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学習する組織/システム思考に効く読書(5)『U理論―過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術』

2013年04月18日

(システム思考や組織論を学ぶ上で、わかりやすく実生活に役立つ本を不定期でご紹介しています。ぜひ、こうした本での学びを実践し、みなさんの仕事や生活に生かしてください。)

日本において、今ほどイノベーションが渇望されている時代はないでしょう。顧客創造においても、生産性の改善においても、今までと異なる次元で革新と創造が必要とされています。

では、どのように創造をしていくのか? 論理では創造は生まれない一方、勘に頼っているのではビジネスもばくちにしかなりません。左脳的な合理性と右脳的な洞察を融合させたイノベーションを生み出すプロセスがU理論といえるでしょう。過去の延長線上でもない、未来の夢物語でもない、今ここに現れつつある可能性を形にしていくU理論は、世界の実績ある創造家たちへのインタビューから抽出されました。

U理論はいくつかの段階に分けられます。ひたすら観察を重ね、無意識に固定化された前提に気づき、視野を広げながら全体像を見ていくのがUの谷を降りるフェーズです。混沌を通り抜け、こだわりを手放して、真に迎え入れるべき目的と自己の役割を見出すのがUの底のフェーズ。そして、新しい理解に基づいて、すぐに手や体を動かしてプロトタイプをつくり、それがどのように現実に作用するかを見ることで学習し、広げて行くのがUの谷を上がるフェーズとなります。

東洋思想でもこうした考えは昔からありました。しかし注目すべきは、修行僧でも芸術家でも一流アスリートでもない、普通の経営者や会社員が、仕事としてこうした実践に取り組み始めていることではないでしょうか。この本を読んでもわかるように、今急速に広がって事例が積み重ねられ、新たなイノベーションを生み出し始めています。

著者のシャーマー氏はドイツ人の経済学者で、その著述にはドイツ人的な緻密さや論理性ゆえにややくどくどしく思われる向きもありますが、人となりは誠実できわめて実践的な人物です。氏と接していると、日々小さなUの谷をくぐる実践を続けることで、生成的なマインドセットや組織風土が生み出され、組織と共に進化するようにアイデアの革新性や創造力が鍛えられるのを予感させられます。

U理論――過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術

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