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小田理一郎「組織や社会の変革はどのように起こるか―システム思考による変化の理論と実践」(3)「U理論で食糧システムの転換に挑む」

(2010年4月に開催したチェンジ・エージェント社5周年記念講演の講演録「組織や社会の変革はどのように起こるか―システム思考による変化の理論と実践」の3回目です。プレゼンテーションのスライド及び第1~2回の講演内容は、ページ最下部のリンクからご覧いただけます。)

次に、多くの企業や政府、NGOが集まった「サステナブル・フード・ラボ」の事例を紹介します。北米、ヨーロッパ、中南米、アフリカと、4大陸にまたがる大きなプロジェクトで、ビジネスの本流における持続可能な食糧システムをつくり出すことを目的としています。

http://www.sustainablefoodlab.org/(英語)
http://change-agent.jp/news/archives/000146.html(弊社での紹介サイト)
http://www.es-inc.jp/lib/archives/060830_074919.html(グループ会社イーズのサイト)
http://www.es-inc.jp/lib/archives/080108_082535.html(グループ会社イーズのサイト)
http://www.japanfs.org/ja/aboutus/event/pages/009530.html(Japan for Sustainabilityのサイト)

農業は地球上で最大の産業です。13億人もの人が働いていて、収入はおよそ1.3兆ドル(120兆円)。しかも、コーン、麦、大豆、米などの8大商品といわれている商品が、私たちの摂取カロリーの8割を占めています。2000年には60億人だった人口が2050年には90億人になろうとしています。何とか人口増加に追いつこうとして、農地を増やし、生産性を増やし、食糧生産を増やしてきました。今は農地拡大も既に横ばいで、居住可能な土地の半分は農地になっています。

食糧生産を高めるために、土地当たりの収量を上げようとして、化学肥料や農薬などを投入することが、これまでの食糧生産を可能にしてきました。そういった投入物が増えると、それだけ化学物質や化石燃料に依存する状況を招きます。

農地がこれ以上増えない一番の理由は砂漠化です。土地がどんどん栄養を失って、土壌が劣化し、砂漠化が進行しているのです。今、世界にはおよそ15億ヘクタールの農地がありますが、今まで砂漠化した農地の面積は16億ヘクタールです。つまり、農地と同じぐらい砂漠化した土地があるのです。これは中国とインドを合わせたぐらいの面積です。それほどの土地が、化学肥料や農薬をどんどん投入するなど今までの農業慣行とその他の原因によって失われてきました。農地が増えないのは、生産性を増やそうという努力の結果でもあったわけです。

これだけ農業の生産性を上げているにもかかわらず、いまだ10億人もの人が深刻な栄養不良にあり、5秒に1人、年間600万人の子どもが飢えのために命を落としています。日本の小学生の人口に匹敵する数の子どもが、食べられないために毎年亡くなっているという状況です。

世界中でお腹をすかせている人々の半分は、皮肉にも農場で働いています。目の前で食糧をつくっているとはいえ、単一作物を栽培している場合も多く、直接食べられるものとは限りません。そうした人の半分ぐらいは、貧しい生活をしているわけです。

しかも食品業界の競争は激しく、小売業者がどんどん統合されて巨大バイヤーとなり、彼らが途上国や先進国の農村部から安く買い叩いているのも貧困を生む原因の1つとなっています。

こうした状況にあって、食糧システムの転換という大きな課題に対しては、多少売り上げが大きな大企業であっても、自分たちだけではどうしようもありません。あるいは政府であってもNGOであっても、どんなに一生懸命取り組んでもどうにもならないのではないか? そのときに、みんなで一緒に解決を図れば何とかなるかもしれないと、「サステナブル・フード・ラボ」に集まることにしたのです。

メンバーは、さまざまな企業やヨーロッパやブラジルの政府、そしてNGOから集まった約40名です。企業からの参加者は、役員か部長クラスのとても忙しい人たちでしたが、最初の2年間に少なくとも40日はこのプロジェクトに費やすという約束をして始めました。自分の時間を相当使って取り組もうと決めたのです。

このプロジェクトのビジョンは、農民や農業従事者がまともな暮らしができること、健全な土壌に清潔で豊かな水、生物多様性の保全、そして脆弱な漁場を保護して同時に収益の高いビジネスをつくることです。

彼らが使った方法論は、システム思考に基づいた「U理論」というものです。ピーター・センゲやオットー・シャーマーらがつくった理論です。オットー・シャーマーの「U理論」という本が英語で2年前に出ているのですが、つい先ごろ日本語翻訳も刊行されました。

U理論で大切なのは、「ダウンローディングをしない」ことです。先ほどの枝廣の話にもありましたが、何かの問題に対して、自分の頭の中のデータベースを探って、問題解決を図ることを「ダウンローディング」と呼びます。

ダウンローディングは、実際に解決の実績がある問題には効きますが、今の食糧問題ほど大規模かつグローバルで複雑な問題には通用しないことがあります。過去に解決策を求めてもダメです。そういった場合には、未来に解決策を求めて、未来を見るためのプロセスが必要になります。

最初にやるべきは、現実をありのままに観察することです。システムにどういう流れがあって、どんな構造になっていて、そこにかかわる人たちがどんな対応を取っているのか。それをひたすら観察します。まず観察を続ける過程があって、その後に新しい気づきが生まれ、それに基づいて行動する。ダウンローディングが問題から解決策を真っすぐ一直線に求めるのに対し、U理論では現実をひたすら観察して、集合知を浮かび上がらせて解決策を導きます。そのプロセスがUの形をしているのでU理論と呼ばれています。
このU理論を最も大きなレベルで最初に使ったのがサステナブル・フード・ラボでした。サステナブル・フード・ラボでは、U理論のほかにもシステム思考やビジョンのつくり方、対話のつくり方などを集中的に学び、解決策を考えていきました。

ありのままの現実を見つめる中で、彼らはあるパターンに気づきました。まず、あらゆる商品で生産高がどんどん上がっています。人口が増えて食糧需要が増えているので、それに合わせて生産高が上がるのは当然です。

同時に、1950年ぐらいからは数十年単位で、価格がどんどん下がっていることにも気がつきました。最近は価格が高騰し始めているとはいえ、1950年に比べると実質的な価格は半分以下、場合によっては何分の1かになっている状況です。価格がどんどん下がって、生産高が上がっているという状況が見えてきたのです。

このパターンがなぜ起こっているか、システムの分析をしたところ、次のような流れに気がつきました。生産量が増えると競争が増えるために価格が下がります。価格が下がると売り上げが下がるため、当然ながら生産コストを下げようとします。そのため、効率を高めようと規模を大きくします。ところが、生産能力を上げると供給量が増えてしまい、また価格が下がるという悪循環になります。

こうした悪循環がずっと続いて、大規模な農家は何とか利益をあげる中で、中小規模の人たちはみんな赤字で農業を続けているという構造がありました。生産者の利益が下がるとコミュニティが崩壊します。漁業の場合は漁獲能力が高まると、たくさん捕りすぎて魚がいなります。農地にまいた化学肥料は、およそ3分の1しか使われずに、残りは全部流れてしまうという問題もあります。おかげで河川がどんどん汚染され、それが赤潮や青潮をもたらし、生態系を乱すことにつながっています。U理論ではまず、こういった現状を創り出す構造をありのままに見ていきます。


▼プレゼンテーションスライド
http://change-agent.jp/files/Riichiro_Oda_on_Change.pdf

▼講演録
(1)「変化の理論、3つのポイント」
http://change-agent.jp/news/archives/000388.html
(2)「人を変える前に自分が変わる」
http://change-agent.jp/news/archives/000390.html
(3)「U理論で食糧システムの転換に挑む」
http://change-agent.jp/news/archives/000391.html 
(4)「メンタル・モデルから自らを解き放つ」
http://change-agent.jp/news/archives/000396.html
(5)サプライ・チェーンに起こった変化
http://change-agent.jp/news/archives/000400.html

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