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『マンガでやさしくわかる学習する組織』(8刷)ご好評いただいております。

2020年05月21日

おかげさまでお陰様でご好評いただき8刷となりました。
2017年6月に発売後
amazonランキング1位(マネジメント・人材管理カテゴリ)を獲得しました。

あらためて多くの方に読んでいただいていること、うれしく思っております。

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新著『マンガでやさしくわかる学習する組織』の電子書籍版が2017年7月7日にリリースされました。

『マンガでやさしくわかる学習する組織』について、あらすじを簡単にご紹介させていただきます。

ストーリー紹介

サプライヤーの児童労働問題がきっかけとなって工場の風土改革に関わることとなった主人公の永倉由香が、チームのやる気と潜在能力を引き出し、自身と仲間の成長を通じて会社の危機を乗り越えようとする奮闘の物語です。

メーカーの本社に勤務する由香は、ランニングとビールが好きな若手社員。しかし、工場メンバーたちから本社や由香の行動への厳しい反応を受けて悩んでいました。たまたま組織改革に関わるワークショップで知り合った農家の近藤晋から、「学習する組織」の手ほどきを受けます。今までの自分の考え方と違うアプローチに、由香は大いに揺れ、四苦八苦しながらも、学びを深めていきます。果たして、その結末は、、、

センゲのオリジナル著書にも登場する「ビールゲーム」を始め、「学習する組織(ラーニング・オーガニゼーション)」の3本柱である「複雑性の理解」「共創的な対話の展開」「志の育成」の基本的な考え方と、「システム原型」「推論のはしご」「ビジョンと現実の構造的対立」などの基礎ツールを紹介しています。

マンガ1.png工場のメンバーに、はじめて主人公の由香が会いに行く一コマ。

マンガ4.png出来事の奥に潜む「パターン」「構造」「メンタル・モデル」をつかむシステム思考のアプローチを、状況に合わせて考える主人公の由香。

本書の役割

経営やリーダーシップに関する概念をマンガで紹介するアプローチは、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(2009年)以来、すっかり主流になっているそうです。今回の新著の字数は原著の2割ほど、字も大きめなので手軽さはありますが、学習する組織のもつ本来の幅広さ、奥深さは表現しきれるものではありません。

一方、マンガになっていることで、チームや関係性の課題で重要性をもつ、非言語コミュニケーションや起こっていることの文脈が、文章に比べると伝わりやすい側面もあるでしょう。職場シーンにおいて登場人物たちが相互作用するマンガの場面に置くことで、「この難しそうな概念はそういうことなんだ」という気づきにつながればと願っています。とはいえ、その文脈や登場人物たちの解釈や行動が限定されるために、「それだけではないんじゃない?」とか「違うよ」といった反応もあることでしょう。また、そうした疑問から自分ならどう考える、どうすると探求いただいてはいかがでしょうか。

学習する組織のツールについて抽象的に学び論ずるのは効果的ではありません。具体的な場面でどのように考え、行動するかという文脈があってはじめて、学習する組織の実践が始まります。国内企業の一つの事例として、学習する組織を学ぶツールとして、とりわけ、組織開発や人材育成などの分野の専門的な知識のない方に、イメージを膨らましていただくツールとして、この本を手に取っていただけたらうれしく思います。

そして、組織やリーダーシップに関心を持つ方には、是非「学習する組織」を知っていただきたいです。グローバル化、多様化した時代に合って、海外では組織のあり方もリーダーシップのあり方も大きく変化しています。その時代にあって注目されている学習する組織はMITのピーター・センゲによって提唱されましたが、ものごとのつながりや本質を考えるという意味において、本来、日本人にあっている手法と感じています。この手法の実践を重ねて、日本国内ではもちろん、世界で活躍するためにも活用いただきけたらと願っています。

もしマンガはどうしても抵抗があると言われる向きには、『「学習する組織」入門』がお勧めです。こちらの本の文字量は、原著の半分程度ですが、実践者向けに事例や演習を豊富に盛り込んでいます。とりわけ、人材育成、リーダーシップ開発、組織開発などの実務家や、組織やチームをマネジメントする立場のリーダーの方には、演習やその解説が実践のヒントになればと願っています。

そして、どちらの本でも語り尽くせない、ピーター・センゲの奥深い世界観をきちんと学びたいという方は、是非原著『学習する組織』を読んでいただけたらと思います。世界で250万部以上が読まれるベストセラーであり、組織開発やリーダーシップ開発の「バイブル」と評されながらも584ページ40万字以上ある分厚い本のため、持ち歩くのが大変でした。今回のうれしいニュースは、電子版が6月21日より販売となりますので、お手持ちのタブレット、スマホ、PCで、いつでも気になるときに本を開いていただきやすくなります。読み返す都度、新たな気づきを促してくれるセンゲの原著を是非味わってみてください。

言わば、学習する組織を学ぶ「ホップ、ステップ、ジャンプ」の3部構成をご紹介させていただきました。どの本が、ご自身やチームにぴったりか、書店や図書館で手に取って見比べてみていただけたらうれしく思います。

◆7月7日(売)電子書籍版(amazon)/書籍も好評発売中(amazon)
『マンガでやさしくわかる学習する組織』(日本能率協会マネジメントセンター)
著:小田理一郎

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初心者の方にも「学習する組織」についてのイメージを手軽に知ってもらえるマンガ形式の本です。「学習する組織」の3本柱の考え方とツールについて学ぶきっかけとなることを意図し、その世界観を感じていただけるように心がけました。
【マネジャー、社会人一般向け約300ページ】

以下、出版者からの許可を得て、「はじめに」「おわりに」をご紹介します。

はじめに

本書の狙いは、マサチューセッツ工科大学スローン・ビジネススクールの上級講師であるピーター・センゲが提唱した「学習する組織」の理論、プロセス、ツールを、はじめて学ぶ人にも分かりやすく紹介することです。

学習する組織は、組織と個人が目的を効果的に達成するための集団としての意識と能力を高め続けることによって、
・社員一人ひとりのやる気と潜在的な力を引き出し、成長を促す
・職場をより働きゃすく生産的な場にする
・会社が社内外の人たちにとって高い価値を創り出し、必要とされ続ける
ことを目指します。

その鍵となるのが、社員同士あるいは社員と会社の相互間で生じる会話や行動などの底流にある組織プロセスに着目し、その組織プロセスが健全、生産的、そして相互に発展的なものとなるような構造上の変容を促すことにあります。

組織プロセスや構造は、目に見えにくいものであり、そのことについて効果的に話したり、行動したりすることは容易ではありません。

また、ピラミッド型組織での上意下達を重視するアプローチや、論理的思考などの「論理的」と標榜する諸アプローチでは、それをうまく噛み砕いたり、活用したりすることができないために、組織プロセスや構造を変えることについて軽視し、抵抗することすら起こります。

しかし、一見すると難しそうな学習する組織のアプローチは、その本質においては私たち一人ひとりが内に秘める智慧へとつながり、その潜在的な力を解放するものです。だからこそ、『学習する組織』はピーター・セ ンゲが1 9 9 0 年に発刊して以来、「21 世紀の経営を変える名著」のひとっとして、世界の数多くの経営者、現場リーダー、そして組織変革を担う担当者たちのバイブルとして読まれ続けてきました。

筆者は、この学習する組織のアプローチが、日本の企業と職場、そしてそこに働く人たち一人ひとりにとっても、きっと役に立つと考え、その普及に努め、手応えを感じています。大きく変わる事業環境の中で、人と組織がともにステップアップしていくために、すでに自分たちの内にある智慧や潜在能力を掘り起こし、発展させ、時代の変化とともに進化し続けることを助けてくれると信じています。

本書では、その学習する組織を、分かりやすく感じていただくために、マンガで事例を紹介し、その解説を行うアプローチをとっています。マンガでは、組織変革の必要性に追られてさまざまな困難に直面する主人公と周囲の人たちが、どのように学習する組織の理論やツールを採り入れ、活かしていくか、また、それによって人やチームがどのように変化していくかというストーリーを紹介します。解説では、そのストーリーに見られる組織プロセスおよび構造上の見立てと働きかけ方、そしてツールの使い方と注意点についてひも解くように心がけました。紙面の関係上、基礎ツールに絞った入門的な内容となっていますが、より深く学びたい方のために巻末に参考文献のリストを用意しています。

読み進めるにあたって、ぜひ自分自身のキャリアや職場の人間関係、チームの能力などを意識して、組織プロセス、構造、働きかけ方について自身の経験とどのような類似点や相違点があるか、そこから何が学べるか、などを内省してみてください。アプローチが伝統的な職業訓練や研修で教わるものとはやや異なるゆえに、違和感を持たれるかもしれません。そんなときは、なぜそのように思うのか前提を書き出してみるとよいでしょう。前提を明らかにして選択すること自体が、学習する組織の実践ポイントでもあります。では、主人公の永倉と一緒に、学びの旅へご一緒ください。

おわりに

組織の形が時代や環境によって変わってきたように、学習する組織も創造と再創造を重ねてひとつの形に留まることはありません。それは、組織に集まる人たちの多様生と内にある源を基盤にしながら、時代の要請や社会環境に適応して使命、戦略、行動を練り直す不易流行の営みによって形づくられます。

この営み---- 健全、生産的で社会の要請に応え続けるために必要なのが、本書で紹介する深い学習の慣行であり、その実現を支える3つの学習能力を中核とした組織戦略の構造です。組織のビジョンに参画あるいはコミットメントする人たちは、その取り組みを通じて自分を磨き、自己の潜在価値を広げ、発揮するための、道を歩みます。組織での仕事が人の成長を促し、組織はその人たちによって成り立つという相互発展を繰り広げます。

学習の道の要は、内にある受け身の姿勢をあらため、創造するあり方を身につけることです。そのための基本動作は、体験を振り返り、システムの全体像を広く深く感じることから始まり、自らの姿勢や行動、そして未来の可能性に気づき、前向きに「選ぶ」習慣を築きます。前向きに選ぶということは、状況のために仕方なく選ぶのではなく、自ら進んで責任を引き受けることです。

生活や組織のしがらみの中で、しばしば私たちは、選べないと感じることもあるでしょう。たとえば、家で黙々と仕事をしているとき、家族が自分に何かを訴えかけてきたとします。そのとき、仕方なく家族に接したり、逆に家族を追い返して仕方なく仕事を続けることはないでしょうか。同様のことは、職場、顧客、取引先の人たちとの間でも起こり得ます。

そもそも、「そういった人たちとの関係を選んだ覚えはない」と、思うことも数多くあるかもしれません。だからと言って、仕方なく何かをするのは必然でしょうか。過去は選べずとも、未来に関しては何らかの選択はあるものです。その選択をあきらめたら、その可能性は確実になくなります。そして、あきらめることに慣れてしまうと、やがて選択の余地のない、仕方ないだけの人生が待つことになります。

一方で、誰もが仕方ないと思えるような状況ですら、捉え方を変えることで、未来を創造することが可能です。あきらめに屈せず、同時に精神論にも頼らず、現実の状況をありのままに中立的に見ることで、新たな可能性を切り拓きます。

たとえば、忙しいときに声をかけられたとしても、「今は忙しいので、あと〇分待ってもらえますか」と答えて、タイミングを変えるという選択もあるでしょう。あるいは、相手の状況が火急なもので大事だと考えたら、今行つてぃることを後回しにして目の前の人に全力で接するという選択もあるかもしれません。微妙な違いですが、仕方なく受け身で行う姿勢と違い、自ら前向きな意味づけが可能なのです。仮に失うものがあったとしても、前向きな選択で得られるものも多いでしょう。

一歩引いて、どのような環境で、どのような計画・約束をするか、どれほどの柔軟性を持つかを認識することによって、選択は広がります。さらに、自分が仕事の意義や目的を明確にし、どのような仕事・職場を選ぶのか、その選択のためにどんなキャリアパスを選ぶのかなどを自ら考え、設計すれば、選択肢はさらに広がります。何よりも、「制約」をあなたの人生の邪魔者と捉えるのではなく、あなたの力を究揮する舞台として捉えれば、受け身ではない、創造的な取り組みの可能性が広がります。学習する組織を動かすのは、こうした創造のエネルギーにほかなりません。

個人にとって、職場は稼ぎを得る場である以上に、自身のキャリアで必要な経験、人間関係、仕事のためのさまざまな能力を獲得できる場であり、さらには、職場での要請に重ねて、自身の天性や才能を発揮し、磨き得る場でもあります。さらに志を重ねられる人たちと一緒に仕事をすることを通じて、より大きな仕事を成し遂げることで、自らの志を実現できる可能性はさらに広がるでしょう。

会社の立場から見たとき、社員から労働を得てその対価を払うだけの契約関係ならば、社員たちからは何ら創造性のない、追従のエネルギーしか得ることはできないでしょう。

一方で、社会の中で価値を創造するというやりがいに満ちた仕事を、ともに実現する仲間として社員を迎え入れ、社内外の人たちと協力し、磨き合っていくコミュニティであれば、社員が潜在能力を見出し、発揮し、社員と会社の相互互恵的な関係が築かれます。このような組織へと変容していくには、組織とそこに参画するメンバーの双方が、学習のための機会と場をつくり、意識と能力を高め続けるプロセスが不可欠です。

ピーター・セ ンゲは、システム思考、組織論、認知行動科学などの大家であると同時に、東洋思想を学び、人、社会、自然に対する深い理解と慈愛をもとにして、学習する組織実践の指導を重ねてきました。本書は、学習する組織の実践体系の端緒を紹介するに過ぎませんが、その根底にある世界観は日本人の私たちが本来大切にしてきたことと重なると思っています。

和魂洋才として、私たちの道を歩む精神と西洋での社会テクノロジーを重ねてさらに実践手法を学ぶのもよいですし、あるいは解発を受けて日本の智慧を再発見し、自分たち固有の実践手法を伝承していくのもよいでしょう。目本で学習する組織を実践することは、日本の職場をより健全で効果の高い創造の場とするだけでなく、私たち日本人の持つ、人や自然を大切にする精神に根づいた、高度な知識創造の智慧と実践を世界に広げていける機会だと信じています。

本書が、読者の皆様にとって、働く人たちと組織の双方が潜在的可能性を開き、相互的な発展をもたらすきっかけ、後押しとなれば幸いです。

学習する組織3部作の情報まとめ

★ピーター・センゲ著、枝廣淳子・小田理一郎・中小路佳代子訳
『学習する組織~システム思考で未来を創造する』(英治出版、2011年、584ページ)●書籍販売中 
●電子版発売中

☆小田理一郎著『「学習する組織」入門~自分・チーム・会社が変わる 持続的
成長の技術と実践』(英治出版、2017年、400ページ)
○書籍6月21日販売 ※6月14日より一部書店先行販売
○電子版販7月7日販売開始

☆小田理一郎著・松尾 画『マンガでやさしくわかる学習する組織』(日本能率
協会マネジメントセンター、2017年、296ページ)
○書籍6月24日販売開始
○電子版7月7月販売開始

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