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ドネラ・メドウズが与えてくれること

今、スイスのジュネーブに来ています。故ドネラ・メドウズとデニス・メドウズが31年前に設立した、バラトン・グループの運営委員会に出席し、毎年ハンガリー湖畔で行うバラトン合宿の運営方針を決めるためです。

今回紹介したドネラさんのエッセイは、バラトン・グループのメンバーの一人が年初に世界のメンバーに送り、それを友人の楠宏太郎さんに紹介したら、すぐに和訳をしてくれました。そのおかげで、こうしてみなさんにお届けできました。

偉大なシステム思考家は、外に現れるシステムだけでなく、私たちの内面にあるシステムであるメンタル・モデルまで、深く突き刺さるような洞察を投げかけます。ドネラさんも「グローバル市民」というエッセイを通じて数多くの卓越した洞察を人々に与え続けました。

政治であれ、経済であれ、社会であれ、会社であれ、学校であれ、身近な人間関係であれ、うまくいかないシステムは概して、私たちのものの見方、考え方がその構造を創り出しています。私たち一人ひとりの思考の根本的前提であるメンタル・モデルや、共同体としてもつ文化・風土のレベルの変容が伴わないと、どんな改革も結局問題のモグラ叩きに終始し、同じ問題が繰り返し起こることが多くあります。

こうした前提や風土の変容は、私たちの職場の風土改革の例からもわかるように、生半可なことでは起こりません。メンタル・モデルは、そもそもその人やその集団に必要とされて形成されます。過去の成功体験や慣習として私たちの心の奥底にあって、そこを見ようとすることすら拒む人も多いのです。無理に他人のメンタル・モデルを変えようとしても、強い抵抗に遭うのが関の山でしょう。

その難しさ故に、人間がメンタル・モデルを変えることに悲観的な思想家もいます。また、多くの人が、そんな理不尽なシステムを憎み、闘いを挑み、あるいはあきらめの境地に達します。リーダーとフォロワー、お上と大衆、体制側と非体制側、といったように、しばしば二極化し、仮想敵を描き出し、対立の構造を語ることで、私たちは自分たちのメンタル・モデルを強化します。

しかし、ドネラさんは、そうした世の中の風潮にあっても、人の可能性を信じ、絶望の中にも希望のタネを見出すことを自ら実践しながらその仲間を増やしていきました。

ドネラさんが今回紹介したエッセイを執筆したのは、まだ「鉄のカーテン」が厳然と心に存在した80年代のことでした。当時西側諸国の人でも入国しやすかったハンガリーに開催地を選び、東西のシステム科学者や思考家を集め、6日間の合宿を通じて、自らの心を開き、「相手」側の言葉に耳を傾ける場を創り続けたのです。

やがてベルリンの壁が崩壊し、私たちの心にあった東西の境界が消え去っていきました。もちろん、ドネラさんやバラトン合宿がそれを起こしたわけではなく、崩壊は壁の東西の国々の人たちが起こしたものです。「空気に支配された多数意見」を脱却し、希望を抱き続けた少数の市民たちの力が、やがて大きな意思となって変化につながっていきました。

こうした問題は、国際社会での紛争や対立で起こるばかりではありません。私たちの心の中にあるメンタルモデルは、システムのさまざまなレベルで相似形をつくると言います。家庭や、友人や、ご近所や、学校や職場や、身近なところでもさまざまな境界線が引かれていないでしょうか。

私たちは何かしら線を引くことで気が楽になるものです。しかし、もしかしたら、いつの間にか不要な線が私たちの回りにたくさんあるかもしれません。私たちが憤り、不安に感じている問題はその境界線によって助長され、再生産されているかもしれません。もし心の境界線を消し、あるいは境界の範囲を広げることができたら、思っていたのとは違う現実が見えてきたりするものです。

ドネラさんは、現実を直視し、寄り添いながら、心の壁を取り払った奥底に、私たちは希望を見出すことができるのだと語りかけてくれているように思います。私たちもできるところから、日本で、世界で、心の交流を広げ、希望を見出すお手伝いをしていきたいと思っています。

小田理一郎・枝廣淳子

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