、こうしたネットワークに自分の時間の一部を投資していくことが有用です。

また、こうしたネットワークの有用性は、知識や技能的な面よりも、精神的な面でより価値を出すことでしょう。メンターあるいは相互メンターと言える存在をどれくらい持てるかによって、システム外部のいわゆる"ベストプラクティス"に振り回されることなく、自身、自組織、自地域が真に求めることを見据えて、変えるべきを変え、守るべきを守る平常心を保つために欠かせません。

明確に階層を分けた公式の組織構造に比べて、しばしば非公式なネットワーク構造はともすると偶然に任せがちです。ご縁を大切にすることはどの時代にも有用でしょう。さらに、個人や組織がより明示的にネットワークの現状を評価し、自分自身が職場以外のどのような場に趣き、時間を使うか、どのような"つながり"を築いていくのかについて意識的に選択していくことはさらにその重要性を増していくと考えます。

●2020年代におけるチェンジ・エージェント社の役割

乱気流のように変化する社会経済システムの動向を、正確に予測したり、コントロールすることは不可能です。しかし、どのような変化のパターンが起こるかを予期し、最悪に備えると共に、よりよい変化創造を意図し、大きな社会経済システムの息づかいやステップのリズムを感じながら、自らの基軸を守りながら適応を続け、相互システムとして共進化していくことは可能と考えています。

チェンジ・エージェント社は、より一層、個人・組織・地域において望ましい変化を起こすためのざまざまな能力開発を支援していきます。とりわけ、目的や前提を問い直し、より多くの人にとっての善を求める個人や組織に寄り添って、変化を見立て、システムへの介入をデザインし、適応するための伴走を続けられたらと願っています。

また、私たち自身、日本と世界のそれぞれにある実践・学習ネットワークを通じて学び、また数多くのメンターたちに恵まれて、ここまで活動することができました。そして、2010年代、数多くのメンターたちが引退あるいは逝去されていきました。私たちはそうした先達たちからの学びを、「恩送り(pay forward)」として今の世代と未来の世代に返していくことでご恩に報いていたきいと考えています。

組織や地域で望ましい変化を志す皆様にとって、それぞれのチャレンジに適したネットワーク、メンター、同志たちにつなげ、また私たち自身も同志として変容を支援する役割を担えたら幸甚です。

2020年代の10年間、そしてその最初の年となる2020年も、どうぞよろしくお願いします。

(小田理一郎)

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