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『社会変革のためのシステム思考実践ガイド』監訳者による解説(2)「システム的に考える実践上の10のコツ」

システム思考の新たな実践ガイドの翻訳を手がけました。ソーシャルセクターで注目を集める「コレクティブ・インパクト」の実践書となっています。『社会変革のためのシステム思考実践ガイドーー共に解決策を見いだし、コレクティブ・インパクトを創造する』(11月16日発売)

著者ディヴィッド・ストローが関わった豊富な社会変革事例をもとに、システム思考の実務的なプロセスをわかりやすく解説しています。本書の「監訳者による解説」を出版社からの許可得て出版に先立って掲載します。

(1)「社会変革とシステム思考」はこちらから

システム的に考える実践上の10のコツ

システム思考は、「なぜシステムはその挙動を示すのか」、そのシステムの構造を理解し、また「システムの挙動を望ましいものにするために、どのように構造へ介入すればよいか」について探求するプロセスです。

本書では第3章、第4章でその基本を紹介し、また、第2部において、社会システムを代表する関係者たちとどのようにシステム的に考えていくかというプロセスについて説明しています。これから、関係者たちと共同でシステム的に考えるための実践上の一〇のポイントをご紹介します。

なお、システム思考の実践プロセスについてより詳細に関心のある方には、初学者であれば『なぜあの人の解決策はうまくいくのか』あるいは『「学習する組織」入門』、より深く学ぶにはジョン・スターマン著『システム思考』をお勧めします。

❶課題は、焦点を絞る問いの形で設定する

シテム思考と言えば、「木だけでなく森も見る」と表現されるように、全体像を理解しようとします。教育問題、環境問題、貧困問題、少子高齢化問題、過疎問題など、漠然とテーマだけを掲げ、たくさんの変数を書き出し、また、その変数間の因果関係をつなごうとすると、散々議論したあげくにスパゲッティのような図ができあがります。しかし、解決策を導き出すうえで「スパゲッティ図」はほとんど役に立ちません。

ループ図を描く前に、必ずシステム図を描こうとする目的、システム的に考えようとしている課題を明らかにします。課題とは、達成したい目的・目標や解決したい問題に関する重要な論点であり、さらに、答えを見いだすことによって大きな前進が期待できるような「問い」のことを指します。

本書では、「焦点を絞る問い」として紹介されていますが、「なぜ善意にもかかわらず、目標が達成されていないか」「なぜ努力にもかかわらず、結果が出ていないのか」といった、「なぜ」を深掘りする問いは有効です。

また、本書では示されていませんが、期限をつけた目標レベルを設定するのも有効です。「いかにして三年以内に全ての児童・生徒が自主的に学ぶ文化を築くか?」「いかにして2030年までにA市で発生する温室効果ガス排出量を30%削減するか?」「いかにして10年以内に人口の減少を反転させるか?」など、具体的な目標設定と時間軸があることによって、システムの中で見るべきポイントが明確に浮き上がってきます。

課題の設定は,大海原で海底にアンカーを打ち込むような役割をします。システム図を描くときに思考が拡散してどんどん範囲が広がっていったときに、課題に照らし合わせてそうした変数やつながりを考えるのが妥当かどうか、問い直すようにしましょう。もし課題の問いから横道にそれていたら、アンカーのあるところへ戻ります。しかし、もし多くの人が、そもそも課題の設定が違っていたと理解したならば、課題を書き直し、新しいアンカーを打ち直してもよいでしょう。

❷システム図に取りかかる前に、時系列変化パターングラフを用意する

システム図を描くプロセスは、課題として設定した問いへの答えを導くためですが、できあがったものを見ても、抽象的な表現に留まっているのではないかと思われるかもしれません。具体的にシステム図は何を説明するのか、あるいは、どこまで描けば十分描けたことになるのでしょうか?

もしシステム原型のテンプレートに当てはめるレベルを超えて、ループ図、ストック&フロー図やシミュレーションモデルを築く場合、実践家が必ず行うことは「時系列変化パターングラフ」を描くことです。時系列変化パターングラフは、横軸には十分遡った過去から目標を達成したいと考える未来までの時間軸を設定し、縦軸にはシステムの重要な指標を設定して、折れ線グラフを描きます。システムの重要な指標とは、目標として達成したい短期・中期・長期の成果(アウトカム)、組織活動への投入・活動・産出の量や質などです。過去から現在は今まで実際に起こったパターンを、未来に関してはなりゆきパターンに望ましいパターンを加えるなど、複数のシナリオで描くとよいでしょう。

私たちは、投入、活動(アクティビティ)、産出(アウトプット)、成果(アウトカム)、インパクトの間で多少のリードタイムの遅れがあっても線形に進むとイメージしがちです。しかし、現実のシステムはもっと複雑で線形ではないことがしばしばです。例えば図2(本書343頁参照)のグラフのように、実際にパターンを描いてみると、短期的には投入に対してプラスの成果を示しても、ある時点からマイナスの成果を示している、という洞察を得られることもあります。

財務や生産などデータが存在する指標ではデータを活用する一方で、データが一部しかなかったり、まったく存在しない指標では参加者の主観的な評価を集めてそのバラツキや差異について話し合ってみてもよいでしょう。「動機付け」や「帰属意識」など定性的な指標であっても、参加者が重要だと考えていることはグラフにしましょう。多様な関係者が集まっている場合では、それぞれの人が気になる指標についてグラフを描いてストーリーを語ってもよいでしょう。グラフの動きに緩急の変化があるときや反転するときに何が起こっているか、平時だけでは見えないさまざまなシステムのストーリーが現れてくるでしょう。ドネラ・メドウズ曰く、「システムのビートを白日のもとにさらす」のです。システム図が完成したかの目安は、時系列変化パターングラフに描かれた「今まで」のパターンと「なりゆき」のパターンを説明できているかどうかを基準にします。もし自己強化型ループやバランス型ループ、インフローとアウトフローの組み合わせが、パターンに現れる動態(ダイナミックス)を説明しきっていればそれ以上無理に広げる必要はありません。

❸「正しい」図を描こうとするのではなく、「役に立つ」図を描く

先ほどシステム図完成の目安を述べましたが、そこに描かれた変数やそのつながり、あるいはループに関して、本当に正しいのかと悩むこともあるでしょう。もちろん妥当性や根拠は必要です。工場の生産システムの問題やビジネス向けの部品設計など、比較的閉じられた、複雑性や不確実性の少ないシステムでは、「正しい答え」も存在するでしょう。そうした課題については、モデルを定量化し、統計的な分析などを加えて、過去のパターンを十分に再現し、堅牢性の高いモデルを築くことができるかもしれません。しかし、社会システムの複雑な課題においては、「正しさ」や「正解」にこだわりすぎることによって、課題解決がかえって難しくなることもありえます。そもそも、描き出されたモデルは、世の中をある視点から単純化したものに過ぎません。統計学の大家ジョージ・ボックスは、「すべてのモデルは間違っている。一部のモデルは役に立つ」という格言を残しました。意見の食い違いが見られるときには、それぞれ自分が正しいと主張する人たちがいたとしましょう。システムではどちらも正しい可能性があり、それでも、自分以外の意見を間違いだと言い張る場合には、部分しか見てない可能性があります。その大きな理由の一つは、何が正しいかについては、そのシステムの境界と目的をどのように定義するかによって異なるからです。何かを「正しい」と主張する際、その背景には正しさの判断基準となる目的、前提、境界が存在します。さまざまな価値観を持つ人たちで構成された社会の中では、それぞれが見ている立場によって目的、前提、境界が異なり、さらに何が望ましい行動かを判断するにあたっての価値観や基準が異なるものです。このような違いに無自覚のまま自分の主張や解決策にこだわってしまうと、せっかくの協働の機会を逃してしまうことにもなりかねません。「正しいか」ではなく、「役立つか」という視点でモデル化に取り組めば、気づきや洞察、新たな問いが生まれやすくなります。そして、人々が自分たちの前提を振り返り、目的達成に向けて今までにはない探求や思考実験を行いだしたら、それは「役立っている」ことの証左です。そのため、本書でも強調されているように、できるだけ異なった視点や意見を持つ人たちを集めることが重要になります。システム図を描き始める初期段階では、できるだけ多くの変数や因果関係の仮説を出せたほうが後々役立ちます。このとき、その変数は関係ない、その因果関係は間違っているといった議論にならないように注意しましょう。できるだけさまざまな見方を仮説として受け容れて、それを俯瞰しながらどのループや経路のダイナミクスが支配的かを、過去、現在、未来などいくつかのフェーズに分けて整理することで、役に立つ洞察が現れやすくなります。また、それでもより整ったシステム図がほしいという場合には、システム思考の専門知識をもった人たちに後日整理を任せることにしてもよいでしょう。

❹関係者たちで一緒に描くだけではなく、一緒に俯瞰して振り返る

システム図を描き上げたら、すぐに解決策を見出す議論に進みたいという誘惑に駆られるかもしれません。それでも一度立ち止まって、作成したシステム図を参加者全員で俯瞰して、内省・対話とはせず、ある程度描いた段階で振り返りの時間を設けるとよいでしょう。利害関係者が集まる時間が限られているのであれば、持ち時間をシステム図作成だけに使い切るこをする時間を設けるのが有意義です。そして、本質的な洞察や問いをできるだけ多く出しましょう。

うまく描けていてもいなくても、できあがったシステム図はそこに集まった関係者たちのメンタル・モデルを反映したものです。出てきた変数や関係性には偏りがないでしょうか?見逃している領域はないでしょうか?

もしかしたら、その段階で初めてその場に招集すべきだった関係者の存在に気づくこともあるかもしれません。

システム図のもっとも有用なポイントは、その中にいる当事者がどのような環境下にあるために、ある意思決定や行動をとり続けるのか、という洞察を得ることです。情報フィードバックの欠如、遅れ、ゆがみなど、システム図の中にその洞察がすでに現れているかもしれませんし、あるいは、行動をとる当事者の内面のメンタル・モデルに由来することもあるでしょう。他者の立場で共感的にシステム図をたどると共に、自分自身の行動にも目を向けましょう。

❺構造のツボ(レバレッジ・ポイント)を見出す「公式」や「魔法の杖」はない

小さなリソースで大きな成果を得やすい場所、すなわち「構造のツボ(レバレッジ・ポイント)」とはなんとも魅力的な概念です。しかし、システム図が描けたからといって、何が構造のツボであるかを導出する方程式があるわけではありません。また、仮に見つけたとしても、システム・ダイナミクスの創始者ジェイ・フォレスター曰く、ほとんどの人は、構造のツボ(レバレッジ・ポイント)を反対の方向に押してしまうこともしばしばあるそうです。

システム思考の先達たちが言うには、結局問題に取りかかる当事者たちが、一緒に頭に汗をかいて、探求し、見出していくものだということです。ちょっとがっかりする方もいらっしゃるかもしれませんが、重要な洞察を得るための近道はないのです。しかしながら、どのように探求すればよいか、先人たちが残したヒントも存在します。構造のツボ(レバレッジ・ポイント)の探し方について、特にシステム原型の罠にはまっている場合の抜け出し方は詳細に本書に書かれています。それ以外にも要点をついた説明がありますが、もっと学びたいという方には「レバレッジ・ポイントを見出す場所」について記した、ドネラ・メドウズ著『世界はシステムで動く』第6章を参考にすることをお勧めします。メドウズは、構造のツボ(レバレッジ・ポイント)を探す12の手がかりを示しています。

「レバレッジ」というと、物理的な「てこの作用」や、財務上のレバレッジなどを思い浮かべるかもしれませんが、システム思考、とりわけ社会問題におけるレバレッジのほとんどは、つながり、波及、循環、蓄積など、要素同士の作用です。具体的に構造のツボ(レバレッジ・ポイント)を探る際は、今まで行われているどんな働きかけが、システムが機能するためのさまざまな条件を損ない、関係者たちの力を奪っているのか、逆にどんな働きかけが、システムが成果を発揮するための最適な条件を整え、関係者たちを力づけているのかを探求します。また、複雑な社会課題においては、どれか一つだけの要素や構造のツボ(レバレッジ・ポイント)に働きかけるだけではうまくいきません。全体的に良い循環が生まれるような、複数の働きかけをデザインしていくことが大切です。さらに、それらの中で優先順位付けを行うのではなく、どのような順序(短期、中期、長期など)で行うべきかを検討します。

❻打ち手に詰まるときには「クライアント」の範囲を広げる

システム図の描き始めに変数を列挙するとき、どれくらいの粒度で出せばよいか、という疑問がよく生まれます。全体的には、一般的な要因分析に比べてやや粗めに始め、セグメント分け、種類分けは最低限にします。あえて種類分けを行うのは挙動の動態(ダイナミックス)が違う時に限定します。

ここで基準となるのが「クライアントの範囲」の考え方です。クライアントとは、システム図のユーザーであり、一緒にその社会課題に取り組もうとする「私たち」と言えるグループの範囲です。自身、自部署、自組織だけがクライアントになることもあれば、部署横断、組織横断、あるいはセクター横断のチームがクライアントとなる場合もあるでしょう。

クライアントにとって「内因性」の問題、つまりクライアント自身が打ち手を講じることができる範囲の問題であれば、変数の粒度はある程度細かくてもよいでしょう。一方で「外因性」の問題、つまりクライアント以外の他者の挙動に左右される範囲では、クライアントがとるべき打ち手が探せないため、細かい粒度の変数を設定することはあまり意味がありません。

また、有効な打ち手が見つからない場合もあるでしょう。そのようなときは、クライアントの範囲を広げるのも一手です。大きなシステム構造を目のあたりにして、自分だけ、自部署だけで無力ではないかと感じる場合、他の人や他部署を巻き込んでいくと、打ち手の幅が広がります。社会問題に取り組むときにはなおさら、一つの組織単独での影響力や打ち手の幅は限られやすいものとなります。だからこそ、コレクティブ・インパクトを目指して、組織横断・セクター横断で取り組む意義が大きいのです。

❼洞察からプロトタイプをつくり、新しいシステムの挙動をすばやく見出す

多様な関係者を集めてシステム分析を行い、構造のツボ(レバレッジ・ポイント)を見出すだけで、うまくいく打ち手は講じられるのでしょうか?既存のシステムを大きく変えるのではなく、継続的に改善していこうとするならば、システム分析だけでも改善につながることが多くあるでしょう。

しかし、複雑な問題を抱えるシステムにおいて、当初決めた戦略通りにものごとが進む保証はないため、不確実性について考慮する必要があります。特に、新しい領域や地域での取り組みや、イノベーションにつながるような新しい施策を探る際には、多くの関係者たちを集めたとしても、そもそもシステムがどのように変容していくかという知見が限定的にしか得られないことがままあります。

そこで有用なのは、想定外の状況が起こっても適応できるように、どんな行動や結果をモニターしていくかについて取り決め、定期的に振り返りを行って軌道修正を行う「適応マネジメント」の仕組みをあらかじめ組み込んでおくことです。振り返りを行う頻度は、チーム単位であれば数週間ごと、全体では数ヶ月ごとなど、組織やシステムの規模に応じて設定します。

また、革新的な手法を実施するのであれば、想定されるリスクやコストについて引き受けられる範囲の小規模なプロトタイプをつくり実験を行うようにします。こうした実験や進捗のモニタリングが、システムに関しての有用な知見を提供します。

❽継続的な学習の文化と能力を育む

システム思考の実践において欠かせないのは「システムそのものの継続的な改善」です。振り返りを通じて進捗を確認し、効果をモニタリングしながら、適宜リソースを投入したり、施策を調整したりすることによってシステム全体の改善を図っていきます。この学習プロセスを通じて、システムの構造やその前提に関する新たな知見が得られれば、その知見について探求を深めることは有用です。なぜなら、以前から継続している戦略を見直したり、新たな戦略がうまくいくために必要なことを検討したりするのに役立つからです。とりわけ、顧客や受益者や彼らを取り巻くコミュニティにおいてどのような変化が起きているか、といった「現場の情報」を迅速にフィードバックすることが、迅速な学習サイクルを回すのに欠かせません。

また、説明責任は社会変革を担う組織にとっても重要な要素です。しかし、できるなら「説明責任のための場」と「学習のための場」を切り分けて進めるほうがよいでしょう。学習とは、自分たちに知らないことがある、もっと改善できる余地がある、といった具合に、無知や不完全であることを認めて初めて起こるものです。まして、リソースをとりあう他の組織や、評価する立場の組織の人たちと一緒の場で、深く内省し、今までの当たり前を疑い、新しい発想を生み出すには、安全な場が欠かせません。学習を最大化するために、参加者たちの心身の安全を確保することが協働の招集者の重要な務めとなります。

❾他のシステムに施策を広げる際には文脈の違いに注意する

プロトタイピングや新しい施策がうまくいけば、規模の拡大(スケールアップ)や、別の地域に広げる水平的な展開(スケールアウト)を目指す施策へと進むことができるでしょう。ここで注意したいのは、ある場所でうまくいった施策を、そのままの形で他のコミュニティや地域に適用しようとしていないか吟味することです。実際、多くの社会変革の取り組みがこのパターンで失敗しています。その理由の一つめは、問題の前提となるボトルネックの組み合わせが異なる場合です。たとえば、ある市場でうまくいった優れた技術や製品があったとしても、別の場所ではそもそも電気へのアクセスや道路・水路などインフラが整っていなかったり、設置された装置のメンテナンスを行える技師や技術的知識がなかったりします。その場合、何の付加価値も生みだせないかもしれません。二つめの理由として、水の問題に見られるように、同じテーマの問題でも場所によって背景や状況が大きく異なる場合もあるでしょう。そして第三の理由として、社会問題の多くは技術的には解決できない「適応を必要とする課題」であることが挙げられます。介入者を含めた関係者たちが、どのように学習し、変化に適応するかが問われるのです。このような失敗を避けるための処方箋は、現実をありのままに見ることです。また、後述する変化の理論(セオリー・オブ・チェンジ)を構築できていれば、そこにはビジョンの実現に必要な、さまざまな前提条件が明示されていますので、そうした前提条件が展開したい場所でどのようになっているかを吟味するのもよいでしょう。個別のテクニカルな施策を流用する代わりに、本書で示されるような組織学習プロセスをそれぞれの地域に活用することは重要でしょう。人や組織間のコミュニケーションや学習は文化に依存するものの、そのパターン認識も踏まえ、実績ある参画型メソッドを活用することは、結果的にプログラム展開のスピードを速めるであろうと考えます。

❿システム思考家としての「心のあり方」を磨く

システム思考や組織学習に造詣の深いビル・オブライアンは、システムへの働きかけの成否はシステムに介入する者たちの「心のあり方」に大きく左右されると言いました。一部の権力者や意思決定者が、自らのエゴのみで動いたり、あるいは、関係者たちの受容を促すような関与や包摂(インクルージョン)のプロセスを経ずに進めたりすると、後になって大きなシステムの抵抗を招いたり、あるいはシステムの崩壊を導くことすらあります。自分はエゴにとらわれていないと思っていても、先ほど述べたように「自分がすべてを知っている」と考えてしまうと、落とし穴があったりするものです。システムへの働きかけを通じて社会変革を志すなら、自らが常に学習者であるという姿勢が必要だと考えています。

人の性質は簡単には変わるものではありません。まずシステム思考を実践する者が、自らのあり方を見つめ、継続的に学んでいく必要があります。システム思考家は、人そのものを変えることができなくとも、何を見るか、どのように考えるか、どのような行動がとりうるのかについて新たな可能性を知らせることができます。第13章「システム思考家になる」で述べられていることは、実践者がどのように自らを磨き続けるかの手引きとなることでしょう。

(3)今後注目される変化の理論(セオリー・オブ・チェンジ)につづく
(1)社会変革とシステム思考はこちら

『社会変革のためのシステム思考実践ガイドーー共に解決策を見いだし、コレクティブ・インパクトを創造する』(11/16発売)


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