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Regime Shift

レジーム・シフトとは?

閾値を超えると、非線形的な性質によって、「それまでとはまったく異なる状態」に変わり、その後も元に戻ることなく、変わったあとの状態で安定してしまうことがあります。これを「レジーム・シフト」と呼びます。
(以上)『レジリエンスとは何かー何があっても折れないこころ、暮らし、地域、社会をつくる』枝廣淳子著(東洋経済新報社)より引用

生態系が一つの安定した状態(レジーム)から別の安定した状態へと急激に変わる現象を、システム思考では「レジーム・シフト」と呼びます。例えば、国内外の岩礁地帯で生物多様性を豊かにする海藻が減少し、そこから連鎖して依存する多くの生物が減少してしまう「磯焼け」をみてみましょう。海の生物多様性が崩れることで、生態系サービスは減少し、漁業や観光など海洋資源に依存する地域社会へ大きなダメージを与えています。とりわけ、磯焼けが進み一定の閾値を超えると自己強化型フィードバックによる悪循環が生じて、かつてケルプの森を中心に豊かだった海が無機質な岩礁だらけの「ウニの荒れ地」へと急激に変化します。(詳細記事:磯焼けと生態系再生をシステム思考で考える

下の図1のレジームAが今の状態で、レジームBが望ましくない状態だったとしましょう。望ましくない状態に落ち込んでいくときに働く力としては、環境の変化、政策の変化、競合や新規の参入の増加、顧客のニーズの変化の場合もあるでしょう。そのような外部からの力がかかっても、ある程度の間は、レジームA(今の状態)に収まります。ところが下の図のように、力がさらに掛かり、閾値(しきいち)に達すると急激に、別の世界へ転がり落ちて、レジームBへ、たとえば望ましくない状態に入っていくということが起こります。

図1regime01.png

レジームAにとどまるためには、閾値に近づいているのかどうか、また、システムをコントロールする変数は何で、いまどういう状態にあるかということを知る必要があります。

ところが下の図2(左)のように、外部からの強い力で、ボールの位置が閾値に近づくというだけではなくて、私たちが自分たちの構造を変えて、この谷がなくなった図2(右)のような状態をつくってしまうこともあります。谷の状態が変わってしまうと、ボールの位置はかわっていなかったとしても、閾値が近づいて、簡単にレジームBに落っこちてしまう状態になります。自分たちが予想しないような変化で、足元をすくわれるように、知らず知らずのあいだにティッピングポイントを越えるような状態が起こってしまう。レジームAにとどめようというフィードバックがなくなり消えてしまう状態です。これは、しばしば、多様性、冗長性といった重要なフィードバックが失われることによって起こります。

図2regime02.png

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