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システム思考入門(19) 「システム思考の実践(2)企業のレベル」

企業において、システム思考はどのように活用されているのでしょうか?

企業でのシステム思考には、さまざまな活用事例があります。古くは1950年代のアメリカの電機メーカーであるGEの事例がよく知られており、その後コンピューター、自動車、化学、エネルギー、流通など、あらゆる業界で活用されていきます。

初期のシステム思考の事例の多くは、特にビジネス上の戦略や方針の有効性について考えるものでした。たとえば、電機メーカーのGEでは、景気が上向きになると大量に従業員を雇用し、多大なコストをかけてトレーニングをする一方、景気が下向きになると、早期退職金などを積んで大量に解雇しなくてはならず、それをサイクルのように繰り返していることが人事政策上の大きな課題になっていました。

いわゆる景気変動といわれるこのサイクルは、経済の一般的な現象として多くの業界、企業が経験する問題です。しかし、システム思考による分析を行ったところ、GEのとっていた事業戦略は、景気循環の変動を吸収するどころか、むしろ変動をかえって悪化させる方針であることがわかりました。問題は外部の一般的な問題ではなく、システムの内部にあったのです。

その問題点を一言で言えば、組織の中で誰一人ビジネス・システムの全体像を把握していなかったことです。販売店や卸の政策から、物流の仕組み、GEでの生産計画の立案方法、在庫政策、人事政策などについての全体像をあわせ見たときに、好況時(注文の多いとき)ほど必要以上に生産し、不況時(注文の少ないとき)ほど少なめに生産してしまう構造を作り出していたのです。

自らの戦略や方針が問題を悪化させているとわかったものの、関係者にはどうすればよいか簡単にはわかりませんでした。そのため、このビジネス・システムの全体像を理解するために、システム・ダイナミクスに基づくシミュレーション・ゲームである「ビール・ゲーム」が開発されました。このシミュレーション・ゲームは、電機業界はもちろん、サプライ・チェーンにさまざまな関係者をもつあらゆる業界で活用されています。

ビジネス・システムのそれぞれの取引主体や部門が合理的な意思決定をしたとしても、全体で見ると自らの成果の悪化を招く―このような事態はGEに限らず、さまざまなビジネスに見られます。

1950年代、コンピューター業界の多くの会社は、業界全体の躍進にもかかわらず、多くの会社が伸び悩んでいました。伸び悩みを抱える企業の戦略をシステム思考で見たとき、成長を制約していたのは、ほかならぬ企業の投資方針そのものにあることがわかりました。当時はまだ一つのベンチャー企業であったDECは、このシステム思考の知見を得て、投資のタイミングを見直し、その後劇的な成長を遂げることができました。

また、このメルマガでもすでに紹介した自動車メーカーのGM(システム思考入門第5回)、化学メーカーのデュポン(システム思考入門第6回)を始め、大小さまざまな企業がシステム思考を導入することによって、部分最適ではなく全体最適につながる戦略や方針を策定して成功を収めています。マッキンゼー、ブーズ&アレン、プー&ロバーツなどコンサルティング業界も、システム思考を導入しました。

システム思考の活用は、効果的な事業戦略の立案や問題解決にとどまりません。特に、1990年代からは、「学習する組織」として、組織開発の手法として広く活用されはじめています。

「学習する組織」は、組織とそのメンバーが、共有する目的に向かって、全体像とつながりを理解し、コミュニケーションの質を高めることで、個人および集団として学習する意識と能力を高めた組織です。その高い学習能力ゆえに、環境変化の中でも、しなやかさを保ちながら、進化し続けることができるようになります。「変化の世紀」ともいえる21世紀においては、組織の学習能力こそが、あらゆる業界においての最大の競争力の源泉であるといっても過言ではないでしょう。

「学習する組織」に類する理論は、1970年代から学界などでよくとりあげられていました。システム思考の第一人者であるMITのピーター・センゲらは、システム思考を基盤として、組織学習、行動科学、コミュニケーションなどさまざまな分野での知見を取り込み、学習する組織の理論体系を構築します。そして、先見性のある企業と実践を繰り返し、プログラムのプロトタイプを完成しました。その実践の経験は1990年に『The Fifth Discipline(邦題:最強組織の法則)』としてまとめられています。

これを機に、フォード、インテル、BPなど欧米の主要な大企業が次々とシステム思考を実践していきます。たとえば、フォードのリンカーン・コンチネンタル部門では、「学習する組織」プログラムを導入することによって、めざましい成果を次々と生み出しています。廃止寸前の工場が「学習する組織」プログラムによって大変革し、世界中のフォードの中でももっとも優秀な工場のひとつに生まれ変わりました。また、開発が計画よりも遅れ続けていた研究開発部門は、新車開発のための開発期間を、計画よりも2割以上短い期間で開発できるようになります。また、開発期間短縮だけでなく、数多くのデザイン賞にも輝きます。

「学習する組織」は、よくある人材教育のプログラムとは大きく一線を画します。組織のシステムを劇的に改善する組織開発プログラムとして捉えることができます。システム思考をはじめとする学習する「領域」は、座学としての知識ではなく、日々実践すべき習慣、規律として位置づけられます。ですから、戦略部門や企画部門だけでなく、開発から生産、ロジスティクス、営業、サービスなどの事業にかかわるすべての部門を対象に展開することによって大きな効果を発揮します。さらに一歩踏み込んで、顧客や取引先などのステークホルダーと呼ばれる関係者を巻き込む展開も見られ始めています。

この新しい組織学習をより効果的に導入し広げるために、Society for Organizational Learning(SoL)という組織が1997年発足し、欧米の多くの企業がその会員となっています。最近のSoLから出された報告では、学習する組織などに代表されるシステム思考的なアプローチをとる企業の時価総額の伸び率は、世界の業界平均の2倍から4倍となっているとのことです。(私たちチェンジ・エージェントは、SoLの情報を日本語に翻訳して情報提供を行っていきます。)

日本では、日産自動車やリクルートがこの「学習する組織」のコンセプトやプログラムを、組織のさまざまなレベルで導入して、組織変革の成果を挙げています。私たちも、経営者対談や企業向け講演などで「学習する組織」を折りに触れて紹介していますが、とても大きな興味や関心が寄せられます。「今後、この学習する組織が、組織デザインのロールモデルになっていくだろう」――そのような予感を強く抱いています。



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