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システム思考の発展

(『世界はシステムで動く』の付録、小田理一郎解説の冒頭部分を紹介します)

システム・ダイナミクス学派の誕生


「システム思考」と一言でいっても、実は数多くの学派や流派がある。古くは、仏教や中国古典に見られる東洋思想、あるいは、ギリシャ文明やメソポタミア文明の賢人たちの哲学や知恵はたいていシステム的な考え方に基づくものである。近代では、工学分野や生物学分野でシステム的な考え方が発展し、生物学者のベルタランフィがそれらを統合して一般システム理論を築き、1950年代から社会科学分野にもシステム思考の学派が発展していく。

数多くのシステム思考がある中で、どのシステム思考も人や社会や自然を徹底的に観察して見いだした法則であるゆえに共通点も多いが、異なる点もある。また、すべてのシステム思考の流派が実用的とは限らず、活用の目的や領域にもよるであろう。ドネラ・メドウズは、システム・ダイナミクス学派に属する。数あるシステム思考の中でシステム・ダイナミクス学派は、ビジネスや公共政策、家庭から地域、組織、社会での問題解決、国際的な課題や学際的な課題への応用など実践的な分野で特に有用性が広く認められているシステム思考の一つである。

システム・ダイナミクス学派は、1950年代前半にMITがハーバード大学のビジネススクールに対抗できる新しいビジネススクールを築くために、輝かしい実績をもつエンジニアのジェイ・フォレスターを招聴したことに始まる。ビジネスの成長や衰退、景気や在庫の循環、問題解決の成否など、ビジネスで起こるさまざまな現象について、底流を流れるパターンやそのパターンを形作る構造をシステム的に見ることによって、ビジネスを成功させるための非直感的な洞察を次々と積み上げていった。ジェイ・フォレスターや彼の教え子たちはコンピュータ業界をはじめとするハイテク産業の経営者たちにアドバイスし、その隆盛を支えた。主にビジネス向けに活用されたこの学派は当初「インダストリアル・ダイナミクス」と呼ばれていた。

1960年代から、この学派はビジネスの枠組みを超えて、社会問題、経済問題、地球環境問題などの課題に取り組むようになっていった。ビジネスや企業組織がシステムなら、社会や経済や環境もまたシステムである。1970年、ジェイ・フォレスターの本を読んで学派に加わったドネラ・メドウズは、「システム・ダイナミクス」と呼ぶことを提案し、ジェイ・フォレスターがそれを受け入れ、以来そう呼ばれるようになった。

「成長の限界」の衝撃


ドネラ・メドウズは、人口と経済の成長が工業、農業、資源、環境などとどのように相互作用するかをモデル化するワールド・モデル3プロジェクトに参画し、特に人口モデルの精綴化に大いに貢献した。このプロジェクトの研究成果が、ローマクラブによって発表された「成長の限界」レポートである。ドネラ・メドウズはその卓越したコミュニケーション能力によって、レポートのメッセージをわかりやすく解説し、またその後37カ国で1200万部以上出版された同名著作シリーズの主著者となった。

このレポートでは、人口や経済の幾何級数的成長がそのまま続けば、21世紀半ばまでに食料、資源、環境汚染問題などの次々と現れる層状の限界へと対応に追われ、成長は反転して崩壊を迎えることを警告すると同時に、持続可能な発展を遂げれば崩壊を避けることは可能であることを訴えた。最近の研究から、その後40年の軌跡はやがて崩壊にいたるベースシナリオの軌跡をたどっていることが確認されている。また、当時は概念的な資源量や環境の吸収能力の限界が示されていたが、昨今ではこの分野の研究も進み、マティース・ワケナゲルらの「エコロジカル・フットプリント」やヨハン・ロックストロームらの「プラネタリー・バウンダリー」などを通じて、現在の人間活動による活動量と限界の関係がより具体的に明らかになっている。

システム・ダイナミクス学派の当初の発展は、創始者の深い洞察による面が多かったが、そこに学術的、建設的に批評する文化を植え付け、その方法論を体系的に築いたのもドネラ・メドウズの功績だ。経済や経営の意思決定の際の分析に標準的に使われるのは、たいてい、数量経済学モデル、最適化モデル、インプット-アウトプット・モデルとシステム・ダイナミクス・モデルのいずれかである。ドネラ・メドウズは、これらの方法論のメリットやデメリットを鋭く批評し、定量化モデルの活用に関するさまざまな教訓を残し、この本でも数多く紹介している。世界に名だたる組織の官僚たちが表面的な、目に見えている数字だけを取り上げて、コインの裏返しのような議論に終始している状況に業を煮やし、思わず白板に書き出したのが、「システムの12のレバレッジ・ポイント」(第6章)である。世界の多くのシステム思考家の間で指南書として親しまれている。


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